
建設業で外国人を採用する際、「技術・人文知識・国際業務」で雇えるのか?という疑問に、結論から言えば、施工管理や設計など専門性が明確な職種で、学歴や実務経験と業務内容が対応し、日本人と同等の待遇が確保されていれば採用は可能です。一方で、現場作業(肉体労働・単純労働)は対象外で、必要に応じて特定技能などの活用を検討します。本記事では、在留資格の該当性と上陸許可基準の要点、大学・短大・専門学校の専攻や実務経験の評価、日本人同等以上の処遇要件を、建設業の実務に即して解説。施工管理の職務範囲(工程・品質・原価・安全)や、監理技術者・主任技術者との関係、施工計画書・安全書類(グリーンファイル)への関与のさせ方、設計分野(意匠・構造・設備)におけるCAD/BIMの運用体制(AutoCAD、Revit、ArchiCAD)とキャリアパス、顧客折衝・提案書・図面チェック・設計監理、建築基準法・建設業法の理解と社内教育までカバーします。さらに、不許可になりやすい偽装請負や客先常駐での指揮命令の不整合、現場作業中心に見える求人票や契約書、低い賃金・テンプレ書類・事業の安定性不足の回避策、在留資格変更・更新のスケジュール、体制図・決算・業務計画・配属先の明確化、応募者の学位・職務経歴・JLPTの証明方法、労働者派遣法の遵守、下請け・再委託の管理、同一労働同一賃金・賃金テーブル・36協定・社会保険・労災・安全衛生教育、転職・配置転換、家族帯同や永住への影響まで網羅。結論として、設計・施工管理の専門職としての該当性を丁寧に組み立て、指揮命令系統と契約・待遇を適正化できれば、建設業での「技術・人文知識・国際業務」による採用は実現可能です。
1. まず結論 技術人文知識国際業務で建設業の採用は可能か
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、建設業でも施工管理や設計などの専門性・管理性の高いホワイトカラー職であれば採用可能です。 一方、土木・建築の現場作業などのブルーカラー業務は対象外のため、職務設計と在留資格の選定を明確に分けることが重要です。
1.1 施工管理と設計は要件を満たせば可能
施工管理(工程・品質・原価・安全の管理)や建築・土木の設計(意匠・構造・設備)は、業務が「専門的技術・知識に基づく企画・立案・調査・設計・管理」に該当し、応募者が関連分野の学歴または相応の実務経験を備え、日本人と同等以上の処遇で雇用される前提で認められます。現場での肉体労働を自ら行わない職務範囲の明確化がポイントです。
| 職種 | 主な業務例 | 技術・人文知識・国際業務でのポイント |
|---|---|---|
| 施工管理 | 工程・品質・原価・安全の管理、施工計画書・安全書類の作成、発注者・設計者・協力会社との調整 | 管理・調整・書類作成が中心。自ら現場作業を行わない職務設計を徹底 |
| 設計(意匠・構造・設備) | 基本・実施設計、図面作成・チェック、CAD・BIM運用、法規確認、設計監理補助 | 建築・土木系の専門知識に基づく業務。日本人と同等以上の給与・職務内容の提示 |
| 積算・BIMコーディネート | 数量拾い、積算、納まり検討、BIMモデルの整備・連携 | 専門性が明確で、学歴または実務経験との関連性を説明可能であること |
「管理・設計・調整・書類作成」が中心となるか、「肉体労働を伴う現場実作業」が中心となるかで許否が分かれます。
1.2 現場作業は不可 代替は特定技能などの活用
型枠・鉄筋・配管・内装・左官・解体などの現場作業は「技術・人文知識・国際業務」の対象外です。これらの人材ニーズには、建設分野の「特定技能」など、現業系を前提とする在留資格の活用を検討します。混在した職務記載(管理業務と現場作業の兼務)や、実態が現場作業中心に見える求人・契約は不許可の典型要因となるため、採用ポジションを管理系に限定し、職務と指揮命令系統を明確化してください。
2. 技術人文知識国際業務の基礎 在留資格の理解
本章では、建設業での採用を見据えて、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)の基本構造を整理します。技人国は「専門性のある知識・技術を要するホワイトカラー業務」に限って外国人の就労を認める在留資格であり、施工管理や設計などの専門職は対象となり得ますが、現場作業主体の業務は対象外です。
2.1 法的根拠 在留資格該当性と上陸許可基準
審査は「在留資格該当性(業務の性質が技人国に当たるか)」と「上陸許可基準(学歴・経験・報酬などの基準を満たすか)」の二段階で判断されます。実務では業務内容の専門性と雇用条件の客観的立証が鍵です。
| 観点 | 判断の軸 | 建設業での具体例 | 主な立証資料 |
|---|---|---|---|
| 在留資格該当性 | 業務が自然科学・人文科学の知識や国際業務の専門性を要するか | 施工管理(工程・品質・原価・安全等の管理)、建築・土木設計、積算、BIM運用、技術営業 | 職務記述書、組織図、配属先の業務フロー、施工計画書・設計計画書のサンプル |
| 上陸許可基準 | 学歴・実務経験、報酬水準、契約の適法性・継続性を満たすか | 学位と職務の関連性、同等以上の報酬、日本人と同等の処遇 | 最終学歴証明・成績証明、職務経歴書、雇用契約書、就業規則・賃金規程、決算書 |
「該当性」を職務内容で、「基準」を応募者属性と雇用条件で、それぞれ別建てで説明・立証することが不許可回避の要点です。
2.2 学歴要件 大学 短大 専門学校 実務経験
技人国では、原則として職務と関連する学歴または相応の実務経験が必要です。学位と担当業務の関連性(専攻分野の近接性)を明確に示します。
| 充足ルート | 典型例 | 留意点 | 提出資料の例 |
|---|---|---|---|
| 大学院・大学卒 | 建築学、土木工学、機械・電気、都市計画、経営工学など | 専攻と職務(設計・施工管理・設備設計・BIM等)の関連を具体化 | 卒業証明・成績証明、研究テーマ要旨、関連科目シラバス |
| 短期大学卒 | 建築・土木系短大、工業高専の専攻科等 | 担当業務の範囲を基礎~中級レベルで設計し、OJT計画を明示 | 卒業証明、カリキュラム概要、育成計画書 |
| 専門学校修了 | 専修学校専門課程(専門士)で建築・CAD・BIM 等 | 修得スキル(CAD/BIM、構造・設備基礎)と職務の結び付け | 専門士の称号証明、作品ポートフォリオ、課題成果物 |
| 実務経験 | 同種業務における相応の職務経験 | 年数だけでなく内容(役割・成果・使用ツール)を詳細化 | 在職証明、職務証明、実績資料(図面・計画書・工程表等) |
学歴と職務の「合理的関連性」を文章と資料で可視化することが最重要です。関連が弱い場合は、実務経験や社内研修計画で補強します。
2.3 職務内容の専門性 日本人同等の待遇が必要
技人国における職務は、主として企画・調査・設計・管理・分析・折衝等のホワイトカラー業務である必要があります。建設業では、施工管理の計画・工程・品質・原価・安全の各管理、設計業務(意匠・構造・設備)、BIM/CIMのモデリング・コーディネート、技術提案・積算・技術営業などが典型例です。一方、資材搬入、型枠・鉄筋・左官・配管等の現場作業は対象外です。
| 区分 | 例示 | 審査でのポイント |
|---|---|---|
| 対象業務 | 施工計画立案、工程表作成・進捗管理、品質・安全指標管理、設計検討・図面チェック、BIM運用、顧客・協力会社との技術折衝 | デスクワーク中心の比率、専門知識の必要性、責任範囲が明確であること |
| 対象外 | 現場作業主体の業務、単純労務、肉体労働を主とする付随作業 | 求人票・雇用契約・就業規則から現場作業を主務としないことを明確化 |
| 報酬・待遇 | 日本人と同等以上の賃金水準、手当、昇給・評価制度 | 雇用契約書、賃金規程、賃金テーブル、同職種の日本人比較資料で立証 |
報酬は「同種業務に従事する日本人と同等額以上」であることが必須で、就業場所・指揮命令系統・配属先の明確化も重要です。社内の育成・研修計画(日本語・法令・安全衛生)の整備は専門性の担保として有効です。
3. 施工管理の採用実例とポジション設計
施工管理での外国籍人材の配属は、現場作業を行わず、工程・品質・原価・安全の各管理と書類作成、関係者調整を中心としたポジション設計が鍵です。職務を「管理・技術・調整」に限定し、肉体的な現場作業を代替させない体制を明示することが実務上の必須要件です。
| 採用ポジション例 | 主担当業務 | 現場での立ち位置 | 適合のポイント |
|---|---|---|---|
| アシスタント施工管理(新卒・第二新卒) | 日報と出来高の取りまとめ、写真台帳整備、工程表更新補助、資材発注補助、定例会議の議事作成 | 現場代理人・主任技術者の指示のもとで記録・調整を担当 | 事務・技術補助に特化し、現場作業はしない |
| 施工管理エンジニア(中堅) | 週次工程の調整、協力会社の調整、品質検査の立会い、安全巡視、出来高・原価の月次集計 | 所長・監理技術者の補佐としてサブリーダーを担当 | 専門的な管理判断と記録の作成を担う |
| 施工図・納まり調整担当(CAD/BIM併用) | 施工図作成・修正、納まり検討、資料作成、関係者調整会議の準備・進行補助 | 設計・工事監理・協力会社間の調整ハブ | 図面・技術資料に基づく調整で管理業務に該当 |
「現場への入場=現場作業」ではありません。入場は検査立会い・打合せ・巡視・記録のために限定し、作業指示と安全上の権限系統を常に明確化してください。
3.1 職務範囲 工程 品質 原価 安全の管理
配属時は、工程・品質・原価・安全の4領域を明確に分け、担当タスクと成果物を定義します。下記のように「何を・いつまでに・どの形式で」出すかを採用通知と就業規則、現場キックオフ資料に反映すると運用が安定します。
| 管理領域 | 主なタスク | 成果物・記録 | 代表的なツール |
|---|---|---|---|
| 工程管理 | 総合工程表作成、週次工程調整、定例進捗会の運営補助 | 工程表、週報、アクションリスト | 表計算ソフト、工程管理ソフト、ガントチャート |
| 品質管理 | 検査計画の策定、受入検査・中間検査の立会い、出来形管理 | 写真台帳、検査記録、是正管理表 | 写真管理アプリ、品質チェックリスト |
| 原価管理 | 見積比較、出来高集計、発注稟議作成、月次原価の予実管理 | 出来高報告、発注台帳、原価レポート | 会計・購買システム、原価管理表 |
| 安全管理 | リスクアセスメント、安全パトロール、是正指示とフォロー | KY記録、安全巡視記録、是正完了報告 | 安全チェックリスト、是正管理ツール |
記録・帳票は「作成者・確認者・承認者」を分け、指揮命令系統を文書化しておくと、審査や監査での説明が容易です。
3.2 監理技術者 主任技術者との関係と留意点
現場の法定技術者(監理技術者・主任技術者)は建設業法に基づき選任されます。外国籍か否かを問わず、要件を満たす者のみが就けます。配属初期は補助業務に重点を置き、資格取得や実務経験の積み上げによって権限範囲を段階的に拡大します。
| 役割 | 必須資格・証明の例 | 外国籍人材の関与例 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 監理技術者 | 該当工種の要件に合致する資格・実務、監理技術者資格者証 | 工程・品質の調整支援、施工計画・検査資料の作成 | 名義貸しの禁止、専任義務の履行、権限の明確化 |
| 主任技術者 | 指定の国家資格または一定の実務経験 | 検査立会い補助、施工要領書・チェックリスト整備 | 指揮命令は会社内の技術者から受けることを文書化 |
| 現場代理人 | 会社の権限委任(社内規程・委任状) | 議事録・打合せ資料作成、協力会社調整 | 発注者から直接の指揮命令を受けない体制 |
役職名称と実態を一致させ、権限・責任・承認範囲を採用通知書と現場体制図に明示してください。
3.3 現場書類 施工計画書 安全書類 グリーンファイル
施工管理の実務では、施工計画・体制台帳・労務安全(グリーンファイル)などの整備と更新が中心業務になります。提出先・保管場所・更新頻度を決め、改定履歴を残す運用にします。
| 書類区分 | 主な内容 | 作成・更新タイミング | ポイント |
|---|---|---|---|
| 施工計画書・工程表 | 施工手順、品質基準、検査計画、総合・週次工程 | 着工前作成、工程変更時に随時更新 | 承認フローを明記し版管理(版数・日付・承認者)を徹底 |
| 施工体制台帳・再下請負関連 | 元請・下請の体制、再下請負通知、作業計画 | 新規入場・体制変更時 | 指揮命令系統の一貫性を図示し、責任分界点を明確化 |
| 安全書類(グリーンファイル) | 安全衛生管理計画、作業員名簿、資格証・技能講習修了証写し、KY・パトロール記録 | 入場時提出、月次・工程節目で更新 | 虚偽・未整備は入場停止や重大なリスクにつながるため、原本確認と有効期限管理を徹底 |
| 検査・品質記録 | 受入検査記録、出来形・配筋写真、是正報告 | 各検査時、引渡し前に総括 | 写真台帳は撮影条件・位置情報・キャプションを統一 |
個人情報や資格証写しの取り扱いは社内規程に沿って権限者のみがアクセスできるよう制限し、在留期間や資格の更新予定も併せて管理します。
4. 設計の採用実例とキャリアパス
4.1 意匠 構造 設備の実務 CAD BIMの活用
建築設計職での外国人採用は、意匠・構造・設備いずれも専門性の高い知的業務として成立します。要件を満たすため、職務記述書には担当フェーズ(基本計画・基本設計・実施設計・設計監理)と成果物、使用ツールを明確化し、現場作業を含めない設計・調整中心の役割を定義します。BIMは干渉チェック、数量拾い、属性管理、工程・コスト連携で活用し、CADは図面整備と詳細表現に用います。
| 区分 | 主な業務 | 代表的な成果物 | 関連ソフト/環境 | 主要法規 |
|---|---|---|---|---|
| 意匠設計 | 要件定義、基本計画、意匠ディテール、BIMモデル統括 | 配置図・平立断面、仕上表、意匠詳細図、モデル仕様書 | AutoCAD、Revit、Archicad、Photoshop | 建築基準法、条例 |
| 構造設計 | 構造計画、荷重・応力度検討、配筋・接合の検討 | 構造計算書、構造図(伏図・軸組・配筋)、耐震検討書 | Revit(構造)、構造計算ソフト、Navisworks | 建築基準法(耐震関連) |
| 設備設計 | 空調・衛生・電気計画、負荷計算、機器選定、系統計画 | 設備系統図、ダクト・配管・配線図、機器リスト、BIM属性 | Revit(MEP)、AutoCAD、各種計算ツール | 建築基準法、省エネ関連基準 |
実務では、BIMモデルを中心に意匠・構造・設備が属性統合し、干渉検出や数量算出を自動化します。図面はモデルからのビュー生成+ディテール追記で整備し、設計変更はモデル管理規程に沿って履歴・承認を記録します。
4.1.1 AutoCAD Revit Archicadの運用体制
運用体制は「標準化・品質・連携」を柱に構築します。具体的には、テンプレート/ファミリ/図枠の社内標準、ビュー/シートの命名規則、IFCでのデータ交換、バージョン固定と検証環境、クラッシュ検出の定期実行、承認ワークフロー(レビュースタンプ・電子署名)を整備します。
| 運用項目 | 実務ポイント | 品質管理 |
|---|---|---|
| テンプレート/ファミリ | パラメータ統一、部材命名、属性コード体系 | 登録・改訂の審査会、変更履歴の文書化 |
| データ連携 | IFC出力設定、座標原点統一、外部協力会社指針 | 入出力検証チェックリスト、モデル監査 |
| 図面生成 | ビュー種別と尺度の規定、注記スタイル統一 | ピアレビュー、承認フロー、版管理 |
4.2 顧客折衝 提案書 図面チェック 設計監理
顧客折衝では要件定義・ゾーニング・コスト/工期の前提を固め、提案書はコンセプト、面積/性能、概算、リスクと代替案をセットで提示します。図面チェックは法適合、納まり、干渉、施工性、メンテナンス性を観点に実施し、レビュー記録と是正指示を残します。設計監理は施工段階での図面照合、サブミット/ショップ図の審査、材料承認、現場確認(立会い)を行い、施工の指揮命令ではなく、設計図書に基づく確認・指示・記録という知的業務に限定します。
| プロセス | 主なアウトプット | チェック観点 |
|---|---|---|
| 提案/基本計画 | 提案書、ゾーニング図、概算、工程表 | 要件充足、法適合、コスト整合性 |
| 実施設計 | 実施図一式、仕様書、モデル納品 | 納まり、干渉、メンテ性、数量整合 |
| 設計監理 | 審査記録、材料承認、是正指示書、竣工検査記録 | 図書整合、品質基準、工程影響 |
4.3 建築基準法 建設業法の理解と社内教育
コンプライアンス確保のため、設計職は建築基準法(用途・容積・日影・避難・防耐火・構造・設備)と確認申請実務、並びに建設業法(請負契約、主任技術者・監理技術者、下請・再委託の制限)の基本を体系的に学びます。地方条例・基準類は物件所在地に応じて追加し、社内レビュー基準に落とし込みます。
| 期間 | 教育テーマ | 到達目標 | 評価方法 |
|---|---|---|---|
| 入社〜3カ月 | 法規基礎、確認申請、社内設計基準、BIM/CAD操作 | 小規模物件の実施図一式を先輩レビュー下で完遂 | 図面レビュー、操作テスト |
| 6〜12カ月 | 防耐火・避難計画、設備負荷計算、干渉チェック | 中規模物件での担当図面・モデルを独力で担当 | 案件KPI、モデル監査、法適合チェック |
| 1〜3年 | VE提案、コスト・工程連携、設計監理ドキュメント | サブリーダーとして対外調整と承認の主担当 | 発注者評価、是正件数、工程遵守率 |
キャリアパスは「アシスタント設計者→担当設計者→プロジェクトリーダー→設計マネージャー/設計監理責任者」へ段階的に進み、専門領域(意匠・構造・設備)とBIM統合力の両輪で評価されます。評価指標は法適合率、手戻り削減、干渉検出率、コスト整合、顧客満足、図書品質です。
5. 不許可になりやすい事例と回避のポイント
出入国在留管理庁が示す在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門的・技術的な知識に基づく業務が前提です。以下は建設業で不許可につながりやすい典型と、実務での回避策です。
5.1 偽装請負 客先常駐での指揮命令の不整合
受入企業(請負先)の現場担当者が日々の業務指示・勤怠管理・評価を直接行う形は、労働者派遣に該当し得るため、在留資格の該当性が否定されやすい(請負・派遣の区分は厚生労働省ガイドライン参照)。
| よくあるNG | 審査での論点 | 回避のポイント/提出資料 |
|---|---|---|
| 客先常駐で客先が日々の指揮命令・勤怠承認 | 派遣該当の疑い/請負か準委任かの区分不明 | 成果物ベースの業務仕様書・検収フロー、指揮命令系統図、自社現場管理者の配置・週次巡回記録 |
| 自社が評価・人事権を行使せず実体が客先に | 雇用実態不明(入管法上の雇用主要件) | 人事評価記録・勤怠システム権限の自社管理、教育計画・OJT記録 |
| 勤務地・就業先が不特定のSES一律契約 | 活動内容・場所が特定されず該当性が曖昧 | 配属先工事・期間・職務の特定、変更時の手続き方針、個別契約・工事注文書の写し |
常駐が不可という趣旨ではなく、請負の実体(成果責任・体制・指揮命令の独立性)が客観資料で説明できない形が不許可リスクです。
5.2 職務が現場作業中心に見える求人票と契約書
「技術・人文知識・国際業務」は現場での肉体労働・単純作業を目的とする活動は不可。施工管理・設計としての専門業務が明確であることが必要です。
| 求人・契約の表現 | NG理由 | 改善例(職務の特定) |
|---|---|---|
| 資材運搬・養生・片付け等の軽作業を担当 | 単純労働が主目的に見える | 工程・品質・原価・安全の管理、協力会社の調整、写真管理・出来形確認、施工計画書・安全書類の作成 |
| 未経験可・学歴不問で現場作業から開始 | 専門性・学歴要件の充足が不明 | 建築・土木・設備系の学位または相当実務経験を要件化、CAD/BIM等の実務要件を明記 |
| 勤務地:全国の現場(職務・配属先未特定) | 活動内容・場所が不特定 | 配属部門・担当工事・出張頻度の範囲を特定、現場は管理業務に限定と記載 |
雇用契約書・職務記述書・体制図には、設計(意匠・構造・設備)や施工管理としての業務範囲、使用ツール(例:CAD、BIM)、関与する図書(施工計画書・安全書類等)を具体化します。
「現場作業の補助」「軽作業あり」などの表現は、専門的業務の副次作業に留まることが客観的に示せない限り避けるのが安全です。
5.3 低い賃金 テンプレ書類 事業の安定性不足
日本人と同等以上の報酬水準や継続雇用の見通しが説明できない申請は不許可リスクが高い(在留資格の趣旨は出入国在留管理庁参照)。
| リスク要因 | 審査の懸念 | 用意すべき根拠資料 |
|---|---|---|
| 地域相場とかけ離れた低賃金・各種手当なし | 日本人同等性に疑義/生活基盤の不安 | 賃金規程・給与テーブル、同職種の賃金台帳、有期雇用の場合の更新方針 |
| 固定残業代のみで超過清算の規定なし | 労基法違反の疑い・労務管理不備 | 固定残業の時間数と超過清算の明文化、36協定、勤怠実績・残業代支給記録 |
| 申請理由書が抽象的(テンプレ記載) | 職務の専門性・必要性が不明確 | 具体的な業務計画・配属先の体制図、担当工程や評価KPI、使用ソフト・規格の特定 |
| 直近決算で赤字継続・受注残の裏付け不足 | 継続雇用の安定性に懸念 | 決算書・試算表、工事請負契約書の写し、受注残一覧・年度の業務計画 |
| 社会保険未加入・源泉徴収や労災手続の不備 | コンプライアンス体制の欠落 | 健康保険・厚生年金の適用資料、労災・雇用保険の加入証明、就業規則・安全衛生教育記録 |
報酬水準は地域・職種の相場を踏まえ、雇用契約書・賃金規程・賃金台帳で客観的に説明します。事業の安定性は決算・受注計画・人員計画で示し、更新時には稼働実績・評価記録も添付します。
6. 申請フローと必要書類の具体例
建設業で「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)により施工管理・設計職を採用する際の、申請フローと必要書類の代表例を整理します。申請は本人または所属機関、もしくは申請取次行政書士が行えます。オンライン申請(在留申請オンラインシステム)も利用可能です。就労開始は許可後です。許可が出る前に業務に従事させないことが最重要の遵法ポイントです。
6.1 在留資格変更 新規 更新のスケジュール
採用内定から逆算し、手続別に必要な準備と完了の目印を明確化します。必要期間は事案や時期で変動するため、余裕を持った計画を立ててください。
| 手続き | 主なステップ | 申請者区分 | 申請先・経路 | 完了の目印 |
|---|---|---|---|---|
| 新規(海外在住者) | 雇用契約締結 → 在留資格認定証明書(COE)申請 → COE交付 → 在外公館で査証申請 → 入国・在留カード受領 | 海外から採用 | 出入国在留管理局/日本大使館・総領事館 | 在留カード、就労可の在留資格記載 |
| 在留資格変更 | 雇用契約締結 → 変更許可申請(例:留学→技人国) → 許可 → 在留カード書換 | 国内在住者(留学・家族滞在など) | 出入国在留管理局(窓口/オンライン) | 在留カードの新資格表記 |
| 在留期間更新 | 雇用継続確認 → 更新許可申請 → 許可 → 在留カード更新 | 技人国で就労中 | 出入国在留管理局(窓口/オンライン) | 在留カードの新有効期限 |
配属先・職務内容・雇用条件が固まっていない申請は不許可リスクが高いため、内定段階で必要資料の確度を上げ、申請直前に最新化する運用が肝要です。
6.2 会社の体制図 決算 業務計画 配属先の明確化
所属機関(受入企業)の実在性・継続性・雇用管理体制・職務の専門性を裏づける資料を事前整備します。施工管理・設計いずれの場合も、配属先と指揮命令系統が一貫していることを、契約関係と併せて説明できることが重要です。
| 書類(会社側) | 主な内容 | 審査観点 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書・会社案内 | 商号・所在地・事業目的・沿革 | 実在性・事業の適法性 |
| 組織図・体制図 | 配属部署、上長、指揮命令系統 | 適正な雇用管理体制 |
| 決算書一式(直近) | 貸借対照表・損益計算書等 | 事業の継続性・支払能力 |
| 雇用契約書/労働条件通知書 | 職務内容・勤務地・賃金・労働時間 | 日本人と同等以上の処遇・実態との一致 |
| 就業規則・賃金規程 | 給与テーブル、評価制度 | 処遇の客観性・同一労働同一賃金への配慮 |
| 職務記述書(JD)・業務計画書 | 担当範囲、使用ツール、期待成果、教育計画 | 職務の専門性・継続性 |
| 配属先の案件資料 | 工事名称・所在地・工程・契約(請負)概要 | 施工管理の実務性と現場作業との線引き |
| 図書類のサンプル | 施工計画書・安全書類(グリーンファイル)様式 | 担当業務の具体性 |
| 取引・委託の説明資料 | 請負/派遣の有無、再委託管理方針 | 偽装請負の回避・コンプライアンス |
| 安全衛生・労務管理の体制 | 36協定届、教育計画、社内研修要領 | 適正な受入体制の担保 |
| 雇用理由書 | 採用背景、選考経緯、配置の妥当性 | 在留資格該当性・必要性の説明 |
配属先、契約形態、指揮命令系統、職務範囲(管理・設計であって現場作業ではない)の整合性を、書面と実態の両面で一致させることが許可の鍵です。
6.3 応募者の学位 経験 JLPT 実績の証明方法
応募者側は、学位・専攻と職務の関連性、または実務経験、業務遂行に必要な日本語能力・実績を客観資料で示します。設計はポートフォリオ、施工管理は実績一覧・関与範囲の説明が有効です。
| 書類(応募者側) | 対象・場面 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 履歴書・職務経歴書 | 全手続き | 専攻・職歴と担当職務の対応関係 |
| 卒業証明書/学位記の写し | 新規・変更 | 大学・大学院・短大・専門学校(専門士等)の修了を証明 |
| 成績証明書・履修科目一覧 | 新規・変更 | 専攻内容が建設分野の職務に関連 |
| 在職証明書・職務内容証明 | 新規・変更 | 従事業務、期間、役割、上長署名等の客観性 |
| 資格証の写し | 該当者(例:一級・二級建築士、1級・2級施工管理技士など) | 職務の専門性の補強 |
| ポートフォリオ/実績資料 | 設計・BIM/CADオペレーション | 図面・BIMモデル(AutoCAD/Revit/ArchiCAD等)の成果物 |
| 日本語能力の証明 | 全手続き | JLPT合格証(目安:業務要件に応じてN2〜N1等)。法令上の必須ではないが実務上の評価資料 |
| パスポート・写真・申請書 | 全手続き | 記載漏れ・有効期限の確認 |
| 在留カードの写し・住民票 | 変更・更新 | 現行在留状況の確認 |
| 課税(所得)証明書・納税証明書 | 更新(国内就労中)・一部変更 | 収入・納税状況の確認(最新年度) |
学位・専攻(または実務経験)と担当職務の関連性を、職務記述書・雇用理由書・成果物で三位一体に立証する構成が、審査の納得性を高めます。
7. 雇用形態と外部委託の取り扱い
建設業で外国籍人材を「技術・人文知識・国際業務」で受け入れる際は、雇用形態と委託スキームに応じた法令(入管法・労働者派遣法・建設業法)と指揮命令系統の整合を可視化し、偽装請負や派遣禁止業務への該当を避ける設計が必須です。以下に、派遣・請負・準委任(SES)・出向・下請け/再委託の実務上の留意点を整理します。
7.1 労働者派遣法の遵守 SES常駐の注意点
労働者派遣は「派遣先の指揮命令下で就労」する形態です。建設分野では、現場で行う建設作業は派遣禁止業務に該当し得るため、現場配属の派遣運用は厳格な適法性判断が必要です。一方、設計・BIM・CAD等のオフィス業務は業務内容を限定し、就業場所・指揮命令者・期間を契約と就業条件に明記すれば適法運用の余地があります。施工管理を派遣で行う場合は「建設業務」該当性の判断が難しく、禁止業務に触れるリスクがあるため、事前に法的確認と運用統制を徹底してください。
| 契約形態 | 指揮命令者 | 主な責任 | 技術・人文知識・国際業務での留意点 |
|---|---|---|---|
| 直接雇用(自社配属) | 自社 | 労務・安全・成果管理は自社 | 最も整合が取りやすい。職務記述書で専門性と現場作業不従事を明確化。 |
| 直接雇用(客先常駐) | 原則自社(客先は業務調整のみ) | 労務管理は自社、現場ルール順守 | 常駐でも自社指揮を維持。業務仕様書・体制図で役割分担と報告経路を明示。 |
| 労働者派遣 | 派遣先 | 派遣元=雇用、派遣先=指揮命令・安全配慮 | 建設作業は派遣禁止に該当し得る。設計等は業務限定と台帳整備で適法運用を担保。 |
| 請負(成果物契約) | 請負人(自社) | 完成責任と品質・原価管理は自社 | 客先の直接指揮は不可。成果物・検収基準を契約化し、日々の指示は自社経由。 |
| 準委任(SES/役務提供) | 自社(善管注意義務) | 作業提供と進捗管理は自社 | 客先による勤務時間・作業方法の直接指示が常態化すると偽装請負に該当し得る。作業範囲・報告経路を明確化。 |
| 出向(在籍出向) | 出向先(人事権は契約に応じて按分) | 賃金・評価・安全衛生の分担を契約で定義 | 就業先・職務・処遇の変更が在留資格該当性を逸脱しないよう事前精査。 |
準委任(SES)での客先常駐は、納期・品質・アウトプットの管理を自社で行い、客先は成果受領と要件調整に限定する運用が基本です。日々の業務指示・勤怠管理・評価が客先主導に移ると、実態が派遣化し違法リスクが高まります。業務仕様書・月次報告・検収記録で役務の独立性を証跡化してください。
7.2 下請け 再委託の管理 指示命令系統の整理
元請—下請—再委託の多層構造では、誰が誰に指示できるのか(指揮命令系統)と、外国籍人材の業務範囲(設計・施工管理等の専門業務)を一次資料で特定することが肝要です。現場に出向く場合も、現場作業の代替や欠員補充としての肉体労働は不可です。
| 管理項目 | 要点 |
|---|---|
| 体制図・連絡網 | 元請/下請/再委託の組織と責任者、指揮命令の流れ、報告経路を図示。 |
| 業務仕様書・役割定義 | 工程・品質・安全・原価のどこを担当するか、現場作業は行わない旨を明記。 |
| 契約条項(再委託) | 再委託の可否・承諾手続・範囲制限・秘密保持・個人情報管理を明文化。 |
| 入場・安全衛生 | 入場許可、KY/リスクアセスメント、特別教育等の受講記録を整備。 |
| 勤怠・時間外管理 | 勤怠記録は雇用主で一元管理。現場カレンダー連動時も36協定範囲内に収める。 |
| 検収・成果記録 | 請負/準委任は検収書や月次報告で成果・役務提供の実績を可視化。 |
客先が直接に日々の作業を指図し、雇用主が形骸化する運用は偽装請負と評価されやすく、在留資格の審査でも不利に働きます。合意された業務範囲外の指示は受けず、必要時は契約変更で整合を取りましょう。
7.3 受入企業の責任範囲 コンプライアンス強化
受入(雇用)企業は、雇用契約・賃金支払・社会保険・安全衛生・教育の実施と記録化に最終責任を負います。外部委託や常駐を伴う場合でも、就業場所・職務・指揮命令系統の変更が在留資格の該当性と矛盾しないことを継続点検し、重大な変更は事前に専門家へ相談してください。
| リスク事例 | 何が問題か | 回避策 |
|---|---|---|
| 偽装請負(SES常駐で客先が直接指揮) | 実態が派遣に近く違法リスク。在留資格審査でも整合不良。 | 仕様書・体制図で自社指揮を担保。客先指示は要件調整に限定し証跡化。 |
| 現場作業への従事 | 在留資格の専門性要件に反し不許可・更新不利の恐れ。 | 職務記述書で非該当業務を禁止。現場は監理・検査・調整に限定。 |
| 派遣・委託書類の不備 | 指揮命令・責任分担が不明確で法令違反の温床。 | 契約・就業条件明示・台帳・検収等の基礎書類を整備・更新。 |
| 常駐先での人事管理(評価・勤怠・休暇) | 雇用主責任の逸脱。トラブル時の救済が不明確。 | 評価・勤怠・休暇承認は雇用主が主導。協議ルールを契約化。 |
最終的には、雇用主が処遇・教育・安全を統括し、委託や常駐で分散した実務を契約・体制・記録で統合管理することが、法令適合と在留資格の安定運用につながります。
8. 給与制度 労務管理 安全衛生
8.1 初任給相場 賃金テーブル 同一労働同一賃金
外国人であっても「技術・人文知識・国際業務」の社員は、日本人と同等以上の処遇・職務基準・評価基準を適用し、同一労働同一賃金を徹底することが原則です。就業規則・賃金規程・人事評価表・雇用契約書に、等級・役割・職務要件・手当の支給基準を明示し、差別的取り扱いを排除します(労働基準法等の法令は労働基準法を参照)。
初任給は地域・企業規模・職種(施工管理・設計)で変動するため、最新の統計や同業水準を踏まえ、所定内給与・賞与・各種手当・通勤費・住宅補助等を総額で整合させます。固定残業代を用いる場合は、対象時間・金額・算定基礎・超過分支給・不実態業務の禁止を規程と契約書に明記します。
| 等級 | 対象職種 | 基本給の方式 | 主な手当(例) | 時間外手当の扱い | 昇給・評価指標 |
|---|---|---|---|---|---|
| 等級1(新卒・既卒) | 施工管理補助・設計補助 | 月給制(所定内給与) | 通勤・住宅・資格見習い手当 | 実残業支給/固定残業代明記(超過別途) | 基本行動・能力要件・出退勤・研修修了 |
| 等級2(担当) | 施工管理(工程・品質・安全)/意匠・構造・設備設計 | 月給制+職務手当 | 現場手当・資格手当(施工管理技士・建築士) | 法定割増をシステム計算(1分単位を推奨) | QCDS目標・図面品質・法令遵守・顧客評価 |
| 等級3(主任・リーダー) | 現場所長補佐/意匠・構造・設備リード | 月給制+役割手当 | 管理手当・現場責任手当・語学手当 | 固定残業代の適否を職務実態で判断 | 案件収益・部下育成・安全指標・顧客満足 |
職務給(ジョブ型)を採用する場合は、職務記述書(ジョブディスクリプション)を英日併記で整備し、配転・昇格・賃金改定のルールを透明化します。待遇差の説明責任に備え、ガイドラインやQ&A等は厚生労働省の特設情報を参考に整えます(厚生労働省 働き方改革特設サイト)。
8.2 残業時間管理 36協定 有給休暇の運用
36協定未締結・未届出の事業場では、原則として時間外・休日労働はできません。工期が逼迫する建設業でも、上限規制の遵守・特別条項の適正運用・協定書様式の整備・労働者代表選出の適正化が不可欠です(制度の概要は厚生労働省 働き方改革特設サイト)。
勤怠管理はICカード・モバイル打刻・工事現場ゲート連携等で客観記録を残し、直行直帰分や移動時間を含めて把握します。法定の割増賃金率に基づき深夜・休日・時間外を自動計算し、代休・振替休日の取扱いを規程化します。発注者打合せ・夜間作業・立会検査などのイレギュラー時間は事前申請のワークフローで統制します。
年次有給休暇は、時季指定や計画的付与制度を活用し、年5日の確実な取得を担保。工程計画に休暇取得の前提を組み込み、繁忙期の集中を避けます。多言語就業規則・休暇申請ガイド・勤怠ダッシュボードで、外国籍社員にも運用を可視化します(根拠法は労働基準法)。
8.3 社会保険 労災 法定教育 安全衛生教育
社会保険は適用事業所での加入を原則とし、健康保険・厚生年金、雇用保険、労災保険の資格取得手続きを適時に実施します。雇用保険は所定労働時間要件、労災保険は全労働者適用を徹底。通勤災害・業務災害の区分、休業補償の手続き、外国籍家族の被扶養者認定などを入社時オリエンテーションで説明します。
施工管理・設計が現場に入場する場合、現場作業を行わなくても法定の安全衛生教育と保護具の適正着用が必須です。新規入場者教育、職長・安全衛生責任者教育、墜落制止用器具(フルハーネス)特別教育、足場等の特別教育、石綿関連教育などを業務範囲に応じて受講させ、KYT(危険予知活動)・ヒヤリハット共有・リスクアセスメントを日常化します(法体系は労働安全衛生法)。
常時50人以上の事業場では産業医選任・衛生委員会設置・定期健康診断・面接指導等を実施。特に多国籍チームでは、安全書類(安全衛生計画書、作業手順書、リスクマトリクス)を平易な日本語と図解で整備し、通訳・ピクトグラム・多言語掲示で理解度を担保します。
9. よくある質問
9.1 日本語能力 JLPTは何級が目安か
法令上、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に日本語能力の等級要件は明記されていません。ただし、建設業の施工管理や設計では、図面・仕様書の読解、協力会社・発注者とのコミュニケーション、安全衛生に関する指示伝達が必要になるため、実務上は一定の日本語力が求められます。
| 職種・場面 | 目安となる日本語レベル | 評価ポイント(例) |
|---|---|---|
| 施工管理(現場) | JLPT N2目安(安全指示・報告が頻繁なため) | 安全書類の理解・KY活動の発言、工程打合せの参加、是正指示の口頭説明 |
| 設計(意匠・構造・設備) | N2〜N1目安(顧客折衝・審査機関連携がある場合はN1望ましい) | 法令条文・質疑応答書の読解、図面チェックコメントの記述、審査対応の口頭説明 |
| 社内業務中心(CAD・BIM実装補助) | N2相当(読み書き重視。対外コミュニケーション少なめ) | 設計変更指示の読解、BIMルールの理解、進捗・品質報告の文書化 |
採用判断は等級だけでなく、業務文書作成・口頭説明・法令読解など実技評価を併用するのが有効です。内定後は、建築基準法・建設業法・安全衛生の日本語研修、用語集整備、OJTでのロールプレイ等で早期戦力化を図ると定着に寄与します。
9.2 転職や配置転換は可能か
同一の在留資格(技術・人文知識・国際業務)の「活動範囲」に収まる転職・配置転換であれば、原則として在留資格変更は不要です。一方、現場作業中心など専門性を欠く職務に実態が変わる場合は不該当となり得るため、職務記述書や雇用契約で専門性・ホワイトカラー業務を明確化してください。
雇用先の変更・離職・新規就職の際は、在留カード所持者に「所属機関に関する届出」(14日以内)の義務があります。転職時には就労可否を明確にするため「就労資格証明書」の取得を推奨します。更新審査では、職務の専門性、報酬水準、日本人同等の待遇、継続雇用の安定性が確認されます。
客先常駐・派遣等では、指揮命令系統や契約形態(請負・派遣)の適法性が審査上の論点になります。偽装請負と誤認されないよう、作業指示・勤怠管理・評価権限の所在を契約と実態で一致させて運用してください。
9.3 家族帯同や永住への影響はあるか
配偶者・子は在留資格「家族滞在」で帯同が可能です(生計維持が可能な収入・住居等が前提)。「家族滞在」の配偶者が就労するには原則「資格外活動許可」(週28時間以内)が必要です。帯同可否や在留期間は本人の雇用の安定性・報酬・社会保険加入状況なども考慮されます。
永住許可は、原則として日本での在留が通算10年以上(うち就労資格で5年以上)などの要件に加え、素行善良、独立生計、納税・社会保険の適正な履行が審査されます。職を頻繁に離転職し無収入期間が長期化したり、職務が在留資格の範囲を逸脱していると、在留期間更新や永住審査に不利に働く場合があります。計画的なキャリア設計とコンプライアンス運用を心がけましょう。
10. まとめ
建設業での外国人採用は「技術・人文知識・国際業務(技人国)」を適切に用いれば実現可能です。対象は施工管理や設計といった専門的・技術的業務に限られ、現場での肉体労働や単純作業は範囲外です。これは在留資格該当性が学術的知識や高度な技能に基づく業務を求めているためであり、「現場作業は不可」というのが結論です。
現場作業が必要な場合は、職務に応じて「特定技能」など別の在留資格を検討するのが適切です。職務内容に作業従事が混在する設計や施工管理のポジションは不一致が生じやすいため、業務分担を明確化し、管理・設計・書類作成等に専念できる職務設計にすることが重要です。
許可の中核は、(1)職務の専門性と専攻の関連性(または相応の実務経験)、(2)日本人と同等以上の報酬、(3)職務内容・配置先・指揮命令系統の明確化、(4)事業の継続性の説明です。施工管理では工程・品質・原価・安全の管理や施工計画・安全書類の作成、設計では意匠・構造・設備の設計業務とCAD/BIMの活用(AutoCAD、Revit、Archicad等)を中心に据えると整合的です。
監理技術者・主任技術者の配置義務(建設業法)との関係では、誰が指揮命令を行うか、外国人が担当する範囲はどこかを就業規則・雇用契約・業務フローで一致させ、手作業を行わせない運用を徹底します。加えて、建築基準法、建設業法、労働基準法、労働安全衛生法の理解を前提とした社内教育体制を整備します。
不許可になりやすいのは、偽装請負や客先常駐での指揮命令の不整合、現場作業中心に見える求人票・契約書、相場を下回る賃金、テンプレート的で具体性に欠ける職務説明、財務・受注の見通しの弱さです。これらは、具体的な職務記述、配属の実体、賃金テーブル、決算書・受注計画・過去実績、成果物サンプルなどで裏付けて回避します。
申請運用では、在留資格認定・変更・更新の各局面で、会社の体制図、雇用契約、職務説明書、配属先の業務計画、応募者の学位・職歴・資格、語学能力(例:JLPT)やポートフォリオ等を整合的に整え、余裕を持ったスケジュールで進めます。派遣・委託を伴う場合は労働者派遣法や下請のルールに適合させ、指揮命令系統を明確化します。
労務面では、同一労働同一賃金、36協定に基づく時間外管理、年次有給休暇の適正運用、社会保険・労災の加入、安全衛生教育の実施など、受入企業としてのコンプライアンスを強化することが不可欠です。
結論として、要件に合致した職務設計と適正な処遇、法令順守と書類整備ができれば、技人国での施工管理・設計の採用は十分に可能です。現場作業を含む場合は在留資格の見直しを行い、BIMや設計監理など専門性の高いキャリアパスを用意することで、定着と許可の両面で成功しやすくなります。