
在留資格「技術・人文知識・国際業務」での受け入れや在留申請を検討している企業担当者・実務者のために、本記事は「単純作業はどこまで許されるのか?」という検索意図に、出入国在留管理庁の審査基準と法務省告示の考え方を踏まえて答えます。最初に結論を明示します。技術・人文知識・国際業務で単純作業は原則NGです。学歴または実務経験に裏づけられた専門性を要するホワイトカラー業務であること、日本人と同等以上の報酬であることが前提で、工場ライン補助、レジ・清掃・接客、倉庫内作業、単純なデータ入力など専門性を伴わない反復作業が主要部分を占めると不許可や更新不許可のリスクが高まります。本記事では、OK/NGの判断基準、職務の専門性の示し方、学歴・実務経験との関連性の整理、雇用契約と給与水準の確認ポイントを体系的に解説。IT(システムエンジニア、プログラマー、Web制作)や企画・営業・マーケティング、通訳・翻訳、貿易・EC運用・広報などOK例の具体的職務記述、設計・開発・保守の職務範囲の切り分け、テストや庶務との線引きも示します。反対に、製造・物流・飲食・小売・受付といった現業系や、人事・総務・経理で単純作業が中心となるNG例の留意点も整理。兼務比率の考え方(管理・監督・教育が中心なら可となり得る目安)、内製開発とテスト業務の境界、庶務やデータ入力を避ける運用ルール、派遣・請負・業務委託(SES含む)の留意点と偽装請負リスク、出向や現場常駐時の管理方法も解説します。さらに、在留申請で説得力を高める職務記述書・体制図・週次スケジュール、仕様書・業務フロー・成果物サンプルの提示例、日本語能力(JLPT N2/N1)の扱い、単純作業比率や報酬同等性・学歴不一致による不許可事例、更新時の実態確認、特定技能や技能実習との違い、繁忙期の応援作業や棚卸・休日出勤・ベンチャーの雑務の扱いまでカバー。この記事を読めば、何がOKで何がNGか、どこがグレーか、そして審査で通すために何を準備すべきかが、実務レベルで分かります。
1. まず結論:技術・人文知識・国際業務で単純作業は原則NG
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、大学等で修得する知識や高度な実務経験を要するホワイトカラーの専門業務を対象としており、単純作業に従事することは原則認められません。
審査では、契約先で実際に従事する日常業務が専門性を備えているかが重視されます。補助的な作業が含まれ得る場合でも、主たる職務が専門業務であること、付随業務が限定的であること、職務記述書や業務フローで合理的に説明できることが要件です。単純作業が実態の中核となると、不許可や更新不許可の対象になります。
1.1 根拠 出入国在留管理庁の審査基準と法務省告示の位置付け
入管法の別表第一(専門的・技術的分野)および法務省告示は、当該在留資格の該当活動を「理学・工学等の技術」「人文科学の知識」「外国の文化に基盤をもつ業務」など、専門性を要する業務として定義しています。出入国在留管理庁の審査では、学歴・実務経験と職務の関連性、職務内容の専門性、指揮命令系統と就労場所、雇用契約の同等性などを総合評価し、単純労働に該当しないことを確認します。
したがって、ライン作業・荷役・清掃・接客・レジ等の非専門的な反復作業や、専門性を伴わない庶務を主業務とする配置は、在留資格の趣旨に適合しません。専門業務の達成に不可欠な範囲での補助であっても、従事比率や責任・裁量の程度が審査の焦点となります。
1.2 技術・人文知識・国際業務 単純作業の定義と判断ポイント
ここでの「単純作業」とは、短期間の習熟で代替可能な反復的・肉体的・定型的業務、または大学相当の知識や高度な実務経験を要しない事務補助を指します。反対に、要件定義・設計・分析・企画・交渉・翻訳通訳など、専門知識に基づく判断と責任を伴う業務は該当し得ます。
| 判断軸 | OKとなる傾向(適合) | NGとなる傾向(単純作業) |
|---|---|---|
| 業務の中核 | 要件定義・設計・分析・企画・交渉・多言語対応などの専門業務 | ライン補助・梱包・品出し・清掃・受付・レジ・単純な入力作業 |
| 従事比率 | 主たる時間が専門業務に充当され、補助は付随的 | 補助・現場作業が日常業務の主要部分を占める |
| 裁量と責任 | 要否判断・品質責任・成果物レビュー・改善提案等を担当 | 指示待ちで単純な処理のみ、成果物責任が限定的 |
| 知識・技能 | 学士相当の知識や相応の実務経験が不可欠 | 短期習得で代替可能、特段の学術的知識を要しない |
| 説明資料 | 職務記述書・体制図・業務フロー・成果物例で専門性を具体化 | 職務が抽象的で、補助内容の切り分けや比重が不明確 |
審査では「何を、どの程度の時間配分で、どの責任で」行うかを客観資料で説明できるかが決定的です。職務記述書、週次スケジュール、権限規程、成果物サンプルを用意し、単純作業を日常業務から排し、付随業務の範囲を明確化しておくことが不可欠です。
2. 技術・人文知識・国際業務の適合要件
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、学歴/実務経験の裏付け、職務内容の専門性(非単純作業)、そして雇用契約と報酬の適正(日本人と同等以上)の3点がそろっていることが許可の前提になります。
2.1 学歴または実務経験の要件 学士相当と必要年数
「技術」「人文知識」では、大学等で修得した専門分野と職務の関連性が重視され、学歴がない場合は長期の実務経験で代替します。「国際業務」では、外国文化に基づく思考・感受性や語学等の専門性を、主に実務経験で立証します。
| 区分 | 学歴要件 | 実務経験年数 | 備考(関連性・例外) |
|---|---|---|---|
| 技術・人文知識 | 大学(短期大学含む)卒業または同等以上(外国大学、日本の専修学校専門課程のうち文部科学大臣告示に該当する「専門士」「高度専門士」等を含む)で、専攻と職務が密接に関連 | 原則10年以上(当該分野の教育期間を通算可) | 学歴か経験のいずれかで要件充足。学歴がある場合も、職務との「密接関連性」が不可欠 |
| 国際業務 | 学歴の明文要件はないが、語学・地域研究・デザイン等の専門性を学位や職務実績で合理的に立証 | 原則3年以上 | 通訳・翻訳・語学指導は学歴等により3年要件の適用除外が認められる取扱いがある |
いずれの区分でも「専攻・経験」と「実際の職務」の関連性が弱い場合は不許可リスクが高まります。職務記述書で、必要知識・使用技術・担当工程・成果物を具体化し、関連性を明確に示してください。
2.2 職務内容の専門性とホワイトカラーの範囲
対象となる活動は、自然科学・人文科学の専門知識や、外国文化に基づく思考・感受性を要する「ホワイトカラー業務」です。設計・開発・調査・分析・企画・コンサルティング・通訳翻訳・海外取引・PR/ブランディング等の中核業務が想定されます。一方、反復的・機械的な単純作業(ライン作業、棚出し、清掃、レジ打ち、単純なデータ入力など)は対象外です。
| 判断軸 | 該当する傾向(許可されやすい) | 該当しない傾向(不許可リスク) |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 専門的知識に基づく分析・設計・企画・交渉・表現 | 短期習得可能なマニュアル作業や肉体労働中心 |
| アウトプット | 仕様書、設計書、調査報告、戦略提案、翻訳成果物 | 検品・梱包・陳列・受付・単純入力などの作業結果 |
| 比重 | 専門業務が大半(庶務は補助的かつ少量) | 非専門業務の比率が高い、又は兼務割合の説明不足 |
専門業務の比重が明確であることが最重要です。職務記述書には担当工程の割合、関与フェーズ、指揮命令系統、評価指標を定量的に記載し、単純作業の排除・限定を示しましょう。
2.3 雇用契約と給与水準 日本人と同等性の確認
雇用契約書・労働条件通知書・職務記述書で、職務範囲・就業場所・指揮命令系統・賃金・労働時間・社会保険を明確化します。報酬は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」であることが法令上の要件です。最低賃金法を下回らないことは当然として、基本給・手当・賞与・昇給・所定外割増の取り扱いを日本人と同水準で整合させ、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入も確実にします。
| 確認項目 | 留意点 |
|---|---|
| 雇用契約/労働条件通知 | 職務内容・就業場所・期間・試用・指揮命令・副業可否を明文化。派遣・請負の場合は適法な契約形態とし、指揮命令系統を明確化 |
| 報酬の同等性 | 基本給・手当・賞与・昇給基準を日本人と同等以上に設定し、根拠(社内賃金テーブル、職務グレード)を用意 |
| 労働時間・休暇 | 所定労働時間、残業の有無・割増率、休日・年休付与を就業規則と合致させる |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の適用事業所で加入。適用除外のない限り未加入は不可 |
| 立証資料 | 雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、賃金テーブル、職務記述書、組織図、賃金比較資料 |
これらの整備により、専門性・関連性・同等性の三要件を一貫したドキュメントで裏付けることができます。
3. OK例 専門性が認められる職務実例
専門的な知識・経験に基づく「設計・分析・企画・交渉・管理」を中心とするホワイトカラー業務であり、反復的な単純作業が主ではないことを明確にできれば、技術・人文知識・国際業務の適合性は高まります。
3.1 IT分野 システムエンジニア プログラマー Web制作
情報工学・数学・統計・デザイン理論等に基づく要件定義、アーキテクチャ設計、プログラミング、テスト設計、自動化、運用設計など、判断や専門技能を要する工程が中心であることを示します。
| 職種 | 主要業務(OK) | 単純作業との違い | 成果物の例 |
|---|---|---|---|
| アプリケーションエンジニア | 要件定義、基本/詳細設計、API設計、実装、コードレビュー、CI/CD設計、性能最適化 | 設計・判断・品質保証を伴い、単なる入力や監視に終始しない | 要件定義書、設計書、ソースコード、テスト仕様書、アーキテクチャ図 |
| インフラ/クラウドエンジニア | ネットワーク/セキュリティ設計、AWS/Azure/GCP構成設計、IaC、運用設計 | 構成・冗長化・コスト最適化の設計判断が中心で、単純な監視オペレーションではない | 構成図、Terraform等のコード、運用設計書、セキュリティレビュー |
| フロントエンド/バックエンド | UI/UX要件整理、SPA設計、API設計、パフォーマンスチューニング、アクセシビリティ対応 | 設計と最適化に基づく実装で、定型のマークアップ作業だけに限定されない | コンポーネント設計、デザインシステム、API仕様、計測設計書 |
| QA/テストエンジニア | テスト計画、テスト設計、E2E自動化、品質プロセス設計、リスク分析 | 検証方針・カバレッジ設計が中心で、手順通りの繰り返し検査のみではない | テスト計画書、テスト設計書、自動テストコード、品質レポート |
| PM/ITコンサルタント | 要件整理、WBS/スコープ管理、ベンダーコントロール、リスク/品質/コスト管理 | 統括・交渉・意思決定を伴い、進捗入力などの事務作業中心ではない | プロジェクト計画書、RACI、提案書、評価レポート |
「業務の中心が設計・開発・最適化・評価」であること、そして「軽作業・単純オペレーションは補助的」であることを職務記述書で定量的に示すことが実務上の鍵です。
3.1.1 設計 開発 保守の職務記述書の作り方
職務の目的、業務範囲、裁量・判断領域、使用技術(例:Python、TypeScript、AWS、Docker、Figma)、責任範囲、成果物、関連部署との連携、除外業務を明記します。併せて、業務比率を示し、単純作業が主でないことを可視化します。
| 業務区分 | 主な内容 | 想定比率 | 禁止・除外 |
|---|---|---|---|
| 設計/開発 | 要件定義、アーキ設計、実装、コードレビュー | 60〜70% | 定型データ入力のみの作業 |
| 品質/運用設計 | テスト設計、自動化、SLO設計、運用手順設計 | 20〜30% | 監視画面の目視チェックだけ |
| コミュニケーション | 顧客/社内レビュー、技術検討、ベンダー調整 | 10〜20% | 受付・庶務・清掃等の付随作業 |
成果物(設計書・仕様書・コード・試験設計・運用設計)を具体名で列挙し、提出可能なサンプルやテンプレートを用意しておくと適合性の説明が円滑です。
3.2 企画 営業 マーケティング 国際業務の実例
人文科学や社会科学の知見、統計・経営・言語の専門性を用い、調査・分析・戦略立案・提案・交渉・運用設計を行う職務が該当します。
| 職種 | 専門業務(OK) | 判断/裁量 | 成果物の例 |
|---|---|---|---|
| 事業/商品企画 | 市場調査、ポジショニング、KPI設計、価格戦略、ロードマップ策定 | 需要予測や採算性に基づく意思決定 | 企画書、収益シミュレーション、ロードマップ、KPIダッシュボード |
| プロダクトマネージャー | 要件定義、バックログ優先度付け、UX要件、リリース計画 | スコープ・優先度・品質のトレードオフ判断 | PRD、ユーザーストーリー、リリースノート |
| ソリューション営業 | 課題ヒアリング、提案書作成、見積/契約条件交渉、納入計画 | 提案設計と価格・条件の交渉権限 | 提案書、試算書、契約ドラフト、導入計画書 |
| デジタルマーケター | SEO/SEM戦略、GA4分析、CRM/MA(Salesforce/HubSpot等)設計、広告運用方針 | ターゲティング・予算配分・クリエイティブ方針の決定 | キーワードプラン、運用レポート、改善計画、アトリビューション分析 |
単純なテレアポ・配布・入力ではなく、調査・設計・提案・運用最適化に自らの専門判断が介在することを示すのがポイントです。
3.3 通訳 翻訳 貿易 EC運用 広報の実務
言語運用能力や国際取引の実務知識(インコタームズ、決済、通関、規制対応等)を活かし、専門的な調整・交渉・文書作成・運用設計を行う業務が対象です。
| 職種 | 専門業務(OK) | NGにしないポイント | 成果物の例 |
|---|---|---|---|
| 通訳/翻訳 | 会議通訳、技術文書翻訳、ローカライズ戦略、用語管理 | 案内・受付中心ではなく、専門領域の内容理解と訳出方針の設計 | 用語集、翻訳メモリ、会議議事要旨、多言語スタイルガイド |
| 貿易実務 | インコタームズ条件設計、L/C読解、船積/通関手配指示、リスク/コスト管理 | 倉庫作業・梱包・ライン補助を行わず、書類・条件・交渉を担う | 契約書、インボイス、パッキングリスト、B/L手配指示、納期計画 |
| 越境EC運用 | 商品戦略、価格/在庫方針、広告運用設計(Google広告/Meta広告等)、CS方針 | 出荷・梱包は外部/他部署、担当は運用設計・分析・最適化 | 販売計画、運用レポート、商品ページガイドライン、KPI設計 |
| 広報/PR | メディア戦略、プレスリリース作成、記者対応、危機管理コミュニケーション | 配布・ポスティング作業ではなく、企画・原稿・交渉を担当 | PR計画、メディアリスト、リリース原稿、露出レポート |
言語・貿易・広報の各業務は、実務知識に基づく「設計と調整」が主であること、現場の軽作業は担当外であることを文書で明確化しましょう。
4. NG例 単純作業に該当する業務実例
技術・人文知識・国際業務では、専門的な知識に基づくホワイトカラー業務が求められます。反復的・定型的・身体的労働や現業中心の職務は「単純作業」と判断されやすく、在留資格の趣旨に合致しません。以下は不許可・不更新の原因となりやすい代表例です。
4.1 工場 製造 倉庫内作業 物流のライン補助
製造現場や物流センターでのライン作業やピッキング等は、専門性よりも体力・反復作業が中心となるため原則NGです。職名が「エンジニア」「技術担当」であっても、実態がライン補助であれば不適合と見なされます。
| 領域 | NGとなる業務例 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|
| 製造ライン | 組立・検品・梱包・仕分けなどのライン作業、目視検査の反復 | 反復的で手作業中心。学術的知識や高度な専門性の発揮が乏しい。 |
| 倉庫・物流 | ピッキング、パレット積み下ろし、荷札貼付、出荷補助、フォークリフト運転 | 物理的労働が中心で、知識労働ではない。 |
| 現場補助 | 製造装置の清掃・段取り替え補助、現場での雑務対応 | 補助的・非専門的業務の比率が高いと単純作業に該当。 |
例外となり得るのは、工程設計・品質管理の手法設計・統計的解析・生産管理システムの要件定義など、専門知識に基づく計画・分析・改善が主たる業務であり、補助作業が付随的にとどまる場合です。この実態は職務記述書や成果物で客観的に示す必要があります。
4.2 飲食 小売 レジ 受付 清掃 接客 データ入力
店舗運営やフロント業務の多くは現業・サービングに分類され、専門性よりも対人対応や作業手順の遵守が中心となるためNGになりやすい分野です。
| 領域 | NGとなる業務例 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|
| 飲食 | ホール配膳、レジ打ち、キッチン補助、洗い場、仕込み | サービス提供や調理補助など体力・反復中心で専門的企画・分析に当たらない。 |
| 小売 | レジ、品出し、棚卸、検品、バックヤード作業 | 店舗オペレーションの現業。知識労働の比重が低い。 |
| 受付・清掃 | 来客受付・案内、館内誘導、館内清掃、客室清掃 | 手順化された定型業務で専門性が認めにくい。 |
| コールセンター・BPO | 受電オペレーターのスクリプト対応、定型FAQの読み上げ | 裁量や分析が乏しい単純応答はNG。高度な分析設計・品質改善が主務であれば別途検討。 |
| データ入力 | 伝票・申込書の単純入力、スキャン・画像登録のみ | 反復入力で専門的判断を要しない。 |
「店舗運営の企画・データ分析・MD戦略立案・デジタルマーケティング」が主務で、売場応援が例外的かつ限定的であることを資料で示せない場合、単純作業と判断されるリスクが高いと考えてください。
4.3 人事 総務 経理の単純作業中心のケース
バックオフィスであっても、補助的・定型処理が主となる場合は単純作業に該当し得ます。専門的な規程設計や制度運用、分析・改善が主務であることが重要です。
| 領域 | NGとなる業務例 | 理由・判断ポイント |
|---|---|---|
| 人事・労務 | 書類ファイリング、入退社手続きの入力、勤怠データの集計のみ | 制度設計や労務戦略ではなく、事務処理の反復にとどまる。 |
| 総務 | 備品管理、郵便仕分け、来客応対、社内庶務、押印・封入発送 | 補助業務中心で専門的判断が不要。 |
| 経理 | 伝票起票の入力のみ、領収書突合の単純チェック、請求書封入 | 会計基準に基づく判断・決算・税務対応が主務でない。 |
規程や制度の設計、内部統制の構築、会計・税務の専門判断、データ分析に基づく改善提案等が主たる職務であり、定型事務は補助的であることを職務記述書・体制図・成果物で説明できないと、単純作業中心と評価されます。
5. グレーゾーンと職務の切り分け
技術・人文知識・国際業務では、就労の「主たる活動」が専門的・技術的・企画的なホワイトカラーであることが前提で、現場作業や単純労働はあくまで付随的・一時的である範囲に限定されます。実態としての職務内容・時間比率・成果物で説明できるよう、兼務の線引きと運用ルールを明確化してください(判断は出入国在留管理庁の審査で、職務記述書と実態が一致しているかが重視されます)。
5.1 現場との兼務比率 管理 監督 教育が中心なら可の目安
現場常駐や現場同行がある場合でも、工程設計・品質管理・進捗統括・OJT等の「管理・監督・教育」が中心で、日常的な穴埋め人手としての作業従事が主体とならない構成が必要です。現場で体を動かす時間があっても、判断・計画・指示・評価といった知的活動が主であることを、日次・週次スケジュールや成果物で立証できる体制を整えましょう。
| ケース | 可否 | 判断理由 | 必要な証拠・運用 |
|---|---|---|---|
| 現場に入り、工程管理・安全管理・作業指示・要員教育を行う | 可 | 管理・監督・教育が主で専門性を要する | 体制図、権限分掌、指示書・教育資料、週次アサイン表 |
| 人手不足時にラインで作業を肩代わりする | 不可 | 単純作業の実作業が主となる | 運用で禁止、代替は派遣・外注等を活用 |
| 棚卸に参加する | 条件付き | プロセス設計・統計的サンプリング指導が主なら可 | 棚卸手順書の策定、検査計画、監査チェックリスト |
| 受付・レジ・来客対応の応援 | 不可 | 専門性を伴わない接客・単純労働 | 職務記述書で除外、代替要員を事前手配 |
| 作業手順書の標準化とOJTの実施 | 可 | 知的成果物と人材育成が主 | SOP、教育計画、評価シート、改善報告 |
可否は「誰が」「何を」「どの程度の時間」行うかで変わります。専門的業務が主、単純作業は例外的・短時間・教育目的の範囲にとどめ、日報や勤怠で可視化・管理してください。
5.2 内製開発とテスト業務の線引き
IT・製造の品質領域はグレーになりやすいため、企画・設計・分析・自動化といった創造・判断を伴う工程を主とし、反復的な実行作業のみの従事は避けます。テスト「設計・計画・分析・自動化」が主体なら専門業務、手順に従う実行のみは単純作業に近づくと理解してください。
| 業務 | 可否 | 専門性のポイント | 提出資料例 |
|---|---|---|---|
| テスト計画立案・テスト設計・自動化スクリプト実装 | 可 | 設計技法の適用、コード化、品質指標設定 | テスト計画書、設計仕様、CI設定、コードリポジトリ |
| 手順書に従う手動テストの実行のみ | 不可に近い | 判断を伴わない反復作業 | (設計関与がない場合は説明困難) |
| 不具合原因分析・品質改善施策の立案 | 可 | ログ解析、統計的分析、再発防止策の策定 | 分析レポート、KPI、改善提案書 |
| 端末セットアップ・出荷検査の数量処理 | 不可 | 物理的・反復的作業が主 | (業務委託・BPOで処理を検討) |
開発補助やテスターの肩書でも、役割が設計・自動化・品質保証の統括に寄っていれば説明可能です。職務記述書には、要件定義・レビュー・指標策定などの知的業務を明示し、実行作業の比重を低く保ちましょう。
5.3 庶務やデータ入力を避ける運用ルール
庶務・受付・清掃・単純なデータ入力は職務から明確に排除します。どうしても発生する場合は、期間・目的・代替策を明記し、恒常化を防ぎます。単純作業の恒常的な割当を禁止し、発生時は事前承認とログ化で例外管理することが肝要です。
- 職務記述書と就業規則に「禁止業務(庶務・受付・清掃・単純入力等)」を明記
- 応援作業は「事前申請→上長承認→目的・時間の記録→翌週レビュー」の例外フロー
- タスク管理・勤怠に業務カテゴリ(設計/分析/教育/管理/例外作業)を付与し可視化
- 庶務・単純入力はBPO/派遣/パートへ切出し、職務分離を徹底
- 月次で実態監査(稼働内訳、成果物サンプル、教育記録)を実施し是正
これらの運用により、在留期間更新時にも実態と書類の整合性を説明しやすくなります。職務の専門性・ホワイトカラー性がゆらぐ配属や応援依頼は、事前に人事・法務で差し止めてください。
6. 受入機関が注意すべき契約形態
受入機関は、派遣・請負・業務委託(準委任/いわゆるSES)・出向の違いを正しく理解し、指揮命令系統・成果責任・検収方法を契約書と運用で一致させる必要があります。とくに、請負や準委任で受入側が日常的に直接指示すると「偽装請負」とみなされるおそれがあり、労働関係法令だけでなく在留資格審査上も不利に働きます(厚生労働省「労働者派遣事業」、e-Gov法令検索「労働者派遣法」)。
| 契約形態 | 指揮命令権 | 成果責任・検収 | 就労場所・設備 | 在留資格上の要点 | 主なリスク |
|---|---|---|---|---|---|
| 派遣 | 受入先(派遣先)が業務上の指揮命令を行う | 時間給・月給ベース、検収は労務提供の実績 | 派遣先の事業所に常駐可 | 所属機関は派遣元。職務は専門業務に限定し、労働者派遣法の範囲内で運用 | 期間制限・均等均衡、派遣先管理の不備 |
| 請負(成果請負) | 請負事業者が自社の労働者を指揮命令 | 完成責任。成果物の検収で対価支払い | 自社または客先構内。客先常駐でも受入先の直接指示は不可 | 所属機関は請負側。職務・体制・検収を明確化して単純作業化を防止 | 偽装請負(受入先の直接指示・勤怠管理・混在作業) |
| 業務委託(準委任/SES) | 委託先の管理者が指示。受入先は成果・進捗の要望のみ | 成果物ではなく「役務の提供」に対価。受入側の検収は範囲合意の確認 | 客先常駐はあり得るが、日々の業務指示・勤怠管理は不可 | 所属機関は委託先。専門性・役務範囲・体制を文書化し現場で徹底 | 実態が派遣同等となる偽装請負 |
| 出向 | 契約に基づき出向先が業務指揮(人事権・賃金負担の帰属を明示) | 雇用は継続(在籍出向)等、合意内容で変動 | 出向先で勤務 | 所属機関・就労場所・職務を一貫して説明可能に | 契約の曖昧さによる労務管理・安全配慮の空白 |
6.1 派遣 請負 業務委託の留意点 偽装請負のリスク
請負・準委任(SES)で受入先が日常的に業務指示・勤怠管理・評価を直接行うと、実態が派遣と判断され「偽装請負」のリスクが高まります。この場合、労働者派遣法に反し、行政指導・是正や契約差止、損害賠償の問題に発展し得ます(参考:労働者派遣法)。
回避のためには、委託側(受託会社)の現場責任者を明確化し、作業指示は受託会社の管理者経由で行い、受入先は成果・仕様・優先順位の調整に限定します。成果請負では、成果物定義・品質基準・検収手順・瑕疵担保を契約で具体化し、準委任では役務範囲・成果物の有無・変更管理・稼働報告の承認者を明記します。
運用面では、入退場・座席・アカウント・ツールの付与は安全衛生・情報セキュリティの範囲にとどめ、勤怠管理や評価は受託会社が行います。混在作業(受入先社員と同一ラインでのライン作業、レジ・受付等の単純作業補助)を避け、専門業務の比重と職務範囲を常時維持します。実態が派遣同等とみられると、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の専門性要件の説明が困難になります。
派遣を選ぶ場合は、派遣元を所属機関とし、職務の専門性・均等均衡待遇・期間制限などを遵守し、派遣先管理台帳や個別契約で職務内容・指揮命令系統を明確にします(厚生労働省「労働者派遣事業」)。
6.2 出向や現場常駐の管理方法とSESの注意
出向では、出向契約に「目的・期間・就業場所・職務・指揮命令権の帰属・賃金負担・費用精算・秘密情報・安全衛生」を明記し、個別の出向辞令で本人同意と条件を特定します。人事権や賃金負担の所在を曖昧にしたまま現場で指揮命令を開始すると、労務管理上の責任分界が不明確になります。
現場常駐の準委任(SES)や請負では、受託側のプロジェクト管理体制(責任者・レビュー・変更管理)を前提に、受入先は要件定義・優先順位調整・検収のみを担います。作業チケットや課題管理ツールの権限設計は「依頼=業務要求」「指揮命令=受託側管理者からの作業指示」を分離し、日々の開始・終了時刻、休憩、評価は受託側が管理します。「常駐=受入先が直接指揮命令してよい」わけではなく、契約に適合した運用を継続することが不可欠です。
入管手続では、所属機関・就労場所・職務内容・指揮命令系統の説明整合性が確認されます。常駐や複数現場を予定する場合は、契約書・業務範囲・体制図に基づく説明ができるよう、変更や応援作業の記録・承認プロセスを整備しておくと安全です。
7. 在留申請の書類と職務記述書の作り方
審査は書面主義のため、専門性とホワイトカラー業務であること、単純作業を含まない運用を客観資料で一貫して示すことが最重要です。
| 申請区分 | 必須様式 | 企業側資料 | 本人側資料 | 専門性を示す補強 |
|---|---|---|---|---|
| 在留資格認定証明書(新規) | 在留資格認定証明書交付申請書 | 雇用契約書(または労働条件通知書)、会社案内、履歴事項全部証明書、直近決算書(新設は事業計画) | 履歴書、卒業証明書・成績証明書、職務経歴書、資格証明 | 職務記述書、体制図、業務フロー、成果物見本 |
| 在留資格変更許可 | 在留資格変更許可申請書 | 現行雇用契約、配属先の職務説明、直近決算書 | 履歴書、在職証明、職務経歴書 | 週次スケジュール、プロジェクト計画書、役割定義書 |
| 在留期間更新許可 | 在留期間更新許可申請書 | 継続雇用契約、職務内容報告 | 課税(所得)証明書・納税証明書、給与明細の写し | 直近の成果物、KPI実績、体制図の最新化 |
書類は、職務内容・学歴/実務経験・待遇(日本人と同等)の整合性が崩れないように作成し、社内規程や就業規則とも齟齬が出ないよう整理します。
7.1 職務記述書 体制図 週次スケジュールの示し方
職務記述書は「目的→主要業務→要件→成果物→除外業務」を固定フォーマットで明記し、単純作業の不関与を明示します。
| 項目 | 記載ポイント |
|---|---|
| 職務目的/ミッション | 採用ポジションで解決する業務課題と期待成果を一文で明確化 |
| 主要業務(専門) | 具体タスクを動詞で列挙(例:要件定義、設計、分析、翻訳品質管理、貿易実務の契約レビュー等) |
| 必要知識・ツール | 使用技術/法令/システム(例:Python、GA4、インコタームズ、翻訳支援ツール、CMS等) |
| 成果物・評価指標 | 設計書・レポート・提案書・用語集・貿易書類などの納品物とKPIを対応付け |
| 勤務地・就業形態 | 自社内/顧客先常駐の別、リモート可否、指揮命令系統の所在 |
| 除外業務(禁止) | レジ・清掃・受付・倉庫内作業・ライン補助・単純データ入力等は担当しない旨を明示 |
体制図は、直属上長、指揮命令者、教育担当、レビュー者、委託/受託関係、常駐先の管理方法を役割ラベル付きで図解し、SES等の場合は発注・受注の契約経路と指揮命令系統の所在を注記します。
| 曜日 | 主担当業務(専門) | ミーティング/付随業務 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 月 | 要件定義・仕様調整/翻訳レビュー/市場分析 | 定例会(進捗・品質) | 成果物:要件合意メモ |
| 火 | 設計・コンテンツ企画・貿易書類チェック | 関係部署調整 | 成果物:設計書/原稿案 |
| 水 | 開発・制作・用語集更新 | コード/原稿レビュー | 成果物:レビュー記録 |
| 木 | テスト計画/A/B設計/通関書類確認 | 品質会議 | 成果物:テスト仕様 |
| 金 | レポート作成・改善提案・ナレッジ整備 | 振り返り | 成果物:週報/提案書 |
週次スケジュールは専門業務が業務時間の大半を占める構成で示し、庶務や雑務は付随業務として最小限・臨時対応であることを注記します。
7.2 仕様書 業務フロー 成果物サンプルの提出例
提出物は機密を保護しつつ、思考過程と専門判断が介在していることが分かる粒度で提示します。
| 職種 | 提出例 | 匿名化・秘匿のポイント |
|---|---|---|
| システムエンジニア/プログラマー | 要件定義書、基本設計書、テスト仕様、チケット履歴(Jira等)、リポジトリのコミットログ | 顧客名・個人情報・鍵情報をマスク、リポジトリはスクリーンショットで |
| Web制作/マーケティング | IA設計、ワイヤーフレーム、GA4レポート、改善提案書、KPIダッシュボード | 媒体名・ID・広告費を黒塗り、数値は指数化(例:基準=100) |
| 通訳・翻訳 | 翻訳方針、用語集、品質チェック表、対訳の抜粋(短文) | 原文出所を特定できる情報は除去、守秘区分を明記 |
| 貿易・国際業務 | 業務フロー図、契約ドラフト、インボイス/パッキングリストの雛形、リスク評価表 | 取引先・単価・数量はマスク、雛形ベースで構成 |
業務フローは「入力→判断→出力」を矢印で示し、判断(審査・レビュー・最適化)工程を明確化すると単純作業ではないことが伝わります。成果物サンプルは編集日・作成者・レビュー者を残し、監督体制の実在性も補強します。
7.3 日本語能力と語学要件 JLPT N2 N1の扱い
技術・人文知識・国際業務に法定の日本語資格要件はありませんが、職務上必要な言語能力は客観資料で示すと審査が安定します。
| 職務タイプ | 推奨証憑 | 補足 |
|---|---|---|
| 顧客折衝・会議ファシリテーション | JLPT N1〜N2合格証、ビジネス文書(議事録・提案書) | 会議動画の議事要旨や議事録で実務運用を補完 |
| 社内開発・技術文書中心 | 技術文書の執筆実績、レビューコメント履歴 | 英語併用の場合は社内標準(言語ポリシー)を添付 |
| 通訳・翻訳・国際調整 | 翻訳実績、用語集、品質基準、第三者レビュー記録 | 業務要件に応じてN1相当の根拠を整備 |
求人票・職務記述書・評価基準の言語要件は一致させ、面談記録や試訳/技術課題の評価シートを保存すると説得力が増します。社内研修計画に語学研修を含める場合は実施頻度と到達目標も明記します。
8. 失敗事例と不許可理由
出入国在留管理庁の審査では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の告示基準に照らして、職務内容の専門性、学歴・実務経験の関連性、報酬(日本人と同等以上)などが総合的に確認されます。単純作業が実態の中心である、報酬が低位で同等性を欠く、学歴や経験と職務の関連性が乏しい、という3点は不許可に直結しやすい失敗パターンです。制度の基本は出入国在留管理庁の公表資料を参照し、申請書類と就労実態を一致させることが不可欠です。
| 典型パターン | 主な論点 | 立証・是正のポイント |
|---|---|---|
| 単純作業の混在割合が高い | ホワイトカラーの専門業務ではなく、補助・現場作業が主となっていないか | 職務記述書・体制図・週次スケジュールで兼務比率を明確化し、設計・企画・分析・管理等の専門業務が中心であることを、業務フローや成果物サンプルで提示 |
| 給与が低すぎる(同等性違反) | 日本人と同等以上の報酬か、固定残業の取扱いが適正か | 雇用契約書・賃金規程・就業規則・賃金台帳で総支給額と手当内訳を明示し、年俸・賞与・昇給基準の説明と職種別の相場・社内同職種との同等性根拠を整理 |
| 学歴・実務経験の関連性不足 | 専攻または相当の実務経験が、従事予定業務の内容と結びついているか | 卒業証明書・成績証明書・職務経歴書・担当プロジェクト概要・研修計画で、学修・経験と職務要件の対応関係を具体化 |
8.1 単純作業の混在割合が高いケース
設計・要件定義・分析・企画・運用設計などの専門的業務が申請の中心であるべきところ、実態としては検品・梱包・ピッキング・ライン補助・レジ・受付・清掃・棚卸・単純データ入力といった単純作業が日常業務の多くを占める場合、専門性が否定され不許可(または更新不許可)につながります。職務記述書に専門業務を記載していても、勤怠実績、週次タスク、現場指示書等から補助作業が主と判断されると不利です。
兼務が避けられない場合でも、専門業務と補助業務の切り分け、実施比率、指揮命令系統、成果物のレベルを客観資料で示し、専門業務が中心で例外的に付随業務を担う体制であることを明確化することが重要です。体制図・業務フロー・WBS・テスト計画・要件定義書・設計書・分析レポートなど、ホワイトカラーの成果物で裏づけます。
8.2 給与が低すぎる 同等性違反の指摘
告示基準では「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上」であることが要件です。基本給が社内同職種の日本人より明らかに低い、地域・職種の水準から乖離している、固定残業代の設定が過大・不明確、賞与の有無や昇給の扱いが曖昧、といった場合は同等性に疑義が生じます。また、手取りベースの説明や、各種手当を除いた金額のみの提示も誤解のもとです。
雇用契約書で総支給額・基本給・固定残業の時間数と超過精算・各種手当・賞与・通勤費の扱いを明記し、賃金規程・就業規則・賃金台帳・源泉徴収票や課税証明書等で客観的に裏づけるとともに、職務記述書と等級基準でスキル要件と報酬テーブルの対応を示すと説得力が増します。
8.3 学歴や実務経験の不一致と関連性不足
「大学等での専攻」または「相当の実務経験」により身につけた知識・技術を要する業務であることが前提です。専攻分野と職務の結び付きが弱い、学歴の裏づけが乏しい、実務経験が単純作業中心で専門性が認めにくい、といった場合は不許可となりやすく、在留期間更新でも就労実態との乖離が指摘されます。
卒業証明書・成績証明書で履修内容を示し、職務経歴書で携わった業務の専門性・役割・使用技術・成果を具体化し、担当予定の職務要件と一対一で対応付けることが肝要です。職種名だけが「エンジニア」や「マーケティング」となっていても、実態がテスト単体作業や単純入力中心であれば関連性は認められません。研修で補う場合は、研修計画・シラバス・指導体制・評価方法を提示し、育成後に担う専門業務の内容まで明示します。
9. 在留期間更新と運用監査への備え
在留期間の更新では「初回許可時の約束どおりに、専門性のある活動を継続しているか」を中心に実態が精査されます。 受入機関は、職務の専門性・賃金の同等性・社会保険加入・就業場所や契約形態の適正を、資料で即時に説明できる体制を整えておきましょう。
9.1 更新時の実態確認 みなし更新中の注意点
更新審査では、職務内容の専門性と継続性、学歴・実務経験との関連性、雇用契約と賃金の同等性、就業場所・配属の実態、各種届出とコンプライアンス状況が確認されます。
| 確認事項 | 主な証拠資料(例) | よくある不許可リスク |
|---|---|---|
| 職務の専門性・継続性 | 職務記述書、体制図、週次スケジュール、成果物サンプル、業務フロー | 単純作業の比率が高い、職務が許可時と乖離 |
| 学歴・実務経験との関連 | 履歴書、学位証明、職務経歴書、担当業務の関連説明資料 | 専門性の説明不足、関連性が弱い配置転換 |
| 雇用契約・賃金の同等性 | 雇用契約書、賃金台帳、給与明細、源泉徴収票、人事等級表 | 低賃金・同等性欠如、歩合のみ等の不安定な条件 |
| 就業場所・配属の適正 | 就業場所一覧、案件概要書、請負・委託契約の写し | 偽装請負・実態は派遣、現場常駐で管理不十分 |
| 届出・法令順守 | 所属機関等の届出控(14日以内)、社会保険加入記録、勤怠記録 | 届出漏れ、長時間労働の放置、保険未加入 |
在留期間満了日までに更新申請を行えば、審査中も引き続き同一条件で就労できます(いわゆる「みなし」扱い)。 ただし、活動内容・就業場所・雇用主などの重要事項を変更する場合は、事前の手続や速やかな届出が必要です。
- 更新申請は余裕を持って準備し、受付票・在留カード・パスポートを携行する。
- 雇用主・就業場所・従事業務の主要変更は、変更前に手続の要否を確認し、変更後は14日以内の届出を徹底する。
- 単純作業の一時的な応援は恒常化させず、稼働比率と専門業務の指揮監督体制を記録化する。
- 審査中の追加照会に即応できるよう、職務記述書・成果物・勤怠・賃金資料を最新化しておく。
更新は「書類の整備」だけでなく「日々の運用の一貫性」が勝負です。 内部監査(四半期など)で、実態と書類のズレを早期に是正しましょう。
9.2 在留資格変更の検討 特定技能や技能実習との違い
職務が恒常的に単純作業中心へ転化する、または産業特有の現業比重が高まる場合は、配置の見直しに加え、適合する在留資格への変更検討が必要です。
| 在留資格 | 目的・位置付け | 単純作業の取扱い | 主な要件(概要) | 在留期間の考え方 | 受入機関の追加義務 |
|---|---|---|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | 専門的・技術的・人文系・国際業務のホワイトカラー活動 | 原則不可 | 学士相当や相応の実務経験、雇用契約、日本人と同等の報酬 | 更新に上限なし(要件充足の継続が前提) | 一般的な雇用管理・法令順守 |
| 特定技能(1号) | 人手不足産業の現業に従事 | 産業分野で可 | 技能試験・日本語試験合格、支援計画、原則直接雇用 | 通算最長5年 | 支援計画の実施・報告等の義務 |
| 技能実習 | 技能移転を目的とする人材育成 | 実習計画に沿った現業は可 | 実習計画認定、監理団体等の関与 | 原則段階的に最長5年 | 計画実施・監査対応・報告義務 |
単純作業が避けられない運用に移行したら、無理に技術・人文知識・国際業務の枠内に収めず、業務実態に即した在留資格の見直しを検討してください。 受入機関は、配置転換・契約形態・支援体制を含めて、適法かつ継続可能な運用に再設計することが求められます。
10. よくある質問
10.1 休日出勤や棚卸は可能か
休日出勤そのものは就業規則や雇用契約の範囲内であれば差し支えありませんが、従事する内容が「技術・人文知識・国際業務」の専門性に適合していることが前提です。
一方で棚卸は反復的な仕分け・計数などの単純作業に該当しやすく、原則は不可です。例外的に、在庫管理の企画・手順設計・差異分析・立会い監督・データ検証といった知的業務が中心で、一時的・付随的な関与にとどまる場合は許容され得ます。物理的な運搬・計数・箱詰めなどの実作業を担うことは避けてください。
| 場面 | 可否の目安 | 留意点 |
|---|---|---|
| 休日出勤での設計レビュー・要件定義会議 | 可 | 職務記述書の専門業務に合致。時間外でも職務内容が変質しないこと。 |
| 棚卸でのバーコード読み取り・計数・箱詰め | 不可 | 単純作業に該当。恒常・反復は不許可事由になり得る。 |
| 棚卸差異の原因分析、手順書の作成、現場の監督・検証 | 条件付き可 | 知的・管理的業務が中心で一時的・付随的な範囲に限定。 |
10.2 繁忙期の応援作業はどこまで認められるか
応援であっても「専門性のあるホワイトカラー業務」から逸脱して単純作業を代替することはできません。現場ヒアリングや工程の調整、品質・納期管理、マニュアル整備、教育・監督、技術的な二次対応などは、専門性の発揮が伴う限り許容され得ます。反対に、レジ打ち、ピッキング、配膳、荷下ろし等の反復的作業を担うことは避けてください。期間は限定し、実施理由・内容・時間を業務日報等で客観的に記録しておきましょう。
| 応援内容 | 可否の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 物流現場のピッキング・仕分け | 不可 | 単純労務に該当。代替要員や外部委託で対応。 |
| 工程・品質・納期の管理、ボトルネック分析 | 可 | 管理・分析等の知的業務。成果物や指示記録を保存。 |
| 店舗応援での販売データ分析・VMD計画立案 | 条件付き可 | 現場観察は可だがレジ・品出し等の実作業は不可。 |
| コールセンターの一次受電オペレーション | 不可 | マニュアルどおりの単純対応に留まる場合は不可。技術的な二次対応設計は可。 |
応援が避けられない場合でも、職務記述書に応援の目的・範囲を明記し、主たる職務が専門業務である実態を維持することが重要です。
10.3 ベンチャーの雑務はどこまで可能か
少人数のスタートアップでは役割が流動的になりがちですが、在留資格の適合性を損なう日常的な庶務・雑務の兼務は避ける必要があります。専門業務(設計・分析・企画・翻訳・国際渉外等)を主たる職務として明確にし、単純作業は他職種・外部委託・ツール化で代替する運用が安全です。
| 雑務例 | 可否の目安 | 代替策・運用 |
|---|---|---|
| オフィス清掃・受付・郵便仕分け | 不可 | ビルサービス・清掃委託・アルバイト等で対応。 |
| 備品購入・発注・出張手配 | 原則不可 | 総務担当の配置、BPOやSaaSの導入で代替。 |
| 議事録・要件定義書・仕様書・提案書の作成 | 可 | 専門業務に直結。成果物・版管理を残す。 |
| 多言語資料の翻訳・通訳(会議、商談) | 可 | 「国際業務」に該当。専門領域との関連性を担保。 |
採用前に職務範囲を文書化し、入社時オリエンテーションで「単純作業は担当外」とするルールを共有、日々の実績は週報等で可視化しておくと更新審査にも有効です。
11. チェックリスト
「技術・人文知識・国際業務」はホワイトカラーの専門業務に限られ、単純作業を職務に含めないことが出発点です。以下のチェックで、出入国在留管理庁の審査に耐える職務設計・契約・配属運用かを事前に点検してください。
11.1 採用前 専門性と職務の一致の確認
募集ポジションの専門性、学歴・実務経験との関連性、単純作業の排除、配属体制の明確化を確認します。
| 確認項目 | 基準・観点 | 証拠資料・テンプレート | 判定 |
|---|---|---|---|
| 職務の専門性 | ホワイトカラーの専門業務(設計・企画・分析・翻訳等)で、単純作業を含まない | 職務記述書(JD)/職務範囲の可否リスト | 済/要対応 |
| 学歴・実務経験の要件 | 学士相当の専攻または所定年数の実務経験が職務に関連 | 履歴書/学位証明/職務経歴書 | 済/要対応 |
| 単純作業の切り分け | 棚卸・梱包・清掃・レジ・ライン補助などを日常業務に含めない | 可否判定基準書/運用ルール | 済/要対応 |
| 兼務比率の設定 | 現場支援は管理・監督・教育に限定し、兼務比率の上限を定義 | 体制図/週次スケジュール案 | 済/要対応 |
| 配属部署・上位者 | 専門部署配属で指揮命令経路が明確 | 組織図/権限規程 | 済/要対応 |
| 就労場所・常駐有無 | 本社/自社開発中心。常駐・出向・SES時は適法性と実態管理を担保 | 就労場所一覧/現場受入れ体制メモ | 済/要対応 |
| 日本語能力の要件 | 業務上必要な日本語(例:JLPT N2相当以上等)を職務に即して定義 | 語学要件票/面談記録 | 済/要対応 |
| 情報セキュリティ | 取扱データに応じた権限・秘密保持・持出し禁止が整備 | NDA/アクセス権限表 | 済/要対応 |
11.2 契約前 職務記述書と給与水準の整備
雇用契約・労働条件通知・給与の日本人同等性、派遣・請負・業務委託の適法性、在留申請セットの整合性を整えます。
| 確認項目 | 基準・観点 | 証拠資料・テンプレート | 判定 |
|---|---|---|---|
| 職務記述書(JD) | 成果物・業務範囲・責任・使用技術/言語を具体化し単純作業を除外 | JD雛形/成果物サンプル | 済/要対応 |
| 雇用契約・労働条件通知 | 就業場所・業務内容・労働時間・時間外・試用期間を明示 | 雇用契約書/労働条件通知書 | 済/要対応 |
| 給与水準(同等性) | 日本人と同等以上の報酬。固定残業や賞与の扱いを明確化 | 給与テーブル/賃金規程/オファーレター | 済/要対応 |
| 社会保険・税 | 健康保険・厚生年金・雇用保険加入、源泉徴収の実施 | 適用届控え/給与計算フロー | 済/要対応 |
| 就業規則の適用 | 休日・休暇・テレワーク・副業可否を周知 | 就業規則/服務規程 | 済/要対応 |
| 派遣・請負・業務委託の適法性 | 指揮命令・契約相手・再委託の管理。偽装請負の防止 | 個別契約書/体制図(請負)/現場指揮系統図 | 済/要対応 |
| 常駐・SESの留意点 | 受入先での指揮命令・席配置・アカウント発行の実態を記録 | 常駐管理チェックリスト/作業指示ログ | 済/要対応 |
| 在留申請セットの整合 | JD・体制図・週次スケジュール・業務フロー・仕様書の内容が一致 | 申請書類一式/社内承認記録 | 済/要対応 |
11.3 配属前 管理体制と教育計画の策定
実務開始時のタスク設計、単純作業の排除ルール、教育・評価・記録の運用、在留関連の変更・更新体制を準備します。
| 確認項目 | 基準・観点 | 証拠資料・テンプレート | 判定 |
|---|---|---|---|
| タスク設計 | 設計・開発・分析・企画・通訳翻訳等を中心に編成 | WBS/タスクチケット例 | 済/要対応 |
| 単純作業の運用ルール | データ入力・受付・清掃・ライン補助は不可。繁忙応援は監督・品質管理に限定 | 可否リスト/エスカレーション手順 | 済/要対応 |
| 兼務比率のモニタリング | 週次で比率を可視化し乖離時に是正 | 週次スケジュール/日報・工数記録 | 済/要対応 |
| OJT/Off-JT計画 | 技術教育・業務マニュアル・日本語支援(必要に応じJLPT対策) | 教育計画/研修ログ/評価表 | 済/要対応 |
| 情報管理 | アクセス権限・端末持出し禁止・ログ監査を実装 | ISポリシー/権限台帳 | 済/要対応 |
| 勤怠・時間外管理 | 勤怠システム運用、36協定遵守、深夜・休日労働の届出 | 勤怠設定資料/協定書控え | 済/要対応 |
| 在留カード・手続 | 在留カード確認、住民登録、社会保険加入、各種変更届のフロー整備 | 受入れチェックリスト/変更届テンプレート | 済/要対応 |
| 更新・監査への備え | 成果物・仕様書・レビュー記録・稼働実績を定期保存 | 保管台帳/証跡フォルダ構成 | 済/要対応 |
日々の運用と証跡の整備が、在留期間更新や実態確認での説得力を生み、単純作業NGの原則を実務で担保します。
12. まとめ
結論として、技術・人文知識・国際業務で単純作業は原則NGです。根拠は、出入国在留管理庁の審査実務と法務省告示が対象を「専門的・技術的な業務」に限定している点にあり、主たる職務が理論・知識に基づくホワイトカラー業務であることが要請されます。現場作業や肉体労働、反復的で定型的な単純事務が主となる体制は不適合となる蓋然性が高いといえます。
適合の鍵は、学歴または実務経験の基準充足、職務内容の専門性と関連性、日本人と同等以上の給与水準、そして適正な雇用契約です。職務記述書と体制図、週次スケジュールで「何を・どの程度の割合で行うか」を具体化し、専門業務が主であることを示すことが重要です。
OK例は、ITの設計・開発・保守、要件定義、Web制作のディレクション、企画・営業・マーケティング・国際業務のうち分析・判断・交渉を伴う領域、通訳・翻訳・貿易実務など、専門性を説明できる職務です。NG例は、工場ライン、倉庫仕分け、飲食の接客・レジ、清掃、受付、単純なデータ入力など、専門性が乏しい反復作業です。
グレーゾーンは、現場との兼務比率と職務の切り分けが肝心です。管理・監督・教育・品質保証が主であれば適合し得ますが、従事割合の記録と職務設計が不可欠です。テストや検証は設計レビュー等と一体であれば説明しやすい一方、単独の反復作業中心は避けます。庶務や雑務は内規で範囲・頻度を限定し、例外的・短時間で運用します。
契約形態では、派遣・請負・業務委託は単純作業化と指揮命令の混同が起きやすく、偽装請負の疑いは不許可・更新不利の典型リスクです。SESや客先常駐は、指揮命令系統、成果物、責任分界、受入体制を文書で明確化し、実態が専門業務であることを管理してください。
申請では、職務記述書、体制図、業務フロー、仕様書、成果物サンプル、日本語能力に関する客観資料を整え、実務との齟齬をなくします。給与台帳、就業規則、勤怠記録も整備し、同等性と実態の一貫性を示すことが重要です。
不許可の主因は、単純作業比率の高さ、給与の同等性違反、学歴・経験と職務の関連性不足です。更新時には実態確認があるため、配属変更や業務拡張の際は職務記述書を速やかに改訂し、日報やタスク記録で専門業務の継続を立証できる状態を保ちます。
実務指針として、採用前に専門性の適合を精査し、契約前に職務と給与を文書化、配属前に管理・教育計画を用意します。繁忙期の応援や棚卸は例外・短時間・補助にとどめ、主たる業務の専門性を崩さないことが前提です。ベンチャーでも同様の統制が求められます。
最終的には、技術・人文知識・国際業務は「専門業務が主」であることを、職務設計と根拠資料で説明可能にする体制づくりが決め手です。単純作業を構造的に排除し、出入国在留管理庁の基準に沿った運用を徹底することが、許可取得と安定運用への最短ルートです。