コラム 技術・人文知識・国際業務

【2026年最新】技術・人文知識・国際業務ビザで通訳になるには?申請要件から必要書類まで徹底解説

行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

「語学力を活かして日本で通訳として働きたいけれど、どの在留資格(ビザ)を取得すればいいのだろう?」「技術・人文知識・国際業務ビザが該当すると聞いたけど、申請要件が複雑でよくわからない…」そんな悩みを抱えていませんか。あるいは、優秀な外国人通訳者を採用したいけれど、企業として何を準備すればよいのか分からず困っている人事担当者の方もいらっしゃるかもしれません。通訳としてのキャリアを日本でスタートさせるためには、正しいビザの知識と適切な申請準備が不可欠です。この記事では、2026年の最新情報に基づき、通訳者が「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するための全知識を、申請要件から必要書類、具体的な手続きの流れ、そして不許可になりやすいケースと対策まで、専門家の視点から網羅的に徹底解説します。結論からお伝えすると、通訳業務は「技術・人文知識・国際業務」ビザの中でも「国際業務」の分野に該当し、ビザ取得の鍵は「大学卒業以上の学歴」または「3年以上の実務経験」という要件を満たした上で、従事する業務内容に翻訳・通訳に関する専門性があること、そして日本人と同等額以上の報酬が支払われる安定した雇用契約があることを、客観的な資料で出入国在留管理庁に証明することです。この記事を読めば、まず「技術・人文知識・国際業務」ビザの基本と、なぜ通訳業務がこれに該当するのかという根本的な理由が理解できます。次に、ビザ申請の核心である「学歴要件」「実務経験要件」「業務内容の要件」「報酬要件」、そして「雇用企業の安定性」といった各審査項目を一つひとつ詳しく掘り下げます。特に、ご自身の経歴に合わせて「学歴で申請する場合」と「実務経験で申請する場合」のパターン別に、それぞれどのような準備が必要で、どのような点に注意すべきかを具体的に解説するため、迷うことなく準備を進められます。さらに、申請者本人と雇用企業がそれぞれ準備すべき必要書類を一覧で分かりやすくまとめ、書類準備から申請、結果通知までの手続きの流れをステップごとに紹介。ビザ申請で最も避けたい「不許可」についても、過去の典型的な失敗ケースとその具体的な対策を学ぶことで、申請の成功確率を格段に高めることができます。最後に、ビザ取得後の転職手続きや在留期間の更新、将来的にフリーランスとして活動できるのかといった、キャリアプランに関わる疑問にもQ&A形式でお答えします。この記事一本で、あなたが通訳として日本で活躍するための道筋が明確になり、自信を持ってビザ申請の第一歩を踏み出せるようになるでしょう。

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1. 技術・人文知識・国際業務ビザとは 通訳業務が該当する理由

日本で通訳として働く多くの外国人が取得しているのが、「技術・人文知識・国際業務」ビザです。まずは、この在留資格がどのようなものか、そしてなぜ通訳業務がこれに該当するのか、基本的な知識から確認していきましょう。

1.1 そもそも技術・人文知識・国際業務ビザとは

「技術・人文知識・国際業務」ビザ、通称「技人国(ぎじんこく)ビザ」は、専門的な知識やスキルを活かして日本で働くための代表的な就労ビザの一つです。このビザは、その名の通り「技術」「人文知識」「国際業務」という3つのカテゴリーに分類される業務に従事する活動をカバーしています。

大学や専門学校で学んだ専門知識や、これまでの実務経験を活かすことが前提とされており、単純労働と見なされる業務は対象外となります。具体的には、以下の表のように分類されます。

業務区分概要業務の具体例
技術理学、工学その他の自然科学の分野に属する知識を必要とする業務システムエンジニア、プログラマー、機械設計者、建築士など
人文知識法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務経理、法務、コンサルタント、マーケティング、企画など
国際業務外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務通訳、翻訳、語学教師、広報、海外取引業務など

これらの業務は、学術的な背景や専門的なスキルが求められる点で共通しています。より詳細な情報は、出入国在留管理庁のウェブサイトでも確認できます。

1.2 通訳業務は「国際業務」に分類される

通訳の仕事は、上記表の通り「国際業務」のカテゴリーに該当します。「国際業務」として認められるためには、出入国管理及び難民認定法において「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」と定められています。

これは、単に二つ以上の言語を話せるだけでなく、その言語が話される国の文化、習慣、ビジネス慣行などを深く理解し、それを背景としたコミュニケーションを仲介する能力が求められることを意味します。

例えば、商談の場でただ言葉を置き換えるだけでなく、言葉の裏にあるニュアンスや文化的背景を汲み取って円滑なコミュニケーションを促進する役割は、まさにこの「国際業務」の専門性に合致します。そのため、専門職である通訳は「技術・人文知識・国際業務」ビザの対象となるのです。

2. 通訳として技術・人文知識・国際業務ビザを申請するための要件

通訳として「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するには、申請者本人と雇用企業の双方が一定の要件を満たす必要があります。これらの要件は、申請者の専門性や能力、そして日本での安定した生活基盤を確保できるかを判断するために設けられています。ここでは、ビザ申請の際に審査される5つの主要な要件について詳しく解説します。

申請パターン学歴要件実務経験要件
学歴で申請大学・短期大学卒業または同等以上の学歴原則不要
実務経験で申請不問3年以上の関連業務経験

2.1 学歴要件 大学卒業者は実務経験が免除される

技術・人文知識・国際業務ビザを申請するための最も一般的な要件が学歴です。原則として、日本の大学もしくは短期大学を卒業しているか、または海外の大学を卒業し学士以上の学位を取得している必要があります。

この学歴要件を満たしていれば、通訳としての実務経験がなくてもビザを申請することが可能です。大学で学んだ内容と、これから従事する通訳業務との間に関連性があることが望ましいですが、必ずしも専攻が一致している必要はありません。

2.2 実務経験要件 3年以上の関連業務経験が必要

大学卒業以上の学歴がない場合でも、実務経験によって要件を満たすことが可能です。その場合、通訳・翻訳業務に関して3年以上の実務経験があることが求められます。この実務経験は、申請する業務内容と密接に関連している必要があります。

実務経験を証明するためには、過去に在籍した企業からの在職証明書など、客観的な資料の提出が不可欠です。どのような業務に、どのくらいの期間従事していたかを具体的に証明しなくてはなりません。

2.3 業務内容の要件 専門性が求められる通訳業務

従事する業務内容にも要件があります。このビザで許可されるのは、外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする、専門的な能力を活かした業務です。通訳の場合、単に言葉を置き換えるだけでなく、企業の会議や商談、技術指導、医療現場など、専門性が求められる場面での活動が想定されます。

飲食店での接客や工場のライン作業における簡単な指示の伝達など、単純労働とみなされる業務は認められません。雇用契約書や採用理由書で、担当する業務の専門性や具体性を明確に示すことが重要です。

2.4 報酬要件 日本人と同等額以上の給与水準

報酬額も重要な審査項目の一つです。申請者が受け取る給与は、同じ企業で同様の業務に従事する日本人従業員と同等額以上である必要があります。これは、外国人が不当に低い賃金で雇用されることを防ぎ、安定した生活を日本で送れるようにするための要件です。

比較対象となる日本人が社内にいない場合は、同業他社の同じ職種の賃金水準などが参考にされます。月給だけでなく、賞与や各種手当を含めた年収ベースで判断されるため、雇用契約書には報酬に関する詳細を正確に記載することが求められます。

2.5 雇用企業の安定性・継続性も審査対象

ビザの審査では、申請者本人だけでなく、雇用主である企業の経営状態もチェックされます。事業が適正に行われており、将来にわたって安定・継続して事業を営んでいける経営基盤があることが審査のポイントとなります。

審査では、企業の登記事項証明書や決算報告書(貸借対照表、損益計算書など)が確認されます。赤字決算が続いている場合や、債務超過の状態にある場合は、雇用を継続する能力に疑問符が付き、不許可のリスクが高まります。新規設立の会社であっても、詳細な事業計画書を提出し、事業の安定性や将来性を合理的に説明できれば許可される可能性はあります。より詳しい情報は出入国在留管理庁のウェブサイトでも確認できます。

3. 【パターン別】技術・人文知識・国際業務ビザの申請要件

技術・人文知識・国際業務ビザを申請するには、主に「学歴」で要件を満たす方法と、「実務経験」で要件を満たす方法の2つのパターンがあります。ご自身の経歴がどちらに当てはまるかを確認し、適切な準備を進めましょう。

3.1 学歴で申請する場合

大学や専門学校で学んだ知識を活かして通訳業務に従事する場合、学歴要件で申請します。この場合、学んだ専門分野と通訳業務との間に関連性があることを合理的に説明する必要があります。

3.1.1 日本の大学・短期大学を卒業した場合

日本の大学(大学院を含む)または短期大学を卒業し、「学士」または「短期大学士」以上の学位を取得している場合、学歴要件を満たします。文系・理系などの学部は問われません。この学歴要件を満たせば、通訳業務に関する実務経験は原則として不要です。卒業証明書や学位記の写しを提出することで学歴を証明します。

3.1.2 海外の大学を卒業した場合

海外の大学を卒業した場合も、日本の大学卒業者と同様に学歴要件を満たすことが可能です。ただし、その大学で取得した学位が、日本の「学士」や「短期大学士」に相当するものである必要があります。申請時には、卒業証明書に加えて、必要に応じて日本語の翻訳文を添付します。

3.1.3 専門学校卒業の場合の注意点

日本の専門学校(専修学校の専門課程)を修了した方が通訳としてビザを申請する場合、大学卒業者とは異なる注意点があります。以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 日本の専修学校の専門課程を修了していること
  • 「専門士」または「高度専門士」の称号を授与されていること
  • 専門課程で履修した科目と、従事する通訳業務との間に密接な関連性が認められること

特に3つ目の「関連性」は厳しく審査されます。例えば、語学系の専門学校で通訳・翻訳コースを専攻していた場合など、専門性と業務内容が直結していることを明確に示す必要があります。この基準は、出入国在留管理庁の在留資格「技術・人文知識・国際業務」に関するページでも示されています。

3.2 実務経験で申請する場合

大学卒業などの学歴要件を満たさない場合でも、通訳としての豊富な実務経験があればビザを申請できます。この場合、通訳業務に関して3年以上の実務経験があることが求められます。大学在学中のアルバイト経験は、原則としてこの実務経験には含まれません。

3.2.1 実務経験として認められる職務内容

実務経験として認められるのは、専門的な通訳業務に従事した経験です。例えば、以下のような職務が該当します。

  • 企業内での専属通訳(会議、商談など)
  • フリーランスとしての会議通訳、商談通訳
  • 行政機関や医療機関でのコミュニティ通訳
  • 司法通訳

単に「外国語が話せる」というだけでは不十分であり、報酬を得てプロフェッショナルとして通訳業務を行っていた客観的な証明が不可欠です。

3.2.2 実務経験を証明する方法

3年以上の実務経験は、客観的な資料によって証明しなければなりません。過去に在籍していた企業などから、以下の情報が記載された証明書を発行してもらう必要があります。

証明書類の例記載が必要な主な内容
在職証明書所属機関の名称、在職期間、担当した具体的な業務内容(「通訳」と明記)、役職
退職証明書在職証明書と同様の内容が記載されている必要があります。
推薦状上司や同僚から、申請者の通訳スキルや実績について具体的に記述してもらったもの。

これらの書類は、単に在籍していた期間を証明するだけでなく、どのような立場で、具体的にどのような通訳業務を行っていたかを第三者が客観的に理解できるよう、詳細に記述されていることが極めて重要です。

4. 技術・人文知識・国際業務ビザ申請の必要書類一覧

技術・人文知識・国際業務ビザを申請するには、申請者本人と雇用する企業がそれぞれ書類を準備する必要があります。特に、企業が準備する書類は、企業の規模(カテゴリー)によって異なります。ここでは、必要となる主な書類を一覧で解説します。最新の情報や詳細については、必ず出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。

4.1 申請者本人が準備する書類

まず、ビザを申請する外国人本人が用意すべき書類です。学歴で要件を満たすか、実務経験で満たすかによって、一部準備する書類が異なります。

  • 証明写真(縦4cm×横3cm): 申請前6ヶ月以内に撮影された、無帽・無背景で鮮明なもの。
  • パスポート及び在留カードの写し: 日本に在留中の方が在留資格を変更する場合に必要です。

4.1.1 在留資格認定証明書交付申請書

申請の核となる書類です。出入国在留管理庁のウェブサイトから指定の様式をダウンロードして作成します。所属機関(雇用企業)などが作成するページも含まれています。

4.1.2 学歴や職歴を証明する書類

申請要件を満たしていることを客観的に証明するための重要な書類です。

  • 学歴で申請する場合: 卒業証明書または卒業証書の写し。日本の専門学校を卒業した場合は、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書も必要です。
  • 実務経験で申請する場合: これまでの職務内容、役職、在籍期間が明記された在職証明書。

4.1.3 日本語能力を証明する資料

通訳業務の場合、言語能力は審査の重要なポイントです。必須ではありませんが、提出することで審査がスムーズに進む可能性があります。

  • 日本語能力試験(JLPT)の合格証明書
  • BJTビジネス日本語能力テストの成績証明書
  • 日本の大学や大学院で日本語を専攻した卒業証明書 など

4.2 雇用企業が準備する書類

雇用する企業側で準備する書類です。企業の安定性や事業の継続性を示すため、企業のカテゴリー(規模)に応じて提出書類が異なります。

カテゴリー該当する企業の例
カテゴリー1日本の証券取引所に上場している企業、相互会社、一定の条件を満たす公法人など
カテゴリー2前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人
カテゴリー3前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)
カテゴリー4上記のいずれにも該当しない団体・個人(新設法人など)

カテゴリーごとに必要な書類は以下の通りです。

書類名カテゴリー1カテゴリー2カテゴリー3カテゴリー4
登記事項証明書不要不要必要必要
事業内容を明らかにする資料(パンフレット等)場合により場合により必要必要
直近年度の決算報告書(損益計算書・貸借対照表)の写し不要不要必要必要(新設法人は事業計画書)
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)四季報の写し等で代用可必要必要不要

上記のほか、すべてのカテゴリーで以下の書類が共通して必要となります。

4.2.1 雇用契約書の写し

労働基準法に定められた労働条件が明示された「雇用契約書」または「労働条件通知書」の写しが必要です。職務内容、雇用期間、勤務地、報酬額などが具体的に記載されている必要があります。

4.2.2 採用理由書

なぜその外国人を採用する必要があるのか、その人物が持つ専門性や技術を会社のどの業務で、どのように活かすのかを具体的に説明する非常に重要な書類です。通訳業務の場合、どの言語をどのような場面(商談、会議、資料翻訳など)で活用するのか、その専門性が会社の事業にどう貢献するのかを論理的に記述する必要があります。

5. 技術・人文知識・国際業務ビザの申請手続きの流れ

通訳として技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための手続きは、大きく4つのステップに分かれます。ここでは、海外にいる外国人を日本に呼び寄せる場合の「在留資格認定証明書交付申請」を例に、具体的な流れを解説します。

5.1 ステップ1 書類の準備

ビザ申請の第一歩は、必要書類を漏れなく準備することです。前の章で解説したように、申請者本人が用意する書類と、雇用企業が用意する書類があります。特に、通訳業務の専門性や必要性を具体的に記述する「採用理由書」は、審査の重要な判断材料となるため、内容を十分に練り上げる必要があります。すべての書類が揃ったら、内容に不備や矛盾がないかを入念に確認しましょう。

5.2 ステップ2 出入国在留管理庁への申請

書類の準備が完了したら、出入国在留管理庁(入管)へ申請します。申請は、原則として雇用企業の職員などが代理で行います。申請先は以下の通りです。

申請先管轄
地方出入国在留管理官署申請人の居住予定地、または雇用企業の所在地を管轄する官署

また、一定の条件を満たす企業や行政書士は、出入国在留管理庁の在留申請オンラインシステムを利用して、インターネット経由での申請も可能です。オンライン申請は、窓口へ出向く必要がなく、24時間申請できるメリットがあります。

5.3 ステップ3 審査期間

申請が受理されると、出入国在留管理庁による審査が開始されます。標準的な審査期間は1ヶ月から3ヶ月程度ですが、申請内容や時期、個別の状況によって変動します。審査の過程で、追加資料の提出を求められたり、事実確認の連絡が入ったりすることもあります。審査をスムーズに進めるためにも、入管からの問い合わせには迅速かつ誠実に対応できる体制を整えておきましょう。

5.4 ステップ4 結果の通知と在留カードの受領

審査が完了すると、結果が通知されます。許可の場合は「在留資格認定証明書」が交付され、雇用企業に郵送されます。企業は、この証明書を海外にいる申請者本人に送付します。申請者は、証明書を受け取った後、現地の日本大使館または総領事館で査証(ビザ)を申請し、発給後に来日します。来日した空港で、上陸審査を経て「在留カード」が交付され、日本での就労が可能になります。万が一不許可となった場合は、その理由を確認し、問題点を改善した上で再申請を検討することになります。

6. 通訳のビザ申請で不許可になるケースと対策

技術・人文知識・国際業務ビザの申請は、要件を満たしていても必ず許可されるとは限りません。特に通訳業務は、その専門性や業務内容の立証が難しく、不許可となるケースも散見されます。ここでは、よくある不許可のパターンとその具体的な対策について解説します。事前にリスクを把握し、万全の準備で申請に臨みましょう。

6.1 業務量・専門性が不十分と判断されたケース

通訳としてのビザ申請で最も注意すべき点の一つが、従事する業務内容です。単に通訳業務が含まれているだけでは不十分で、その業務量と専門性の両方が審査されます。

不許可となる主な理由具体的な対策
通訳業務の全体に占める割合が低い(例:主な業務は事務補助で、通訳は付随的)。雇用契約書や職務内容説明書に、通訳業務が主たる業務であることを明記し、想定される業務量(週〇時間、全体の〇%など)を具体的に記載します。
通訳内容が「専門的」とは言えない(例:社内の簡単な意思疎通の補助、日常会話レベルの翻訳)。どのような場面(専門的な会議、海外企業との商談、技術指導など)で、どの分野(IT、医療、金融など)の通訳を行うのかを詳細に説明します。会社の事業内容と関連付け、高度な語学力と専門知識が必要不可欠であることを採用理由書で論理的に立証します。

6.2 学歴や実務経験の証明ができなかったケース

申請者の学歴や実務経験が、これから行う通訳業務と関連していることを客観的な資料で証明する必要があります。この証明が不十分な場合、不許可の原因となります。

不許可となる主な理由具体的な対策
卒業した大学の専攻と通訳業務との関連性が不明確。言語学や国際関係学などの直接関連する専攻でない場合でも、履修科目や卒業論文のテーマなどを挙げ、通訳業務に必要な素養を大学で身につけたことを具体的に説明します。
実務経験を証明する在職証明書の内容が不足している(例:単に「社員」としか書かれていない)。前職の企業に依頼し、所属期間、役職、担当した業務内容(特に通訳・翻訳に関連する業務)を詳細に記載した在職証明書を発行してもらいます。当時の具体的な業務内容がわかる資料(担当したプロジェクトの概要など)があれば、補足資料として提出すると説得力が増します

6.3 報酬が日本人社員より低いケース

技術・人文知識・国際業務ビザの要件には、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と定められています。この要件を満たさない場合、不許可となります。

不許可となる主な理由具体的な対策
同じ職務内容の日本人社員と比較して給与が低い。雇用契約書や賃金規程で、国籍を理由とした給与差がないことを明確に示します。同等の業務を行う日本人社員の給与明細の写しなどを提出し、同水準であることを証明します。
比較対象となる日本人社員がいない場合でも、業界水準や地域水準より著しく低い。ハローワークの求人情報や民間の賃金統計データなど、客観的な資料を基に、提示している給与額が同業・同職種の日本人と同等以上であることを説明します。

6.4 雇用企業の経営状態に問題があったケース

申請人本人に問題がなくても、雇用する企業の経営安定性や事業の継続性に疑義があると判断されると、ビザは許可されません。申請人を雇用し、継続的に給与を支払っていけるだけの体力があるかどうかが厳しく審査されます。

不許可となる主な理由具体的な対策
決算が大幅な赤字であったり、債務超過の状態にある。赤字の理由(例:先行投資など)と、今後の黒字化に向けた具体的な改善策を盛り込んだ事業計画書を提出します。今後の売上見込みや資金繰り計画を詳細に示し、事業の継続性と給与支払能力があることを立証します。
設立間もない会社で、事業の実態が不明確。詳細な事業計画書、オフィスの賃貸借契約書、取引先との契約書や発注書などを提出し、事業が実態を伴って運営されていることを証明します。なぜ外国籍の通訳者が必要なのか、その人材が事業の成長にどう貢献するのかを具体的に説明することが重要です。

7. 通訳として技術・人文知識・国際業務ビザを取得後に関するQ&A

無事にビザが許可された後も、転職や在留期間の更新など、さまざまな手続きが必要になります。ここでは、ビザ取得後によくある質問とその回答をまとめました。

7.1 転職する場合の手続きは

転職して会社が変わる場合は、新たな勤務先で従事する業務が引き続き技術・人文知識・国際業務ビザの活動範囲内であることを証明するため、「就労資格証明書」の交付申請を行うことが推奨されます。この証明書を取得しておくことで、次回の在留期間更新手続きをスムーズに進めることができます。必須ではありませんが、転職後のビザ更新で不許可になるリスクを避けるために、取得しておくのが賢明です。また、転職後14日以内に、出入国在留管理庁へ「契約機関に関する届出」を提出する義務があります。

7.2 在留期間の更新はどのように行うのか

在留期間の更新は、在留期限のおおむね3ヶ月前から、お住まいの地域を管轄する出入国在留管理庁で手続きを行います。更新申請では、現在の勤務先での活動内容や納税状況、企業の経営状態などが改めて審査されます。これまでの在留状況に問題がなく、引き続き同じ会社で同じ業務に従事していれば、通常は更新が許可されます。転職した場合や、業務内容に大きな変更があった場合は、その変更点について合理的な説明が求められます。

8. 通訳として技術・人文知識・国際業務ビザを取得後に関するQ&A

無事に技術・人文知識・国際業務ビザを取得した後も、キャリアや生活の変化に応じて様々な手続きが必要になります。ここでは、通訳として働く方からよく寄せられるビザ取得後の疑問について、Q&A形式で分かりやすく解説します。

8.1 転職する場合の手続きは?

技術・人文知識・国際業務ビザを保有したまま、通訳として別の会社に転職することは可能です。ただし、その際には必ず出入国在留管理庁(以下、入管)への届出が必要となります。

具体的には、前の会社を退職してから14日以内、かつ、新しい会社に入社してから14日以内に「所属機関に関する届出」をオンラインまたは窓口で提出する義務があります。この届出を怠ると、次回のビザ更新が不許可になったり、最悪の場合、在留資格が取り消されたりする可能性があるので注意が必要です。

届出の詳細については、出入国在留管理庁の公式サイトで確認してください。

また、必須ではありませんが、転職後に「就労資格証明書」を取得しておくことを強く推奨します。これは、新しい職場での業務内容が、現在保有しているビザの活動範囲内であることを入管に証明してもらうための書類です。事前にこの証明書を取得しておくことで、次回の在留期間更新手続きをスムーズに進めることができます。

8.2 在留期間の更新はどのように行うのか?

在留期間を延長して日本で引き続き通訳として働くためには、「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。この申請は、在留期間が満了する日の約3ヶ月前から行うことができます。審査には時間がかかる場合があるため、余裕をもって準備を始めましょう。

更新の審査では、主に以下の点がチェックされます。

  • これまでの在留状況(法律違反の有無など)
  • 納税義務(住民税など)をきちんと果たしているか
  • 現在の業務内容がビザの活動範囲(通訳業務)に合致しているか
  • 雇用企業の経営状態に問題がないか

特に、転職している場合は、新しい会社での業務内容や安定性、継続性が改めて審査されることになります。申請に必要な主な書類は以下の通りですが、個々の状況によって追加書類が求められることもあります。

準備する人書類名
申請者本人在留期間更新許可申請書、写真、パスポート、在留カード、住民税の課税証明書及び納税証明書
雇用企業前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるもの)、雇用契約書の写し

最新の情報や詳細な必要書類については、申請前に必ず出入国在留管理庁のウェブサイトで確認するようにしてください。

8.3 フリーランスの通訳として活動できるか?

結論から言うと、原則として「技術・人文知識・国際業務」ビザでフリーランス(個人事業主)の通訳として活動することはできません

このビザは、日本の公私の機関との「契約」に基づいて活動することが前提となっています。ここでいう「契約」とは、特定の企業との安定的・継続的な雇用契約や委任契約などを指します。不特定のクライアントから単発の仕事を受けるフリーランスの形態は、この「安定的・継続的な契約」とは見なされにくいためです。

もし将来的にフリーランスの通訳として独立を目指すのであれば、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった活動に制限のない在留資格へ変更するといった方法を検討する必要があります。現在のビザのままフリーランス活動を行うと不法就労とみなされるリスクがあるため、絶対に行わないでください。

9. まとめ

本記事では、通訳として日本で就労するために必要な「技術・人文知識・国際業務」ビザについて、その概要から申請要件、必要書類、手続きの流れ、そして注意点までを網羅的に解説しました。外国籍の方がその語学能力を活かして通訳として活躍するためには、この在留資格の取得が不可欠です。

結論として、通訳業務は「技術・人文知識・国際業務」ビザの中でも「国際業務」の区分に該当します。このビザを申請するためには、いくつかの重要な要件をクリアしなければなりません。最も基本的な要件は学歴と実務経験です。原則として「大学を卒業していること」が求められ、この場合、実務経験は問われません。一方で、学歴要件を満たせない場合は、「通訳・翻訳に関する3年以上の実務経験」を客観的な資料で証明する必要があります。専門学校卒業の場合は、取得した「専門士」・「高度専門士」の称号と業務内容の関連性が厳しく審査されるため、特に注意が必要です。

また、学歴や職歴だけでなく、従事する業務内容の専門性も極めて重要な審査ポイントです。単なる日常会話の補助ではなく、企業の取引や会議、専門分野の文書翻訳など、一定水準以上の専門知識や技術を要する業務であることが求められます。これを証明するために、雇用契約書や職務内容説明書で具体的な業務内容を明記することが不可欠です。さらに、報酬が「日本人と同等額以上」であることや、雇用主である企業の経営が安定的かつ継続的であることも、申請者の日本での生活基盤の安定性を示す上で厳しく審査されます。

申請手続きは、申請者本人と雇用企業の双方が協力して書類を準備し、出入国在留管理庁へ提出するという流れで進みます。特に企業側が作成する「採用理由書」は、なぜ他の日本人ではなく、その外国籍人材を採用する必要があるのか、その方の能力が企業の活動にどう貢献するのかを論理的に説明する重要な書類となり、審査の結果を大きく左右します。

残念ながら、業務内容の専門性が不十分と判断されたり、学歴や実務経験の証明ができなかったり、報酬基準を満たしていなかったりする場合には、申請が不許可となるケースも少なくありません。こうした事態を避けるためには、申請前に要件を正確に理解し、不備のない書類を準備することが何よりも大切です。ビザ取得後も、転職する際には「就労資格証明書」の取得や在留資格変更許可申請が必要になる場合があり、在留期間の更新手続きも忘れずに行わなければなりません。原則としてフリーランスの通訳としての活動は認められていない点も、キャリアプランを考える上で念頭に置くべきでしょう。

「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請は、個々の経歴や雇用企業の状況によって必要書類や立証方法が異なる、非常に専門性の高い手続きです。もし申請に少しでも不安がある場合は、独断で進めるのではなく、ビザ申請を専門とする行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。専門家のサポートを受けることが、スムーズで確実なビザ取得への最も有効な手段と言えるでしょう。

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行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

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