
日本で働く外国人の方、また外国人を雇用する企業の担当者様で、「ビザの指定書」という書類について詳しく知りたいと思っていませんか?特定技能や高度専門職、特定活動といった在留資格の申請手続きを進める中で、「指定書を提出してください」と言われたものの、それが一体何なのか、在留カードとどう違うのか、正確に理解できずに戸惑っている方も多いのではないでしょうか。また、「転職する際にはどんな手続きが必要?」「もし紛失してしまったらどうなるの?」といった具体的な疑問や、「雇用条件を変更したいが、入管への届出は必要なのか?」といった企業側の実務的な悩みも尽きません。これらの疑問や不安を放置したまま手続きを進めると、意図せず法律違反(不法就労)になってしまったり、在留資格の更新が不許可になったりするリスクさえあります。結論から申し上げますと、ビザの「指定書」は、日本で就労する外国人に許可された活動内容(勤務先、職務内容など)を個別に具体的に定める、極めて重要な公文書です。出入国在留管理庁は、この指定書によって各外国人の活動が許可の範囲内で行われているかを管理しています。この記事では、ビザの指定書とは何かという基本的な定義から、特定技能・特定活動・高度専門職といった在留資格ごとの具体的な役割の違い、記載内容の正しい見方、そして新規取得・更新・転職といった状況別の手続きの流れまで、あらゆる情報を網羅的に解説します。さらに、指定書を紛失した場合の再発行手続きや、記載内容に変更があった場合の対応、企業担当者が知っておくべき採用・労務管理上の注意点、よくある質問への回答まで、専門家の視点から詳しく掘り下げていきます。この記事を最後までお読みいただければ、ビザの指定書に関する疑問が解消され、ご自身の状況に応じて今何をすべきかがわかります。
1. ビザ「指定書」とは何か 基本的な意味と役割
日本で働く外国人材にとって、「指定書」は自身の活動範囲を証明する非常に重要な書類です。一般的に「ビザ」と呼ばれる査証とは異なり、特定の在留資格で許可された具体的な活動内容を記した公的な文書を指します。この章では、指定書の基本的な意味と、在留管理における役割について分かりやすく解説します。
1.1 指定書の定義と法律上の位置付け
指定書とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、法務大臣が外国人一人ひとりに対して許可する具体的な活動内容を個別に指定した書類です。通常はパスポート(旅券)に貼付される形で交付されます。
特に「特定活動」のように、在留資格の名称だけではどのような活動が許可されているか判断しにくい場合に、その内容を明確にする役割を担います。例えば、同じ「特定活動」でも、ワーキング・ホリデーで滞在する人と、インターンシップで滞在する人では許可される活動が異なります。指定書は、その人が「どの企業で」「どのような業務内容で」就労することを許可されているかを証明する、法的な効力を持つ文書なのです。
1.2 在留カードや在留資格との違い
「指定書」は、「在留資格」や「在留カード」としばしば混同されがちですが、それぞれの役割は明確に異なります。以下の表でその違いを確認しましょう。
| 種類 | 役割・目的 | 主な記載内容 | 携帯義務 |
|---|---|---|---|
| 指定書 | 在留資格で許可された活動内容を具体的に明記・補足する書類 | 勤務先、職務内容、活動範囲など、個別に指定された事項 | 法律上の義務はないが、在留カードと共に保管することが推奨される |
| 在留カード | 日本に中長期間在留する外国人向けの身分証明書 | 氏名、国籍、生年月日、在留資格、在留期間、就労制限の有無など | 常時携帯義務あり |
| 在留資格 | 外国人が日本に在留し、活動を行うための法的「資格」そのもの | (資格の名称としてカードに記載)例:「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」 | (資格であり書類ではない) |
このように、在留資格が「活動の大きな枠組み」であるのに対し、指定書は「その枠組みの中での具体的な活動内容」を定めたものと言えます。在留カードは、それらの情報を基に発行される身分証明書という位置付けです。
2. 指定書が必要となる主な在留資格の種類
「指定書」は、すべての在留資格で発行されるわけではありません。主に、個々の外国人に対して許可される活動内容を具体的に定める必要がある在留資格において、パスポートに添付される形で交付されます。ここでは、指定書が特に重要な役割を果たす「特定技能」「特定活動」「高度専門職」の3つの在留資格について、その概要と指定書の取り扱いを詳しく解説します。
2.1 特定技能で必要となる指定書の概要
特定技能は、国内の人材確保が困難な特定の産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。従事できる業務が厳格に定められているため、指定書がその活動範囲を証明する重要な書類となります。
特定技能の指定書には、就労する「受入機関(会社名)」と、従事する「業務区分」が明確に記載されています。これにより、許可された会社で、許可された業務しか行えないことが法的に定められています。例えば、介護分野で許可を得た場合、同じ会社内であっても飲食店のホールスタッフとして働くことはできません。転職して受入機関を変更する際は、新たな受入機関で在留資格変更許可申請を行い、新しい指定書を取得する必要があります。
2.2 特定活動で必要となる指定書の概要
特定活動は、他のどの在留資格にも分類されない活動に従事する場合に、法務大臣が個別に活動を指定して許可する在留資格です。活動内容が非常に多岐にわたるため、パスポートに添付される指定書によって、許可された具体的な活動内容が定義されます。この指定書に記載されていない活動を行うことはできません。
2.2.1 特定活動 留学やインターンシップの場合
日本の大学の学生ではない方が、サマージョブや90日を超えるインターンシップなどで報酬を受けて活動する場合、「特定活動」の在留資格が必要となることがあります。この場合、指定書には活動を行う機関名、所在地、活動内容、期間などが具体的に記載されます。これにより、許可されたプログラムの範囲内でのみ活動が認められます。
2.2.2 特定活動 起業や就職活動の場合
日本の大学や大学院を卒業した留学生が、卒業後も継続して日本で就職活動を行う場合、「特定活動」への在留資格変更が認められることがあります。この際の指定書には「就職活動」と明記され、そのための滞在であることが示されます。また、「外国人起業活動促進事業」を利用して起業準備を行う場合も同様に、指定書に「起業準備活動」と記載され、その計画に沿った活動のみが許可されます。
2.3 高度専門職で必要となる指定書の概要
高度専門職は、学歴、職歴、年収などをポイントで評価し、基準を満たした優秀な外国人材に対して優遇措置を与える在留資格です。この在留資格でも、許可された活動の範囲を証明するために指定書が交付されます。
2.3.1 高度専門職一号での勤務条件と指定書
高度専門職1号の指定書には、ポイント計算の基礎となった「所属機関(勤務先)」と「具体的な活動内容」が記載されます。このため、原則として指定された所属機関で、許可された活動に従事しなければなりません。転職する際には、新たな勤務先での活動内容で再度ポイント計算を行い、基準を満たすことを証明した上で、在留資格変更許可申請が必要です。
2.3.2 高度専門職二号と指定書
高度専門職2号は、1号として3年以上活動した人が移行できる資格で、在留期間が無期限になるなど、さらに大きな優遇措置が与えられます。2号になると、幅広い就労活動が認められており「指定書」も付きません。
これらの在留資格における指定書の役割を、以下の表にまとめました。
| 在留資格の種類 | 指定書に記載される主な内容 | 転職・活動変更時の注意点 |
|---|---|---|
| 特定技能 | 受入機関(会社名)、業務区分 | 転職には在留資格変更許可申請が必要。 |
| 特定活動 | 個別に指定された具体的な活動内容(例:就職活動、インターンシップ先の機関名など) | 指定書に記載された活動内容の変更は、原則として在留資格変更許可申請が必要。 |
| 高度専門職1号 | 所属機関(会社名)、活動内容 | 転職には在留資格変更許可申請が必要。 |
より詳細な情報については、出入国在留管理庁の公式サイトで各在留資格の要件をご確認ください。
3. 指定書に記載される内容と確認すべきポイント
ビザの申請や更新の際に登場する「指定書」。これは、日本での活動内容を具体的に定めた非常に重要な書類です。特に、特定技能や特定活動、高度専門職といった在留資格では、この指定書が許可された活動の範囲を証明する法的根拠となります。ここでは、指定書にどのような情報が記載されているのか、そしてどこを重点的に確認すべきかを詳しく解説します。
3.1 勤務先名称 所在地
指定書には、あなたが就労する企業や団体(受入機関)の基本的な情報が明記されます。具体的には、企業の正式名称、実際に勤務する事業所の所在地です。
これらの情報は、在留管理の基礎となるものです。万が一、記載された情報と実際の勤務先に相違がある場合、不法就労と見なされるリスクがあります。入社前に受け取る内定通知書や雇用契約書と内容が一致しているか、必ず確認しましょう。特に、本社と勤務地の住所が異なる場合は注意が必要です。
3.2 職務内容
指定書の中でも特に重要なのが「職務内容(業務内容)」の項目です。ここでは、あなたが従事することを許可された具体的な仕事内容が記載されています。
例えば、在留資格「特定技能」であれば「介護業務」「飲食料品製造業」など分野が明記されます。
指定書に記載された職務内容以外の仕事に従事することは、原則として許可された在留資格の範囲外の活動にあたります。これが発覚した場合、在留資格の更新が不許可になったり、最悪の場合は在留資格が取り消されたりする可能性もあるため、厳密に守らなくてはなりません。
4. 指定書の取得手続きと申請の流れ
ビザの「指定書」は、それ自体を単独で申請して取得するものではありません。多くの場合、日本で活動するための在留資格を申請する手続きの中で、許可された活動内容を具体的に示す書類として、出入国在留管理庁(以下、入管)から交付されます。ここでは、指定書が関わる主な3つの申請手続きと、その流れについて解説します。
4.1 新規で在留資格認定証明書を申請する場合
海外にいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合など、新たに来日する際に必要な手続きが「在留資格認定証明書交付申請」です。特に「特定活動」や「特定技能」といった在留資格では、この手続きを経て指定書が交付されます。
手続きの基本的な流れは以下の通りです。
- 書類準備:日本の受入企業や学校などが申請に必要な書類一式を準備します。
- 申請:原則として、受入機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に申請します。
- 審査:入管にて、申請内容が在留資格の基準に適合しているか審査が行われます。(標準処理期間は1〜3ヶ月程度)
- 証明書と指定書の交付:審査で許可されると、「在留資格認定証明書」が交付されます。
- 来日手続き:交付された在留資格認定証明書を海外にいる本人へ送付します。本人は現地の日本大使館・領事館で査証(ビザ)を申請し、来日。空港の審査で在留カードが交付されます。その際に、指定書が交付されパスポートにホチキス止めされます。
4.2 在留資格変更許可申請を行う場合
すでに日本に在留している外国人が、現在の活動内容とは異なる活動を行うために在留資格を変更する手続きです。例えば、留学生が日本の企業に就職する場合や、転職に伴い活動内容が大きく変わる場合などが該当します。
この変更申請が許可された際、新しい在留資格によっては指定書が交付されます。
- 内定・活動内容の決定:転職先や変更後の活動内容を確定させ、雇用契約などを締結します。
- 書類準備:本人と新しい受入機関が協力して、変更許可申請に必要な書類を準備します。
- 申請:本人の住居地を管轄する地方出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請」を行います。
- 審査:入管にて、変更後の活動が新しい在留資格の要件を満たしているか審査されます。
- 許可と交付:許可されると、新しい在留カードが交付されます。その際、特に「特定活動」ビザなどに変更する場合は、活動内容を記した新しい指定書が必ず交付されます。
4.3 在留期間更新許可申請で指定書が関係する場合
同じ在留資格のまま、在留期間を延長する手続きが「在留期間更新許可申請」です。勤務先や職務内容に変更がない場合、通常は新しい指定書が発行されることは少なく、既存の指定書が引き続き有効となります。
4.4 申請先 入管の窓口とオンライン申請の選択
これらの申請は、原則として申請人の住居地を管轄する地方出入国在留管理局で行います。申請方法には、直接窓口へ出向く方法と、オンラインで手続きを行う方法の2種類があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
| 申請方法 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|
| 窓口申請 | その場で書類の不備を指摘してもらえる可能性がある。システム操作が不要。 | 開庁時間が限られる(平日日中のみ)。待ち時間が長くなることがある。 |
| オンライン申請 | 24時間365日いつでも申請可能。入管へ出向く回数を減らせる。進捗状況をオンラインで確認できる。 | マイナンバーカードとICカードリーダライタ(または対応スマホ)が必要。システムの操作に慣れが必要。 |
近年、入管はオンライン申請の利用を積極的に推進しています。特に受入機関の担当者が代理で申請する場合、移動時間や待ち時間を大幅に削減できるため、「在留申請オンラインシステム」の利用が推奨されています。詳しくは、出入国在留管理庁の公式サイトでご確認ください。
5. ビザ申請に必要な書類と作成の注意点
ビザの指定書が関わる在留資格の申請では、提出する書類の正確性と整合性が審査の鍵を握ります。ここでは、申請に必要となる主な書類と、作成時における重要な注意点を、外国人本人と受入企業の双方の視点から詳しく解説します。
5.1 外国人本人が準備する書類
外国人本人が準備する書類は、自身の身分や経歴を証明するための基本的なものです。不備がないように、有効期限などを事前に確認しておきましょう。
| 書類名 | 主な注意点 |
|---|---|
| 証明写真 | 縦4cm×横3cm、申請前3ヶ月以内に撮影したもの。無帽、無背景で鮮明なものが必要です。 |
| パスポート(旅券)のコピー | 身分事項、出入国記録、在留許可証印のページなど、全てのページのコピーが必要になる場合があります。 |
| 在留カードのコピー | 日本に既に在留している場合、両面のコピーが必要です。 |
| 学歴を証明する書類 | 卒業証明書や学位記のコピーなど。従事する業務との関連性を示す上で重要です。 |
| 職歴を証明する書類 | 過去の勤務先が発行した在職証明書など。職務内容、在職期間が明記されている必要があります。 |
| 資格を証明する書類 | 従事する業務に関連する公的な資格証明書のコピーなど。 |
5.2 受入企業や機関が準備する書類
受入企業側は、事業の安定性・継続性や、外国人を受け入れる体制が整っていることを証明する書類を準備します。企業の規模や状況によって必要書類が異なるため、出入国在留管理庁のウェブサイトで最新の情報を確認することが不可欠です。
| 書類名 | 主な注意点 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局で取得。発行から3ヶ月以内のものが必要です。 |
| 事業内容を明らかにする資料 | 会社案内、パンフレット、ウェブサイトの写しなど。どのような事業を行っているかを客観的に示します。 |
| 直近年度の決算文書の写し | 貸借対照表、損益計算書など。新規設立で決算期未到来の場合は、今後1年間の事業計画書を提出します。 |
| 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 | 電子申請の場合は「受信通知」を添付します。 |
| 雇用契約書の写し | 指定書に記載される活動内容、報酬、勤務時間などの根拠となる最重要書類です。 |
詳細な必要書類は、申請する在留資格の種類によって異なります。必ず出入国在留管理庁の公式サイトで該当する在留資格のページをご確認ください。
5.3 雇用契約書 就労条件書の書き方と注意点
指定書の内容は、雇用契約書(または労働条件通知書)に基づいて作成されます。そのため、雇用契約書に記載された内容と、入管へ申請する内容に一切の食い違いがないことが絶対条件です。特に以下の項目は、具体的かつ明確に記載する必要があります。
- 所属機関の名称・所在地:実際に勤務する事業所の情報を正確に記載します。
- 職務内容:在留資格で許可された活動範囲に合致していることを、誰が読んでも理解できるように具体的に記述します。「営業」「事務」といった曖昧な表現は避け、「〇〇に関する市場調査及び海外顧客への提案営業」のように詳細に書きます。
- 雇用期間:有期か無期か、有期の場合は期間を明記します。
- 労働時間・休日:始業・終業時刻、休憩時間、休日を明確にします。
- 報酬:月額または年額の給与を正確に記載します。賞与や手当がある場合はその旨も明記し、日本人が同じ業務に従事する場合の報酬額と同等以上でなければなりません。
これらの内容が曖昧であったり、在留資格の要件を満たしていないと判断されたりすると、追加資料の提出を求められたり、不許可の原因となったりします。
5.4 理由書 事業計画書など補足書類の活用
法定の提出書類だけでは説明が難しい事情がある場合、補足書類を任意で提出することが許可の可能性を高める上で非常に有効です。
特に「雇用理由書」は、なぜその外国人を採用する必要があるのか、その外国人が持つスキルや経験が会社の事業にどう貢献するのかを、採用担当者の言葉で具体的に説明するための重要な書類です。学歴や職歴と、これから従事する業務との関連性を説得力をもって示すことで、審査官の理解を深めることができます。
また、設立間もない企業や、赤字決算の企業が外国人を雇用する場合には、今後の事業の安定性・継続性を示す「事業計画書」の提出が不可欠です。具体的な収支計画や事業展開のロードマップを示すことで、将来性をアピールし、審査官の懸念を払拭する材料となります。
6. 就職 転職 更新のケース別 指定書の手続き
日本での就労において、ライフステージの変化はビザ(在留資格)の手続きに直結します。特に、活動内容が個別に定められる在留資格では、「指定書」の取り扱いが非常に重要です。ここでは、就職、転職、在留期間の更新といった具体的なケースごとに、指定書に関する手続きを分かりやすく解説します。
6.1 初めて日本で働く場合
海外に住んでいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合、まず「在留資格認定証明書交付申請」を行います。この審査の過程で、雇用契約書や就労条件通知書の内容に基づき、従事する業務内容や勤務先が審査されます。
無事に許可されると在留資格認定証明書が交付され、それを使って日本の在外公館(大使館や総領事館)でビザ(査証)の発給を受けます。日本に入国する際、空港の入国審査で在留カードと共に、パスポートに「指定書」が貼付されます。この指定書に記載された内容が、日本で許可された活動の範囲となります。
6.2 同じ会社で在留期間のみ更新する場合
同じ会社(所属機関)で働き続け、在留期間の満了が近づいた際には「在留期間更新許可申請」が必要です。このとき、勤務先、職務内容、役職などに変更がなければ、原則として新しい指定書は交付されません。
6.3 転職する場合 受入機関変更
転職は、指定書の手続きにおいて最も注意が必要なケースです。在留資格の種類によって必要な手続きが大きく異なるため、ご自身の状況に合わせて正確に対応しなければなりません。転職を考え始めたら、まず自分の在留資格でどのような手続きが必要になるかを確認しましょう。
6.3.1 特定技能での転職の流れ
特定技能ビザを持つ方は、原則として同一の業務区分内での転職が認められています。転職する際は、前の会社を退職してから14日以内に、出入国在留管理庁(以下、入管)へ「所属機関に関する届出」を提出する義務があります。
転職先が決まったら、新しい受入機関(会社)との間で雇用契約を結び、必要な手続きを進めます。具体的な流れは以下の通りです。
| ステップ | 手続き内容 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 1. 転職先の決定 | 同一業務区分内の企業を探し、内定を得る。 | ハローワークや民間の職業紹介事業者などを活用できます。 |
| 2. 必要な届出・申請 | 新しい受入機関が「特定技能所属機関に関する届出」などを入管に提出します。 | この手続きが完了しないと、新しい職場で働くことはできません。 |
| 3. 新しい指定書の受領 | 審査が完了すると、新しい勤務先が記載された指定書が交付されます。 | 多くの場合、在留資格変更許可申請を伴います。 |
| 4. 勤務開始 | 新しい指定書を受け取った後、転職先での就労を開始します。 | 前の会社の退職日と新しい会社の入社日の間が空きすぎないように注意が必要です。 |
異なる業務区分へ転職する場合は、原則として「在留資格変更許可申請」が必要となり、より複雑な手続きとなります。
6.3.2 特定活動や高度専門職での転職の流れ
「特定活動」や「高度専門職」のビザを持つ方の転職手続きは、特定技能とは異なります。
- 特定活動ビザの場合
「特定活動」は、個々の外国人に対して法務大臣が活動内容を個別に指定する在留資格です。そのため、転職して勤務先や活動内容が変わる場合は、原則として「在留資格変更許可申請」が必要です。新しい勤務先での活動が、許可される活動内容に合致しているかどうかが改めて審査されます。安易に自己判断で転職すると、不法就労とみなされるリスクがあるため、必ず事前に入管や専門家に相談してください。 - 高度専門職ビザの場合
「高度専門職」は、学歴、職歴、年収などをポイント換算し、基準を満たした高度人材に与えられるビザです。転職する場合、転職後の勤務先や年収で再計算したポイントが基準値を下回ると、高度専門職の在留資格を維持できなくなります。転職後は、14日以内に「所属機関に関する届出」を入管に提出する必要があります。ポイントを維持できる場合でも、活動機関の変更手続きは必須です。
6.4 就労系から別の在留資格に切り替える場合
例えば、「特定技能」から専門学校を卒業して「技術・人文知識・国際業務」へ、あるいは「技術・人文知識・国際業務」からポイントを満たして「高度専門職」へ切り替えるなど、キャリアアップに伴い在留資格そのものを変更するケースがあります。
この場合は、必ず「在留資格変更許可申請」を行わなければなりません。申請が許可されると、新しい在留資格が記載された在留カードが交付されます。その際、活動内容が個別に指定される在留資格(特定活動など)であれば、新しい指定書も交付され、以前の指定書は効力を失います。この手続きを経ずに活動内容を変更することは在留資格外活動となり、在留資格の取消しや退去強制の対象となるため、厳重な注意が必要です。
7. 指定書を紛失した場合や内容に誤りがある場合
ビザの指定書は、日本での活動内容を証明する非常に重要な公文書です。万が一、紛失してしまったり、記載内容に誤りを見つけたりした場合は、放置せずに速やかに行動を起こす必要があります。ここでは、トラブル発生時の具体的な対処法をケース別に解説します。
7.1 指定書をなくしたときの再発行手続き
パスポートにホチキスで留められていることが多い指定書ですが、もし見当たらなくなってしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
結論から言うと、ビザの指定書は原則として「再発行」ができません。一度交付された原本をなくしてしまうと、同じものを再び手に入れることは困難です。
7.2 在留カードの記載と指定書の内容が違う場合
在留カードの記載内容(特に在留資格の種類)と、パスポートに添付された指定書の内容に食い違いがあることに気づいた場合、絶対に見過ごしてはいけません。
誤りに気づいたら直ちに最寄りの地方出入国在留管理局の窓口へ出向き、事情を説明して相談してください。その際、在留カード、パスポート(指定書が添付されたもの)、雇用契約書など、状況を説明できる資料をすべて持参しましょう。
担当官が状況を確認し、どちらの情報が正しいのかを判断した上で、誤っている方の書類の訂正手続きを案内してくれます。放置していると、意図せず不法就労状態に陥ってしまうリスクもあるため、気づいた時点での迅速な行動が何よりも大切です。
8. 企業採用担当者向け 就労ビザ 指定書の実務対応ガイド
外国人材の雇用において、企業の担当者が最も注意すべき点の一つが「指定書」の取り扱いです。指定書の内容を正しく理解し、適切な実務対応を行うことは、コンプライアンスを遵守し、不法就労助長罪などの重大なリスクを回避するために不可欠です。この章では、採用から雇用後の管理まで、企業担当者が押さえておくべき実務ポイントを解説します。
8.1 採用前に確認すべき在留資格と指定書の内容
外国人材の採用選考を行う際、まず在留カードの確認が基本となります。在留カードの「就労制限の有無」欄に「指定書により指定された就労活動のみ可」またはそれに準ずる記載がある場合、必ず指定書の提出を求めてください。
その上で、指定書に記載された「活動内容」や「受入機関」と、自社で予定している業務内容や雇用条件が一致しているかを厳密に確認する必要があります。もし内容が異なる場合、そのまま雇用すると不法就労にあたる可能性があるため、後述する在留資格の変更手続きなどが必要になります。
採用前に最低限確認すべき項目は以下の通りです。
- 在留資格の種類:特定技能、特定活動など、どの資格に基づいているか。
- 許可されている活動内容:どのような業務に従事することが許可されているか。
- 指定されている勤務先(受入機関):現在の勤務先として記載されている企業名。転職者の場合は前職の企業名が記載されています。
- 在留期間の満了日:雇用を継続できる期間の確認。
これらの情報を基に、自社で受け入れるために必要な入管手続き(在留資格変更など)の要否を判断します。
8.2 就労開始前に行うべき入管手続き
採用が内定しても、すぐに入社手続きを進められるわけではありません。指定書が関わる在留資格を持つ外国人を雇用する場合、就労開始前に適切な入管手続きを完了させる必要があります。
例えば、他の会社で働いていた「特定技能」の外国人材を雇用する場合、新たな受入機関(貴社)で働くための手続きが必要です。具体的には、貴社が「特定技能所属機関」として適合していることを証明し、外国人本人との間で新たな「特定技能雇用契約」を締結した上で、地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請などを行わなければなりません。
これらの入管手続きが完了し、新しい在留カードや指定書が交付される前に就労を開始させることは、法律で固く禁じられています。手続きには一定の期間を要するため、採用計画を立てる際は、入管手続きの期間も考慮に入れてスケジュールを組むことが重要です。
届出が必要となる主なケースは以下の通りです。これらの届出は、事由が発生した日から14日以内に行うことが義務付けられています。
| 変更・発生事由 | 必要な手続き | 注意点 |
|---|---|---|
| 雇用契約の終了(退職、解雇) | 所属(契約)機関に関する届出 | 外国人本人の離職後、14日以内に届出が必要です。 |
| 新たな外国人材との雇用契約締結 | 所属(契約)機関に関する届出 | 転職者を受け入れた場合、14日以内に届出が必要です。 |
| 会社の名称変更や所在地移転 | 所属(契約)機関に関する届出 | 会社の基本情報に変更があった場合も届出対象です。 |
| 職務内容の大幅な変更 | 在留資格変更許可申請 | 指定書で許可された活動範囲を超える業務変更は、届出だけでは不十分な場合があります。事前に専門家への相談を推奨します。 |
これらの届出は、出入国在留管理庁の「電子届出システム」を利用してオンラインで行うことも可能です。手続きの詳細は出入国在留管理庁の公式サイトで確認してください。
8.3 コンプライアンス違反を防ぐための社内管理
外国人材の雇用に関するコンプライアンスを維持するためには、継続的な社内管理体制の構築が不可欠です。以下のポイントを参考に、自社の管理体制を見直しましょう。
- 管理台帳の作成と運用:
雇用している外国人材全員について、氏名、在留資格、在留期間満了日、指定書の内容などを一覧化した管理台帳を作成し、常に最新の状態に保ちます。特に在留期間の更新時期は、数ヶ月前から本人に通知し、手続きをサポートする体制が望ましいです。 - 定期的な業務内容の確認:
現場の業務内容が、指定書で許可された活動範囲から逸脱していないかを定期的に確認します。管理職や本人との面談を通じて、実態を把握することが重要です。 - 担当者の知識向上:
人事・労務担当者は、入管法に関する基本的な知識を習得し、法改正などの最新情報を常に収集するよう努めるべきです。社内研修の実施や、外部セミナーへの参加も有効です。 - 専門家との連携:
手続きが複雑な場合や、自社の判断に不安がある場合は、迷わず行政書士などの専門家に相談しましょう。専門家と顧問契約を結び、いつでも相談できる体制を整えておくことが、最大のリスク管理策となります。
適切な管理は、企業を法的なリスクから守るだけでなく、外国人従業員が安心して働き続けられる環境を提供することにも繋がり、企業の持続的な成長に貢献します。
9. よくある質問 就労ビザの指定書
ビザの指定書に関して、多くの方が抱える疑問について分かりやすく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、適切な手続きの参考にしてください。
9.1 指定書がなくても働けるビザは
原則として、活動内容が個別に指定される在留資格では、指定書に記載された内容以外の就労は認められません。具体的には「特定技能」「特定活動」「高度専門職」などの在留資格がこれに該当します。
一方で、「技術・人文知識・国際業務」などの一般的な就労ビザでは、個別の指定書は交付されません。この場合、在留資格で許可された活動の範囲内であれば、転職も可能です(ただし、入管への届出は必要です)。
指定書が交付される在留資格と、そうでない在留資格の主な例を以下に示します。
| 指定書の交付 | 主な在留資格の例 | 備考 |
|---|---|---|
| あり | 特定技能、特定活動、高度専門職 | 指定された機関・業務内容でのみ就労可能。 |
| なし | 技術・人文知識・国際業務、技能、経営・管理など | 在留資格の範囲内の活動であれば、転職は比較的自由(届出は必須)。 |
9.2 在留カードだけで勤務可能か判断している場合のリスクは
在留カードの「就労制限の有無」欄に「就労不可」と記載がない場合でも、指定書で定められた勤務先や業務内容以外で働くことはできません。もし指定書の内容に違反して就労した場合、外国人本人と雇用主の双方が厳しい罰則を受けるリスクがあります。
- 外国人本人のリスク: 在留資格の取消しや退去強制の対象となる可能性があります。また、将来的に他の在留資格を申請する際にも、非常に不利な状況となります。
- 雇用主のリスク: 不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。企業の信頼性が失墜するだけでなく、他の外国人材の雇用にも影響が及ぶ重大なコンプライアンス違反です。
採用時には、在留カードだけでなく、パスポートに添付された指定書の内容を必ず確認することが不可欠です。
9.3 家族滞在や留学ビザは指定書は発行されないか
「家族滞在」や「留学」といった在留資格は、就労を主目的としていないため、就労先や業務内容を定める「指定書」は交付されません。
これらの在留資格を持つ方が日本でアルバイトをするためには、就労ビザの指定書とは全く別の「資格外活動許可」を取得することが必須です。この許可を得ることで、原則週28時間以内(留学生の場合は学則で定める長期休業期間中は1日8時間以内)での就労が認められます。
資格外活動許可を得ずにアルバイトをすることは不法就労にあたり、在留資格の更新が不許可になったり、最悪の場合は退去強制の対象となったりする可能性があります。就労ビザの「指定書」と、非就労ビザの「資格外活動許可」は、全く異なる制度であることを正しく理解しておくことが重要です。
10. 専門家への相談が必要となる場面とメリット
ビザ申請または労務管理に関する手続きは複雑で、専門的な知識が求められる場面が少なくありません。ここでは、どのような場合に専門家へ相談すべきか、また誰に相談すればよいのかを具体的に解説します。
10.1 ビザ申請手続きが複雑なケース
ご自身の状況が以下のようなケースに当てはまる場合、独力での申請にはリスクが伴うため、専門家への相談を推奨します。
- 過去に在留資格の申請で不許可・不交付になった経験がある
- 転職回数が多い、または職歴に長いブランク期間がある
- 申請する活動内容が特殊で、前例が少ない(例:新しい分野での起業活動など)
- 受け入れ先企業の経営状況が不安定(例:設立直後、赤字決算が続いているなど)
- 在留期限が迫っており、迅速かつ確実な手続きが求められる
- オーバーステイや資格外活動違反など、過去に入管法に関する違反歴がある
これらの状況では、専門家の知見を借りることで、許可の可能性を最大限に高め、手続きを円滑に進めることができます。
10.2 行政書士 社会保険労務士への相談のメリット
ビザや就労に関する相談先として、主に行政書士と社会保険労務士が挙げられます。それぞれの専門分野と相談するメリットを理解し、状況に応じて適切な専門家を選びましょう。
| 専門家 | 主な役割・相談内容 | 相談するメリット |
|---|---|---|
| 行政書士(申請取次行政書士) | 在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更・更新許可申請など、入管への申請手続き全般。指定書に関連する書類作成や理由書の作成、入管との折衝。 | 入管法務の専門家として、個別の状況に応じた最適な申請方法を提案し、許可率を高めるための高品質な書類を作成します。申請取次が認められた行政書士なら、原則として本人が入管へ出頭する必要がありません。 |
| 社会保険労務士 | 雇用契約書の内容チェック、社会保険・労働保険の加入手続き、就業規則の整備、労務管理全般に関するアドバイス。 | 労働法の専門家として、外国人を雇用する際の法的なリスクを洗い出し、適正な労働条件やコンプライアンス体制の構築を支援します。これにより、後の労務トラブルを未然に防ぐことができます。 |
大まかな役割分担として、入管へのビザ申請手続きは行政書士、雇用契約や社会保険など会社の労務管理は社会保険労務士と覚えておくと良いでしょう。
11. まとめ
本記事では、就労ビザの指定書について、その基本的な意味から、必要となる在留資格、具体的な手続き、そして企業側の実務対応まで、網羅的に解説しました。この記事の結論として、ビザの指定書は、特定の在留資格を持つ外国人が日本で適法に活動するために不可欠な、「活動内容の具体的な許可証」としての役割を担う極めて重要な書類です。
特に、「特定技能」「特定活動」「高度専門職」といった在留資格で就労する方々は、この指定書の存在を常に意識する必要があります。これらの在留資格は、特定の機関や業務内容に活動が紐づけられているため、転職や職務内容の変更を行う際には、必ず事前に出入国在留管理庁への届出や許可申請手続きを行わなければなりません。手続きを怠ったまま新しい勤務先で働き始めることは、コンプライアンス違反となります。
また、外国人材を受け入れる企業担当者にとっても、指定書の理解は不可欠です。採用活動においては、応募者の在留カードだけでなく、指定書の内容を必ず確認し、自社での就労が可能かどうかを判断する義務があります。雇用契約書の内容は、指定書に記載された条件と整合性が取れていなければなりません。雇用後の労働条件の変更や、在留期間の更新時にも、企業側が主体となって適切な入管手続きをサポートすることが、安定した雇用関係を維持し、企業の法的リスクを回避する上で重要です。
指定書の取得、変更、更新手続きは複雑であり、必要書類も多岐にわたります。もし手続きに少しでも不安を感じたり、転職や起業といった複雑なケースに該当したりする場合は、時間と労力を節約し、不許可のリスクを最小限に抑えるためにも、行政書士などの入管業務を専門とする専門家へ速やかに相談することが賢明な判断と言えるでしょう。
ビザの指定書は、日本で働く外国人本人と、受け入れ企業の双方にとって、安定的で合法的な活動の基盤となるものです。本記事が、皆様の指定書に関する疑問や不安を解消し、円滑な手続きを進めるための一助となれば幸いです。