コラム 技術・人文知識・国際業務 特定技能

外国人採用担当者必見|技術・人文知識・国際業務と特定技能どちらを選ぶべきか専門家が解説

2025年12月30日

行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

外国人材の採用は、少子高齢化が進む日本において、企業の持続的な成長を支える重要な経営戦略の一つです。しかし、いざ外国人材の採用を検討する際、多くの企業様が直面するのが「どの在留資格を選ぶべきか」という複雑な問題ではないでしょうか。「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」、この二つの主要な就労系在留資格は、それぞれ異なる目的と要件を持ち、貴社の事業内容や求める人材像によって最適な選択が大きく変わってきます。安易な判断は、採用後のミスマッチ、在留資格の不許可、さらには出入国在留管理庁からの指導や行政処分のリスクにも繋がりかねません。採用担当者様は、「どちらの在留資格が自社にとって最適なのか」「要件は具体的に何が必要なのか」「申請手続きはどのように進めるべきか」「採用後のトラブルを避けるにはどうすればよいのか」といった疑問や不安を抱えていらっしゃるかもしれません。

本記事は、そうした外国人採用担当者様の悩みを解決するため、専門家が「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」という二大在留資格について、その全体像から具体的な要件、比較ポイント、業種別の活用事例、実務フロー、そして潜在的なリスクと対策まで、網羅的に徹底解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、貴社にとって最適な在留資格を見極め、法令を遵守した上で、外国人材の採用を成功させるための具体的な道筋が見えてくるでしょう。

結論から申し上げますと、どちらの在留資格が優れているという単純なものではなく、貴社の事業内容、求める人材の専門性、将来的なキャリアパス、そして受け入れ体制によって、最適な選択は大きく異なります。例えば、高度な専門知識や技術を要する職種であれば「技術・人文知識・国際業務」が適していますが、特定の産業分野における人手不足解消を目的とする場合は「特定技能」が有効な選択肢となります。それぞれの在留資格が持つ「学歴要件」や「実務経験要件」、求められる「日本語能力」や「技能水準」、さらには「在留期間」や「家族帯同の可否」、そして「永住権取得への道筋」や「転職のしやすさ」といった要素は、採用後の外国人材の定着率やキャリア形成にも深く関わってきます。

本記事では、まず「就労系在留資格の基本」から入り、「技術・人文知識・国際業務の定義と対象職種」、「特定技能の定義と対象分野」を明確にします。次に、それぞれの在留資格の「詳細な要件と採用条件」を掘り下げ、貴社が満たすべき基準を具体的に示します。さらに、「仕事内容とキャリアパスの違い」「在留期間と更新」「採用コストとビザ申請期間」といった「比較ポイント」を通じて、多角的な視点から両者を検討できるよう構成しています。また、「製造業」「外食産業」「IT企業」「建設業」「介護分野」といった具体的な「業種別の使い分け」事例を提示することで、貴社の状況に即した判断をサポートします。

加えて、採用担当者様が最も懸念されるであろう「採用から在留資格取得までの実務フロー」を順序立てて解説し、在留資格認定証明書交付申請の手続きや必要書類、行政書士や社会保険労務士といった専門家への依頼メリットについても触れます。そして、見過ごされがちな「トラブル事例から学ぶリスク管理」として、職務内容不一致による在留資格取消しのリスクや、想定外の配置転換時の注意点、労働時間に関する行政指導など、実務で起こりうる問題とその対策を提示します。最終的には、貴社が自社にとって最適な在留資格を判断するための「チェックリスト」を提供し、人材戦略、社内体制、コスト、リスクを総合的に踏まえた経営判断を支援します。

この記事で、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」に関するあらゆる疑問を解消し、貴社が外国人材採用において、法的なリスクを回避しつつ、長期的な視点で事業成長に貢献する優秀な人材を確保するための指針となる情報を得ることができます。

目次 非表示

1. 技術・人文知識・国際業務と特定技能の在留資格の全体像

外国人材の採用を検討する企業にとって、適切な在留資格を選択することは、事業戦略上非常に重要な判断となります。日本には様々な就労系在留資格が存在しますが、特に近年注目されているのが「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」です。

本章では、これら二つの在留資格が日本の入管制度の中でどのような位置づけにあり、それぞれどのような特徴を持つのか、また混同されがちな「技能実習」との違いも含めて、その全体像を解説します。

1.1 就労系在留資格の基本と日本の入管制度の仕組み

日本の出入国在留管理制度は、外国人が日本に滞在し活動するための「在留資格」を定めています。在留資格は、外国人が日本で行う活動の種類に応じて細かく分類されており、それぞれに許可される活動内容や期間、要件が定められています。

就労系在留資格とは、日本国内で報酬を得る活動が認められる在留資格の総称です。外国人を雇用する企業は、採用する外国人が従事する業務内容やその外国人の持つ専門性、学歴、経験などに応じて、適切な在留資格を選び、申請を行う必要があります。この制度を正しく理解し、遵守することは、外国人雇用におけるコンプライアンスの基本となります。詳細は出入国在留管理庁のウェブサイトでも確認できます。

1.2 技術・人文知識・国際業務の定義と対象となる職種

「技術・人文知識・国際業務」は、一般的に「技人国(ぎじんこく)」と略され、専門的な知識や技術、または国際的な感性を必要とする業務に従事する外国人材を対象とした在留資格です。この在留資格は、主に「ホワイトカラー」と呼ばれる職種での就労を想定しており、大学や専門学校で学んだ専門分野の知識・技術を活かした業務が求められます。

具体的に対象となる職種は多岐にわたります。例えば、IT企業におけるシステムエンジニアやプログラマー、経理・財務、人事、マーケティング、海外営業、通訳・翻訳、デザイナーなどが挙げられます。これらの職種では、学術的な素養や実務経験に基づく高度な専門性が重視されます。

1.3 特定技能の定義と対象分野および業務内容

「特定技能」は、日本国内の深刻な人手不足に対応するため、特定の産業分野において即戦力となる外国人材を受け入れる目的で2019年4月に新設された在留資格です。この在留資格は、専門性や技能水準が一定程度求められるものの、主に「ブルーカラー」と呼ばれる現場業務での就労を想定しています。

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、それぞれ対象となる分野と業務内容が定められています。現在、特定技能1号の対象は12分野、特定技能2号の対象は11分野です。以下に主な対象分野と業務内容の例を示します。

対象分野主な業務内容
介護身体介護、生活援助、レクリエーション支援など
ビルクリーニング建築物内部の清掃、設備管理補助など
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業機械加工、金属プレス加工、溶接、組み立てなど
建設型枠施工、左官、コンクリート圧送、配管、内装仕上げなど
造船・舶用工業溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工など
自動車整備自動車の点検、整備、分解、組立など
航空空港グランドハンドリング、航空機整備など
宿泊フロント、企画・広報、接客、レストランサービスなど
農業耕種農業(栽培管理、収穫、選果など)、畜産農業(飼養管理、集出荷など)
漁業漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の採捕など)、養殖業(養殖施設の管理、給餌など)
飲食料品製造業飲食料品の製造・加工、安全衛生管理など
外食業飲食物の調理、接客、店舗管理補助など

特定技能外国人は、これらの分野において一定の技能水準と日本語能力を有していることが求められます。特定技能制度の詳細については、出入国在留管理庁の特定技能制度のページもご参照ください。

1.4 技能実習との違いと在留資格の位置付け

特定技能制度が導入される以前は、日本で働く外国人材の多くが「技能実習」制度を利用していました。しかし、技能実習と技術・人文知識・国際業務、特定技能は、それぞれ制度の目的や対象となる外国人材、認められる活動内容が大きく異なります。特に、特定技能は技能実習からの移行も多く、混同されがちですが、その本質的な違いを理解することが重要です。

以下の表で、それぞれの在留資格の主な違いを比較します。

項目技術・人文知識・国際業務特定技能技能実習
制度の目的専門的・技術的な知識を要する業務への従事国内の人手不足解消開発途上国への技能移転による国際貢献
対象職種/分野専門的・技術的な知識を要する幅広い職種(ホワイトカラー)特定の16分野(現場業務、ブルーカラー)幅広い職種・作業(技能・技術の習得)
求められる能力大学卒以上の学歴または実務経験に基づく専門性特定の技能試験と日本語試験の合格技能実習計画に基づく技能習得意欲
在留期間5年(更新可能)特定技能1号:最長5年、特定技能2号:期間上限なし最長5年
家族帯同の可否可能(配偶者、子)特定技能1号:不可、特定技能2号:可能原則不可
転職の可否可能(同職種・同分野内)可能(同分野内)原則不可

このように、それぞれの在留資格は異なる目的と要件を持っており、自社の事業内容や求める人材像に合わせて適切な選択を行うことが、外国人材を安定的に雇用するための第一歩となります。

2. 技術・人文知識・国際業務の要件と採用条件

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識や技術、または国際的な感性を活かした業務に従事する外国人を対象とした就労ビザです。企業がこの在留資格を持つ外国人を採用する際には、学歴や実務経験、日本語能力、そして雇用条件など、複数の要件を満たす必要があります。これらの要件を正確に理解し、適切に採用活動を進めることが、円滑な外国人材の受け入れには不可欠です。

2.1 学歴要件と専攻内容の適合性

技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためには、原則として、従事しようとする業務に関連する分野を専攻し、一定以上の学歴を有している必要があります。

具体的には、以下のいずれかの学歴が求められます。

  • 大学(短期大学・大学院を含む)を卒業していること
  • 日本の専門学校を卒業し、「専門士」または「高度専門士」の称号を得ていること

最も重要なのは、その学歴で得た知識が、実際に企業で従事する業務内容と密接に関連していることです。例えば、情報工学を専攻した者がシステムエンジニアとして働く場合や、経済学を専攻した者が企業の財務・経理業務に携わる場合などが該当します。専攻と職務内容の関連性が低いと判断された場合、在留資格の申請が不許可となるリスクがあるため、慎重な確認が必要です。

以下に、学歴要件のポイントをまとめました。

要件項目詳細注意点
学歴大学卒業以上、または日本の専門学校で「専門士」・「高度専門士」の称号を取得していること外国の大学等を含む
専攻内容従事する業務と関連する分野を専攻していること専攻分野と業務内容の関連性が最も重要です。不一致の場合、不許可のリスクが高まります。
例外実務経験要件を満たす場合、学歴が不要となるケースもあります。(後述)国際業務(翻訳・通訳・語学指導など)では、学歴ではなく実務経験が重視される場合があります。

2.2 実務経験要件と職務内容の専門性

学歴要件を満たさない場合や、国際業務に従事する外国人材の場合、実務経験が在留資格取得の重要な要件となります。

技術・人文知識・国際業務の在留資格における実務経験要件は、以下の通りです。

  • 技術・人文知識分野の業務:原則として、従事しようとする業務に関連する分野で10年以上の実務経験が必要です。
  • 国際業務分野の業務(翻訳・通訳・語学指導など):原則として、従事しようとする業務に関連する分野で3年以上の実務経験が必要です。

ただし、学歴要件と実務経験要件は相互に補完し合う関係にあります。例えば、大学を卒業している場合は、原則として実務経験は不要です。また、専門学校卒業者も、その専攻と業務が関連していれば実務経験は不要とされます。

実務経験を証明する際には、その期間だけでなく、職務内容の専門性が問われます。単に特定の職種に就いていたというだけでなく、その中で専門的な知識や技術をどのように活用し、どのような業務に従事してきたかを具体的に示す必要があります。履歴書や職務経歴書、在職証明書などを通じて、その専門性を客観的に証明することが求められます。

以下に、実務経験要件のポイントをまとめました。

要件項目詳細注意点
実務経験期間技術・人文知識:10年以上
国際業務(翻訳・通訳・語学指導など):3年以上
この期間は、学歴要件を満たさない場合の代替要件となります。
職務内容従事する業務と関連する専門的な職務経験であること単なる一般事務や単純労働は認められません。専門性を示す具体的な職務内容の記述が必須です。
証明書類在職証明書、職務経歴書、履歴書など客観的に実務経験と専門性を証明できる書類を準備する必要があります。

2.3 日本語能力とコミュニケーションスキルの水準

技術・人文知識・国際業務の在留資格において、日本語能力に関する明確な試験合格基準は設けられていません

しかし、日本国内で専門的な業務に従事する上で、業務を円滑に遂行するための日本語能力は不可欠です。入管当局は、申請者が従事する職務内容に応じて、その職務を遂行するために必要な日本語能力を有しているかを個別に判断します。

特に、顧客対応や社内でのコミュニケーションが頻繁に発生する職務、あるいは日本語での資料作成や分析が求められる職務においては、高い日本語能力が求められる傾向にあります。採用企業は、面接や筆記試験などを通じて、外国人材の日本語でのコミュニケーションスキル読解力記述力を適切に評価する必要があります。

また、日本語能力だけでなく、異文化理解や協調性といったコミュニケーションスキルも、職場の円滑な人間関係構築や業務遂行において重要となります。

2.4 雇用契約書と給与水準および社会保険のポイント

外国人材を技術・人文知識・国際業務の在留資格で採用する際には、雇用契約書の内容、給与水準、そして社会保険への加入が重要な要件となります。

  • 雇用契約書:外国人材と企業の間で、明確な雇用契約が締結されている必要があります。契約書には、従事する業務内容、雇用期間、就業場所、労働時間、休日、賃金などの労働条件を具体的に明記しなければなりません。
  • 給与水準:最も重要なポイントの一つが、日本人と同等以上の報酬であることです。これは、外国人材が不当に低い賃金で雇用されることを防ぐための措置であり、同種の業務に従事する日本人従業員がいる場合は、その賃金と比較して不当に低くないことが求められます。同種の業務に従事する日本人がいない場合は、企業の規模や事業内容、地域などを考慮し、一般的な相場に見合った賃金水準であることが必要です。
  • 社会保険:外国人材も日本人と同様に、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労働者災害補償保険(労災保険)といった社会保険への加入が義務付けられています。これらは日本の労働法規に基づくものであり、企業は適切な手続きを行い、社会保険料を納付する責任があります。

これらの雇用条件が日本の労働基準法や関係法令に適合していることはもちろん、入管当局の審査基準を満たしていることが、在留資格取得の必須条件となります。不適切な雇用条件は、在留資格の不許可や、将来的な更新不許可に繋がる可能性があるため、細心の注意が必要です。

以下に、雇用契約書と給与水準、社会保険に関するポイントをまとめました。

要件項目詳細注意点
雇用契約書業務内容、雇用期間、労働時間、賃金などの労働条件を明確に記載口頭での約束ではなく、書面による契約が必須です。
給与水準日本人と同等以上の報酬であること同種の業務に従事する日本人従業員の給与と比較し、不当に低い賃金でないことを証明する必要があります。
社会保険健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険への加入義務日本の法令に基づき、適切な手続きと保険料の納付が必要です。
法的適合性日本の労働基準法および関連法令に適合していること不適切な雇用条件は、在留資格の不許可や更新不許可に直結します。

3. 特定技能の要件と採用条件

特定技能の在留資格は、日本の人手不足が深刻な産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるために創設されました。企業が特定技能外国人を受け入れるためには、特定の要件を満たし、適切な採用条件を整備する必要があります。ここでは、その詳細を解説します。

3.1 対象分野と業種別に求められる技能水準

特定技能制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、それぞれ対象となる分野と求められる技能水準が異なります。特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を要する技能を要するとされており、16分野(※2025年12月時点)が指定されています。

各分野で求められる技能水準は、それぞれの分野の業務内容に即したものであり、業務を円滑に遂行するために必要な実践的な能力が求められます。例えば、介護分野では身体介護や生活援助に関する専門知識と実務経験、建設分野では特定の専門工事に関する技能などが該当します。

以下に、特定技能1号の主な対象分野と求められる技能水準の例を示します。

対象分野求められる技能水準の例
介護身体介護等の業務に従事するために必要な専門知識と経験
ビルクリーニング建築物内部の清掃業務を適切に行うための知識と技能
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業金属加工、機械加工、電子部品製造などの特定作業に関する技能
建設型枠施工、左官、屋根工事などの特定の建設作業に関する技能
造船・舶用工業溶接、塗装、鉄工などの造船作業に関する技能
自動車整備自動車の点検、整備、修理に関する技能
航空空港グランドハンドリング、航空機整備に関する技能
宿泊フロント、接客、レストランサービスなどの宿泊施設業務に関する技能
農業耕種農業(施設園芸、畑作・野菜、果樹)、畜産農業(養豚、養鶏)に関する技能
漁業漁業(漁具の製作・修理、水産動植物の育成・管理、漁獲物の処理・加工)、養殖業に関する技能
飲食料品製造業飲食料品の製造・加工に関する技能
外食業飲食物調理、接客、店舗管理に関する技能

特定技能2号は、特定技能1号の対象分野のうち、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格であり、建設分野と造船・舶用工業分野で認められています。2号の取得には、1号よりも高い技能水準が求められ、実務経験も重視されます。

3.2 日本語能力試験と技能試験の合格基準

特定技能外国人は、日本語能力と各分野の技能水準を証明する試験に合格する必要があります。これは、日本での生活や業務遂行において、必要なコミュニケーション能力と専門能力を有していることを確認するためです。

3.2.1 日本語能力試験の合格基準

特定技能1号の日本語能力については、以下のいずれかの試験に合格していることが原則として求められます。

  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上:基本的な日本語を理解できるレベル。
  • 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic):生活や業務に必要な基本的な日本語能力を測るテスト。

これらの試験は、日本語の語彙、文法、読解、聴解といった総合的な能力を評価します。特に、N4レベルは日常会話がある程度理解でき、簡単な文章が読めるレベルとされています。ただし、介護の分野においては「介護日本語評価試験」合格も必要です。

3.2.2 技能試験の合格基準

各特定産業分野において、業務に必要な専門的な技能を評価するための試験が実施されます。この技能試験は、実務能力を直接的に測るものであり、分野ごとに内容が異なります。例えば、介護分野では「介護技能評価試験」、建設分野では「建設技能評価試験」などがあります。

試験は、学科試験と実技試験が組み合わされていることが多く、合格することで、その分野での即戦力として働くための技能を有していることが証明されます。試験の詳細については、各分野を所管する省庁や実施機関のウェブサイトで確認できます。

3.3 受け入れ機関と登録支援機関の役割の違い

特定技能外国人を受け入れる企業は「特定技能所属機関(受け入れ機関)」と呼ばれ、外国人材の安定的な就労と生活を支援する義務があります。この支援業務の一部または全部を、外部の専門機関に委託することができ、それが「登録支援機関」です。

それぞれの役割と責任は以下の通りです。

機関の種類主な役割と責任法的義務
特定技能所属機関(受け入れ機関)特定技能外国人を雇用し、業務に従事させる 外国人材に対する支援計画を策定し、実施する義務を負う 出入国在留管理庁への各種届出を行う 日本人と同等以上の賃金を支払うなど、労働条件を遵守する支援計画の実施義務(自社で実施するか、登録支援機関に委託) 定期的な報告義務
登録支援機関特定技能所属機関からの委託を受け、支援計画の全部または一部を実施する 外国人材の生活支援、相談対応、行政手続きのサポートなどを行う 支援業務の実施状況を受け入れ機関に報告する委託された支援計画の適切な実施義務 出入国在留管理庁への登録と更新義務

受け入れ機関は、特定技能外国人の雇用主として、支援計画の実施について最終的な責任を負います。 自社で支援体制を整えることが難しい場合は、登録支援機関に委託することで、法令遵守と外国人材の安定的な受け入れを両立させることが可能です。登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録された専門機関であり、そのリストは出入国在留管理庁のウェブサイトで確認できます。

3.4 労働条件と支援計画に関する法的義務

特定技能外国人を受け入れる企業には、適切な労働条件の提供と、包括的な支援計画の実施という法的義務が課せられます。これらの義務を怠ると、在留資格の取り消しや更新不許可、企業の信用失墜につながる可能性があります。

3.4.1 労働条件に関する義務

特定技能外国人に対しては、以下の労働条件を遵守することが求められます。

  • 日本人と同等以上の報酬:同一業務に従事する日本人労働者と同等以上の報酬を支払う必要があります。これは、不当な低賃金労働を防ぐための重要な規定です。
  • 社会保険の加入:健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの社会保険に加入させる義務があります。
  • 労働基準法等の遵守:労働時間、休憩、休日、残業手当など、日本の労働関係法令を遵守する必要があります。
  • 雇用契約書の締結:外国人労働者本人が理解できる言語で、労働条件を明記した雇用契約書を締結し、交付する必要があります。

これらの労働条件は、特定技能外国人が安定して日本で働くための基盤となります。

3.4.2 支援計画に関する法的義務

特定技能所属機関は、特定技能外国人が日本での生活や業務に円滑に適応できるよう、「特定技能外国人支援計画」を策定し、その内容を実行する義務があります。この支援計画は、以下の10項目から構成されます。

  1. 事前ガイダンス:入国前に、雇用契約の内容、活動内容、日本での生活に関する情報などを提供します。
  2. 出入国時の送迎:空港などへの送迎を行います。
  3. 住居確保の支援:住居の確保に関する情報提供や、連帯保証人となるなどの支援を行います。
  4. 生活オリエンテーション:日本の生活ルール、公共機関の利用方法、医療機関の受診方法などを説明します。
  5. 日本語学習の機会提供:日本語教室の情報提供や、学習教材の提供などを行います。
  6. 相談・苦情への対応:職場や生活に関する相談・苦情に適切に対応します。
  7. 行政手続き等への同行支援:転入・転出届、住民票の写しの交付申請、銀行口座の開設、携帯電話の契約などへの同行や情報提供を行います。
  8. 非自発的離職時の転職支援:やむを得ない事情で離職した場合、次の就職先を探す支援を行います。
  9. 定期的な面談・行政機関への通報:定期的に面談を行い、問題がないか確認します。労働基準法違反などがあれば、行政機関に通報します。
  10. その他:必要に応じて、生活全般にわたる支援を行います。

これらの支援は、外国人材が安心して日本で働き、生活するために不可欠であり、受け入れ企業は、これらの義務を確実に履行する責任があります。支援計画の実施状況は、出入国在留管理庁によって定期的に確認されます。

4. 技術・人文知識・国際業務と特定技能の比較ポイント

4.1 仕事内容とキャリアパスの違い

外国人材の採用を検討する際、まず理解すべきは、それぞれの在留資格で許可される仕事内容の範囲と、その後のキャリアパスの展望です。これは、企業の人材戦略と外国人材の長期的な定着に直結します。

技術・人文知識・国際業務は、専門的な知識や技術を要する職務が対象です。具体的には、ITエンジニア、マーケター、通訳、デザイナー、経理、総務などのホワイトカラー職種が該当します。これらの職種では、実務経験を積むことで、より高度な専門職や管理職へのキャリアアップが期待できます。企業側も、外国人材を長期的な戦力として育成し、専門性を高めてもらうことを前提とした採用が一般的です。

一方、特定技能は、特定の産業分野における人手不足解消を目的としており、現場での実務を伴う技能的な業務が中心です。例えば、製造業での機械操作、外食業での調理・接客、介護施設での身体介護などが挙げられます。特定技能1号では、同じ分野内での転職は可能ですが、基本的には与えられた業務を遂行することが求められ、管理職へのキャリアパスは限定的です。しかし、特定技能2号へ移行することで、在留期間の上限がなくなり、熟練した技能を持つ者としてより責任のある業務を任される可能性も出てきます。

4.2 在留期間と更新および家族帯同の可否

在留期間と更新の条件、そして家族帯同の可否は、外国人材の生活基盤やモチベーションに大きく影響するため、採用担当者にとって重要な比較ポイントです。

項目技術・人文知識・国際業務特定技能
在留期間3ヶ月、1年、3年、5年のいずれか。更新により長期在留が可能。特定技能1号:最長5年(通算)。特定技能2号:上限なし。
更新の可否条件を満たせば更新可能。永住権取得も視野に入る。特定技能1号:5年を超えての更新は不可。特定技能2号:条件を満たせば更新可能。
家族帯同配偶者と子が「家族滞在」の在留資格で帯同可能特定技能1号:原則不可。特定技能2号:配偶者と子が「家族滞在」の在留資格で帯同可能

技術・人文知識・国際業務の在留資格は、長期的な日本での生活を前提としており、更新を繰り返すことで永住権の取得も視野に入ります。また、配偶者や子供を日本に呼び寄せることが可能なため、外国人材が安心して日本で働くことができる環境を提供しやすいと言えます。

一方、特定技能1号は、在留期間が通算で最長5年と定められており、この期間を超えて日本に滞在することはできません。また、原則として家族の帯同も認められていません。これは、特定技能が一時的な労働力確保を目的としているためです。ただし、特定技能2号へ移行すれば、在留期間の上限がなくなり、家族帯同も可能となるため、長期的なキャリア形成を考える外国人材にとっては重要な選択肢となります。

4.3 採用コストとビザ申請にかかる期間

外国人材の採用には、直接的な給与以外にも様々なコストが発生し、ビザ申請には一定の期間を要します。これらの費用と時間を事前に把握し、採用計画に組み込むことが重要です。

項目技術・人文知識・国際業務特定技能
採用コスト人材紹介会社利用料(年収の20~35%程度) 渡航費用、初期生活費補助(任意) ビザ申請手数料(弁護士・行政書士に依頼する場合)人材紹介会社利用料(特定技能人材紹介会社) 登録支援機関への委託費用(月額2~3万円程度) 渡航費用、初期生活費補助(任意) ビザ申請手数料(行政書士に依頼する場合) 技能試験・日本語試験受験費用(外国人負担が原則)
ビザ申請期間書類準備:1~2ヶ月 入管審査:1~3ヶ月 合計:2~5ヶ月程度技能試験・日本語試験合格までの期間(数ヶ月~1年以上) 書類準備:1~2ヶ月 入管審査:1~3ヶ月 合計:試験合格後2~5ヶ月程度

技術・人文知識・国際業務の場合、専門性の高い人材の採用となるため、人材紹介会社を利用する際の費用が高くなる傾向があります。ビザ申請自体は、必要書類が揃っていれば比較的スムーズに進みますが、専門的な職務内容と学歴・職歴の整合性を入管に説明するための準備が重要です。

特定技能の場合、登録支援機関への支援委託が義務付けられるケースが多く、その費用が継続的に発生します。また、外国人材が技能試験と日本語試験に合格していることが前提となるため、採用決定から実際に日本で働き始めるまでの期間は、試験の受験状況に大きく左右されます。すでに試験に合格している人材であれば比較的早く採用できますが、これから試験を受ける場合は、その準備期間も考慮に入れる必要があります。

4.4 永住権取得や転職のしやすさの違い

外国人材が日本で長期的に働くことを考える上で、永住権の取得可能性と転職のしやすさは、将来設計に大きく関わる要素です。企業側も、優秀な人材の定着やキャリア支援の観点から、これらの違いを理解しておくべきです。

項目技術・人文知識・国際業務特定技能
永住権取得要件を満たせば取得可能(原則10年以上の在留、高度専門職は最短1年) 安定した収入、納税義務の履行などが重要特定技能1号では不可 特定技能2号へ移行後、要件を満たせば取得可能(原則10年以上の在留)
転職のしやすさ同種または関連性の高い職務であれば比較的自由 転職先での職務内容と在留資格の適合性が重要同じ分野内であれば可能 異なる分野への転職は原則不可(改めて試験合格が必要)

技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人材は、日本での在留期間が長くなればなるほど、永住権取得の可能性が高まります。特に、「高度専門職」の在留資格へ変更することで、最短1年で永住権を申請できる特例もあります。転職についても、専門性が活かせる職務であれば比較的自由度が高く、自身のキャリアプランに合わせた選択が可能です。

特定技能1号では永住権の取得はできませんが、特定技能2号へ移行することで、永住権取得の道が開かれます。これは、特定技能2号が熟練した技能を持つ外国人に与えられる在留資格であり、在留期間の上限がないため、長期的な日本での生活を前提としているためです。転職については、特定技能は特定の産業分野に限定されるため、同じ分野内での転職は可能ですが、異なる分野への転職は原則として認められていません。この点は、外国人材のキャリア選択において大きな制約となる可能性があります。

5. 業種別に見る技術・人文知識・国際業務と特定技能の使い分け

外国人材の採用を検討する際、自社の事業内容や職務内容に最適な在留資格を選択することは、円滑な採用活動と安定した雇用関係を築く上で極めて重要です。ここでは、主要な業種を例に挙げ、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」のどちらが適しているか、具体的な使い分けのポイントを解説します。

5.1 製造業と工場現場での最適な在留資格選択

製造業においては、業務内容が多岐にわたるため、在留資格の選択も慎重に行う必要があります。専門的な知識や技術を要する職務と、現場での定型的な作業とで、適した在留資格が異なります。

技術・人文知識・国際業務の活用例:

  • 対象職種: 生産管理、品質管理、研究開発、設計、海外取引に関する通訳・翻訳、国際営業など、専門的な知識や技術を要する職務。
  • 要件: 大学や専門学校を卒業し、その専攻と業務内容に関連性があること。または、関連分野での一定の実務経験があること。
  • メリット: 専門性の高い業務を任せることができ、将来的なキャリアアップも期待できます。家族の帯同も可能です。

特定技能の活用例:

  • 対象職種: 素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3分野において、製造ラインでの組立、加工、検査、保守点検などの直接的な作業。
  • 要件: 各分野の技能試験と日本語能力試験(N4相当以上)に合格していること。
  • メリット: 即戦力となる現場の技能人材を確保しやすく、学歴要件がないため、幅広い人材から採用が可能です。

使い分けのポイント: 工場現場での定型的な生産作業や組立作業には「特定技能」が適しています。一方、生産管理、品質保証、研究開発、設計、海外との調整業務など、専門的な知識や管理能力が求められる職務には「技術・人文知識・国際業務」が最適です。

5.2 外食産業と宿泊業での特定技能活用事例

外食産業と宿泊業は、深刻な人手不足に直面しており、特定技能制度が外国人材受け入れの主要な手段となっています。現場のサービス業務と、管理・企画業務とで在留資格を使い分けることが一般的です。

特定技能(外食業)の活用例:

  • 対象職種: 飲食物の調理、接客、店舗管理業務全般。
  • メリット: 現場での即戦力として、調理やホール業務など幅広い業務を任せることができます。

特定技能(宿泊業)の活用例:

  • 対象職種: フロント、企画・広報、接客、レストランサービス、清掃など、宿泊施設におけるサービス業務全般。
  • メリット: 顧客サービスの維持・向上、特に多言語対応が求められる場面で活躍が期待できます。

技術・人文知識・国際業務の活用例:

  • 対象職種: ホテルチェーンの国際マーケティング担当、海外顧客対応のマネージャー、インバウンド戦略の企画、通訳を伴う広報など。
  • 要件: 大学や専門学校を卒業し、関連業務経験があること。

使い分けのポイント: 現場での調理、接客、清掃などの実務には「特定技能」が最も適しています。これに対し、経営戦略、国際営業、高度な専門知識を要する管理職などには「技術・人文知識・国際業務」を検討します。

5.3 IT企業と専門職での技術・人文知識・国際業務活用事例

IT分野やその他の専門職においては、高度な知識やスキルが求められるため、「技術・人文知識・国際業務」が主要な在留資格となります。特定技能はIT専門職の対象外であるため、選択肢は限定されます。

技術・人文知識・国際業務の活用例:

  • 対象職種: システムエンジニア、プログラマー、Webデザイナー、データサイエンティスト、AI開発者、国際営業、翻訳・通訳、会計・法務などの専門職。
  • 要件: 大学や専門学校でIT関連の専門知識を習得していること、または実務経験があること。
  • メリット: 高度な専門性を持つ人材を確保でき、企業の競争力強化に直結します。キャリアパスも多様で、家族帯同も可能です。

特定技能の活用:

  • IT分野は特定技能の対象分野に含まれていません。そのため、IT関連の専門職で特定技能の在留資格を利用することはできません
  • ただし、IT企業のオフィスビル清掃など、特定技能の対象となる他の分野の業務であれば雇用は可能ですが、これはIT専門職の採用とは異なります。

使い分けのポイント: IT分野における専門性の高い職務には、原則として「技術・人文知識・国際業務」を選択することになります。この在留資格は、専門知識や技術、国際的な感覚を持つ人材の確保に特化しています。

5.4 建設業と介護分野での選択上の注意点

建設業と介護分野も人手不足が深刻であり、特定技能の活用が積極的に進められています。しかし、専門性や管理職の採用には「技術・人文知識・国際業務」も有効であり、業務内容に応じた適切な選択が不可欠です。

5.4.1 建設業における使い分け

建設現場での技能労働者と、設計や施工管理といった専門職では、求められるスキルセットが異なります。

  • 特定技能(建設):
    • 対象職種: 土木、建築、電気工事など、18の作業区分にわたる現場での技能作業。
    • メリット: 現場の技能労働者を迅速に確保できます。
  • 技術・人文知識・国際業務(建設):
    • 対象職種: 設計、施工管理、CADオペレーター(専門卒以上)、国際的なプロジェクトマネジメント、海外からの資材調達・営業など。
    • メリット: 高度な専門知識や管理能力を要する職務に最適です。
  • 注意点: 現場での直接的な作業員は「特定技能」、設計や施工管理などの専門職・管理職は「技術・人文知識・国際業務」と明確に区別して採用計画を立てる必要があります。

5.4.2 介護分野における使い分け

介護現場での直接的なサービス提供と、施設の運営管理や国際的な連携を担う業務とで、在留資格の選択が変わります。

  • 特定技能(介護):
    • 対象職種: 身体介護、生活援助、レクリエーション支援など、直接的な介護業務全般。
    • メリット: 介護現場の慢性的な人手不足解消に貢献し、即戦力として期待できます。
  • 技術・人文知識・国際業務(介護):
    • 対象職種: 介護施設の管理業務(大学・専門学校卒)、国際的な介護サービス開発、海外からの入居者対応、通訳を伴う相談業務など。
    • メリット: 専門的な知識を活かした管理・企画職に最適です。
  • 注意点: 外国人介護士として直接的な介護業務に従事させる場合は「特定技能」が一般的ですが、施設の運営管理や国際的な連携を担う人材には「技術・人文知識・国際業務」が適しています。業務内容と在留資格の適合性を厳密に確認することが不可欠です。

6. 採用から在留資格取得までの実務フロー

外国人材の採用は、一般的な日本人材の採用プロセスに加えて、在留資格の取得という特別な手続きが伴います。この章では、募集から内定、そして在留資格の取得に至るまでの具体的な実務フローと、採用担当者が押さえるべき重要なポイントを解説します。

6.1 募集から内定までの段階で確認すべきポイント

外国人材を募集し、内定を出すまでの段階で、採用企業はいくつかの重要な確認事項をクリアする必要があります。これらを怠ると、後の在留資格申請がスムーズに進まないばかりか、不許可となるリスクも高まります。

  • 採用計画と在留資格の選定 まず、採用したい職務内容や求められるスキル、学歴、経験などから、どの在留資格(技術・人文知識・国際業務か特定技能か)が最も適切かを事前に検討します。職務内容が在留資格の活動内容に合致しているか、必要な要件を満たせる人材像かを明確にすることが重要です。
  • 候補者の要件確認 履歴書や面接を通じて、候補者が各在留資格の要件(学歴、職務経験、日本語能力、技能試験の合格有無など)を満たしているかを詳細に確認します。特に「技術・人文知識・国際業務」では、大学等での専攻内容と従事する業務の関連性が厳しく問われます。一方、「特定技能」では、特定の技能試験と日本語能力試験の合格が必須です。
  • 労働条件の提示と合意 外国人材に対しても、日本人と同等以上の報酬を提示し、労働時間、休日、社会保険への加入など、日本の労働関係法令を遵守した労働条件を明示し、合意を得る必要があります。雇用契約書の内容は、在留資格申請時に重要な書類となります。
  • 必要書類の事前準備依頼 内定後、スムーズに在留資格申請を進めるため、候補者にはパスポートのコピー、卒業証明書、職務経歴書、日本語能力を証明する書類など、個人で準備が必要な書類を早めに伝えて準備を依頼しておきましょう。

6.2 在留資格認定証明書交付申請の手続きと必要書類

内定を出した後、企業が最も注力すべきは、外国人材が日本で就労するために必要な在留資格認定証明書の交付申請です。この証明書は、海外にいる外国人が日本の在外公館で査証(ビザ)を取得するために不可欠な書類です。

申請は、企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に対して行います。手続きの流れと主な必要書類は以下の通りです。

6.2.1 手続きの流れ

  1. 申請書の作成と必要書類の収集 外国人本人に関する書類と、受け入れ企業に関する書類を準備します。
  2. 地方出入国在留管理局への申請 必要書類を揃え、管轄の地方出入国在留管理局に申請します。
  3. 審査 入管当局が提出された書類に基づき、在留資格の要件を満たしているか審査を行います。追加資料の提出を求められることもあります。
  4. 在留資格認定証明書の交付 審査が許可されると、在留資格認定証明書が交付されます。
  5. 査証(ビザ)の取得と入国 交付された認定証明書を海外の外国人本人に送り、本人が日本の在外公館で査証を取得後、日本に入国します。

6.2.2 主な必要書類

提出する書類は在留資格の種類や企業の規模によって異なりますが、一般的に以下の書類が必要となります。

書類の種類技術・人文知識・国際業務特定技能備考
在留資格認定証明書交付申請書所定の様式に記入
写真規定に沿ったもの
パスポートの写し有効期限内のもの
最終学歴の卒業証明書△(技能試験合格で不要の場合あり)大学、専門学校等
職務経歴書△(技能試験合格で不要の場合あり)職務内容の詳細を記載
雇用契約書労働条件を明記
会社の登記簿謄本発行から3ヶ月以内のもの
会社の決算書直近のもの
事業内容を明らかにする資料会社案内、パンフレット等
技能試験合格証明書対象分野の技能試験
日本語能力試験合格証明書△(業務内容による)特定技能1号ではN4相当以上
健康診断書指定の様式で作成
支援計画書登録支援機関が作成する場合あり

上記は一般的な例であり、個別の状況に応じて追加書類が求められる場合があります。特に特定技能の申請においては、支援計画書や登録支援機関との契約書など、独自の書類が必要となる点に注意が必要です。

6.3 行政書士や社会保険労務士への依頼のメリット

在留資格申請手続きは専門的な知識と多くの書類作成を伴うため、自社で対応するには大きな負担とリスクが伴います。そこで、専門家である行政書士や社会保険労務士に依頼することで、スムーズかつ確実な手続きが期待できます。

  • 行政書士に依頼するメリット 行政書士は、入管法に精通した在留資格申請の専門家です。複雑な申請書類の作成、必要書類の収集アドバイス、入管当局との折衝などを代行してくれます。これにより、企業の担当者は本業に集中でき、手続きの遅延や不許可のリスクを大幅に低減することが可能です。特に、過去に不許可になったケースや、特殊な事情がある場合には、専門家のアドバイスが不可欠となります。
  • 社会保険労務士に依頼するメリット 社会保険労務士は、労働法規や社会保険に関する専門家です。外国人材の雇用契約書作成、労働条件の適正化、社会保険・労働保険の手続きなど、雇用に関するコンプライアンスを確保する上で重要な役割を担います。外国人材の雇用においては、日本人と同等以上の待遇を確保することが義務付けられているため、労務管理の専門家によるチェックは非常に重要です。
  • 両者の連携による効果 行政書士が在留資格申請を、社会保険労務士が労務管理をそれぞれ担当することで、採用から入社後の定着までを一貫してサポート体制を構築できます。これにより、企業は法令遵守を徹底しつつ、外国人材が安心して働ける環境を提供することが可能になります。

6.4 入社後の在留カード管理とコンプライアンス対応

在留資格を取得し、外国人材が入社した後も、企業には在留カードの適切な管理や各種法令遵守(コンプライアンス)に関する重要な義務があります。これらの対応を怠ると、企業の信用失墜や罰則の対象となる可能性があります。

  • 在留カードの確認と管理 入社後、速やかに外国人材の在留カードの記載事項(在留資格、在留期間、就労制限の有無など)を確認し、コピーを保管します。特に在留期間の満了日は、更新手続きを計画的に進める上で最も重要な情報です。在留期間の期限が近づいたら、本人に通知し、更新申請の準備を促す体制を整えましょう。
  • 各種届出義務の履行 外国人材の氏名、住所、所属機関(会社)の変更があった場合や、配偶者との離婚・死別があった場合など、入管当局への届出義務が発生します。また、企業側も、外国人材の離職や契約終了時には、地方出入国在留管理局へ届け出る必要があります。これらの届出は、原則として事由発生から14日以内に行う必要があります。
  • 労働基準法等の法令遵守 外国人材も日本人労働者と同様に、日本の労働基準法が適用されます。労働時間、賃金、残業代の支払い、有給休暇、安全衛生など、すべての労働条件が法令に準拠しているかを常に確認し、適切な労務管理を行う必要があります。特に特定技能外国人を受け入れる場合、登録支援機関による定期的な支援状況の確認や、生活オリエンテーションの実施など、追加の義務が発生します。
  • 監査・指導への対応とリスク管理 地方出入国在留管理局や労働基準監督署は、外国人材を雇用する企業に対して、定期的な監査や指導を行うことがあります。万が一、不適切な雇用状況や在留資格に関する問題が発覚した場合、在留資格の取り消しや罰則、新たな外国人材の受け入れ停止といった厳しい措置が取られる可能性があります。日頃から適切な管理と記録を行い、トラブルを未然に防ぐためのリスク管理体制を構築しておくことが重要です。

7. トラブル事例から学ぶ在留資格選択のリスク管理

外国人材の採用は企業にとって大きなメリットをもたらしますが、在留資格に関する法令を遵守しない場合、予期せぬトラブルに発展し、企業の信頼失墜や事業継続に影響を及ぼす可能性があります。ここでは、特に注意すべきトラブル事例とそのリスク管理について解説します。

7.1 職務内容不一致による在留資格取消のリスク

在留資格の申請時に届け出た職務内容と、実際に外国人が従事する業務内容が異なる場合、在留資格の取消や更新不許可という重大なリスクが生じます。特に「技術・人文知識・国際業務」では専門性、「特定技能」では対象分野が厳格に定められています。

具体的な事例:

  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で経理職として申請した外国人材に対し、実際には単純な清掃業務や事務補助のみを継続的に行わせていたケース。
  • 「特定技能」の在留資格で飲食料品製造業として受け入れた外国人材を、人手不足を理由に全く関連性のない建設現場での作業に従事させていたケース。

対策:

  • 雇用契約書に記載された職務内容と実際の業務内容を厳密に一致させ、外国人本人にも十分に理解させること。
  • 職務記述書(ジョブディスクリプション)を明確に作成し、具体的な業務範囲を定義する。
  • 定期的に業務内容を確認し、乖離が生じていないかをチェックする体制を構築する。
  • 業務内容に変更が生じる場合は、速やかに出入国在留管理庁への届出や在留資格変更許可申請が必要となる場合があるため、専門家(行政書士など)に相談する。

7.2 想定外の配置転換や出向時の注意点

企業内の都合による配置転換や他社への出向が、外国人材の持つ在留資格の活動内容と合致しない場合、不法就労助長在留資格取消の原因となることがあります。特に在留資格の活動範囲を超える職務への変更は厳しく制限されます。

具体的な事例:

  • 「技術・人文知識・国際業務」でシステムエンジニアとして採用した外国人材を、人手不足を理由に、専門性を要しない生産ラインでの単純作業に従事させた。
  • 「特定技能」で介護分野の業務に従事していた外国人材を、グループ会社の清掃部門に期間を定めて出向させ、介護以外の業務を専ら行わせた。

対策:

  • 配置転換や出向を検討する際は、事前に当該外国人材の在留資格の活動範囲内で可能かを専門家(行政書士など)に確認する。
  • 業務内容が大幅に変更になる場合は、在留資格変更許可申請が必要となる可能性があるため、必ず手続きを行う。
  • 特に「特定技能」の場合、原則として分野変更は認められないため、出向先での業務内容が特定技能の対象分野と合致しているか、極めて慎重な判断が求められる。
  • 出向の場合、雇用元と出向先、そして外国人材本人の間で、業務内容や労働条件に関する明確な合意形成と書面での確認を徹底する。

7.3 労働時間や残業に関する指摘と行政対応

外国人材の労働条件が日本の労働基準法に違反している場合、労働基準監督署からの指導や、それが原因で出入国在留管理庁からの行政指導、さらには在留資格の更新不許可につながる可能性があります。

具体的な事例:

  • 法定労働時間を超える長時間労働を常態化させ、適切な残業代を支払っていなかった。
  • 外国人材が日本の労働法規に不慣れであることを利用し、有給休暇の取得を不当に制限した。
  • これらの労働問題が外国人材本人や関係機関から通報され、労働基準監督署による調査が入った。

対策:

  • 日本の労働基準法を厳格に遵守し、適正な労働条件を雇用契約書に明記し、外国人材に十分に説明する。
  • タイムカードや勤怠管理システムを導入し、労働時間を正確に記録・管理する。
  • 残業が発生する場合は、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結し、適切に運用する。
  • 定期的な面談を通じて、労働環境に関する外国人材の意見や不満を吸い上げ、早期に改善を図る。
  • 特定技能の場合、登録支援機関と密に連携し、支援計画に基づいた適切な労働条件の提供と生活支援を行う。

7.4 更新不許可や帰国リスクを避けるための対策

上記のトラブル事例は、最終的に外国人材の在留資格更新不許可や、最悪の場合、在留資格の取消、強制送還といった結果を招く可能性があります。これは企業にとって、貴重な人材の喪失だけでなく、社会的信用の低下や今後の外国人材採用への悪影響にもつながります。

主なリスクと具体的な対策

リスクの種類具体的な対策
職務内容の不一致雇用契約書と実務内容の厳格な一致、定期的な業務内容の確認、変更時の適正な手続き。
労働条件の不備・法令違反労働基準法を含む関係法令の厳格な遵守、適正な労働条件の提供、勤怠管理の徹底。
納税義務・社会保険の不履行外国人材の納税義務や社会保険加入を確実に履行し、適切な手続きを行う。
虚偽申請・不適切な情報提供在留資格申請時、更新時における正確かつ真実の情報提供を徹底する。
生活支援の不備(特定技能)登録支援機関による支援計画の適切な実施、外国人材からの相談体制の整備。

包括的なリスク管理のポイント:

  • コンプライアンス体制の徹底:企業全体で法令遵守意識を高め、外国人材の受け入れに関する最新の法改正情報を常に把握する。
  • 専門家との連携:弁護士、行政書士、社会保険労務士などの専門家と常に連携し、疑問点や不安な点は速やかに相談する体制を整える。
  • 記録の徹底:雇用契約書、就業規則、賃金台帳、勤怠記録、健康診断結果など、外国人材に関する重要な書類を適切に保管・管理する。
  • 外国人材への支援とコミュニケーション:日本での生活や手続きに関する情報提供、相談しやすい環境を整え、外国人材が安心して働けるようにサポートする。

8. 自社にとって最適な在留資格を判断するチェックリスト

外国人材の採用を検討する際、自社の事業内容や人材戦略に最適な在留資格を選択することは、採用の成功と長期的な定着に不可欠です。ここでは、技術・人文知識・国際業務と特定技能のどちらが自社に適しているかを判断するためのチェックリストを提示します。

8.1 事業内容と職務内容からの適合性の確認

採用を検討している外国人材が従事する業務が、それぞれの在留資格の活動範囲に合致しているかを具体的に確認することが重要です。在留資格は、職務内容と学歴・経験の関連性が厳しく審査されます。

検討項目技術・人文知識・国際業務特定技能
職務内容の専門性企画、開発、ITエンジニア、通訳、デザイナー、経理、営業など、専門的・技術的な知識を要する業務が中心か。介護、建設、農業、飲食料品製造、外食、宿泊など、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務が中心か。
学歴・実務経験との関連性大学卒以上の学歴または10年以上の実務経験があり、その専門分野と職務内容に直接的な関連性があるか。特定の技能試験に合格しており、その技能と職務内容が合致しているか。学歴要件は原則なし。
単純労働の有無原則として単純労働は認められない。専門業務の補助として付随的に行う軽作業は許容される場合がある。特定産業分野における技能を要する業務であり、一部の付随的な単純作業も含まれる。

職務内容が在留資格の活動範囲と厳密に合致しているかは、在留資格の不許可や取り消しを避ける上で極めて重要な判断基準となります。

8.2 人材戦略と長期的なキャリア形成の観点

外国人材を短期的な労働力として捉えるのか、それとも長期的なキャリア形成を支援し、自社の重要な戦力として定着を目指すのかによって、選択すべき在留資格は大きく異なります。

検討項目技術・人文知識・国際業務特定技能
キャリアアップの可能性専門性の向上や管理職への昇進など、多様なキャリアパスが期待できる。特定分野での技能習熟、特定技能2号への移行、あるいは他の在留資格への変更によりキャリアアップが可能。
在留期間と更新原則5年を上限とし、要件を満たせば更新可能。長期的な在留が見込みやすい。特定技能1号は最長5年。特定技能2号へ移行すれば在留期間の上限はなく、永住権への道も開かれる
家族帯同の可否配偶者や子どもの帯同が可能であり、生活の安定につながる。特定技能1号は原則として家族帯同不可。特定技能2号に移行すれば可能となる。
永住権取得への道一定の要件を満たせば、永住権取得の可能性が高い特定技能1号からの直接的な永住権取得は困難だが、特定技能2号に移行すれば永住権取得の道が開かれる

外国人材のモチベーション維持や定着率向上のためにも、将来的なキャリアパスを提示できるかどうかが鍵となります。

8.3 社内体制と受け入れ体制の整備状況の確認

外国人材を受け入れるにあたり、自社の社内体制がそれぞれの在留資格の要件を満たしているか、また適切な支援を提供できるかを事前に確認する必要があります。

検討項目技術・人文知識・国際業務特定技能
労働条件の遵守日本人と同等以上の給与水準、社会保険の加入、労働基準法の遵守など、一般的な雇用条件を満たしているか日本人と同等以上の給与水準、社会保険の加入、労働基準法の遵守に加え、支援計画に基づく各種支援が必要。
支援体制の有無入社後の生活支援は法的な義務ではないが、定着のために自主的な支援が望ましい。登録支援機関への委託、または自社で支援計画を策定し実施する義務がある。生活オリエンテーション、住居確保支援、日本語学習支援などが含まれる。
コミュニケーション体制日本語能力が求められるが、業務上の円滑なコミュニケーションをサポートする体制があるか。日常会話レベルの日本語能力が求められるが、日本語学習支援や相談体制が重要。
コンプライアンス意識在留資格に関する法令や手続きを理解し、適切に管理・運用できる担当者がいるか。特に特定技能は、定期的な報告義務や支援計画の実施状況の確認など、より厳格なコンプライアンスが求められる。

特に特定技能の場合、登録支援機関の活用を含めた包括的な支援体制が義務付けられているため、その準備状況が重要な判断ポイントとなります。

8.4 コストとリスクを踏まえた経営判断の進め方

在留資格の選択は、採用にかかる費用、ビザ申請費用、受け入れ後の支援費用、そしてコンプライアンス違反のリスクに直結します。これらの要素を総合的に比較検討し、自社の経営戦略に合致した選択を行う必要があります。

検討項目技術・人文知識・国際業務特定技能
採用コスト人材紹介会社利用の場合、高額になる傾向がある。専門性の高い人材の確保には相応のコストがかかる。人材紹介会社利用のほか、海外での募集や技能実習からの移行など、多様なルートがある。
ビザ申請費用印紙代(6,000円)のほか、行政書士に依頼する場合は数万円から十数万円程度の報酬がかかる。印紙代(6,000円)のほか、行政書士に依頼する場合は数万円から十数万円程度の報酬がかかる。
受け入れ後の費用基本的には日本人従業員と同等の人件費。自主的な支援費用は別途。登録支援機関への委託費用(月額数万円程度)が発生する場合がある。自社で支援する場合も、担当者の人件費や支援にかかる実費が必要。
コンプライアンスリスク職務内容と在留資格の不一致、労働条件の不備などが在留資格取り消しのリスクとなる。職務内容の不一致に加え、支援計画の不履行や報告義務違反が在留資格取り消しや企業への罰則につながるリスクがある。

初期費用だけでなく、長期的な視点での総コストと潜在的なリスクを比較検討し、自社の経営戦略に合致した選択を行う必要があります。不確実な情報や誤った解釈による判断は、後々大きなトラブルに発展する可能性があるため、専門家への相談も積極的に検討すべきです。例えば、出入国在留管理庁のウェブサイトなどで最新の情報を確認することも有効な手段です。

9. まとめ

外国人材の採用を検討する企業にとって、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」という二つの主要な在留資格のどちらを選択するかは、事業の成否を左右する重要な経営判断となります。本記事では、それぞれの在留資格の全体像から詳細な要件、比較ポイント、業種別の使い分け、実務フロー、そしてリスク管理までを専門家の視点から解説してきました。この複雑な選択を誤らないためには、両者の本質的な違いを深く理解し、自社の具体的な状況に照らし合わせて慎重に検討することが不可欠です。

「技術・人文知識・国際業務」は、大学や専門学校で専門的な知識を修得した人材が、その知識や経験を活かせる専門性の高い業務に従事するための在留資格です。対象となる職種は多岐にわたり、ITエンジニア、国際業務担当者、デザイナーなど、ホワイトカラー職が中心となります。学歴や実務経験、職務内容との適合性が厳しく問われる一方で、在留期間の更新が比較的容易で、家族帯同も認められるなど、長期的なキャリア形成や定着を促しやすい点が大きなメリットです。企業側にとっては、高度な専門性を持つ人材を確保し、事業の国際化や技術革新を推進する上で強力な選択肢となります。

一方、「特定技能」は、特定の産業分野における人手不足を解消するため、即戦力となる外国人材を受け入れる目的で創設されました。介護、建設、農業、外食業など、定められた16分野で、一定の技能水準と日本語能力が求められます。技能試験と日本語能力試験の合格が必須であり、実務経験が重視されるケースも多くあります。特定技能1号は最長5年の在留期間が定められており、原則として家族帯同は認められませんが、特定技能2号へ移行できれば、在留期間の上限がなくなり、家族帯同も可能となります。企業にとっては、現場の労働力不足を迅速に補い、事業継続性を確保する上で非常に有効な手段です。

どちらの在留資格が自社に適しているかを判断する際には、まず「どのような職務内容で、どのようなスキルを持つ人材を求めているのか」を明確にすることが出発点となります。専門性の高いオフィスワークであれば「技術・人文知識・国際業務」、現場での実務を担う人材であれば「特定技能」が有力な候補となるでしょう。さらに、在留期間の希望、家族帯同の要否、将来的なキャリアパスの展望、採用にかかるコスト、そしてビザ申請の難易度や期間といった多角的な視点から比較検討することが重要です。

また、外国人材の採用は、単に労働力を補うだけでなく、企業の多様性を高め、新たな視点や価値観を取り入れる機会でもあります。そのため、短期的な視点だけでなく、外国人材が企業の一員として長期的に活躍できるような支援体制の整備や、適切なキャリアパスの提供も考慮に入れるべきです。不適切な在留資格の選択や、法令遵守を怠った運用は、在留資格の取り消しや企業の信頼失墜といった重大なリスクを招く可能性があります。複雑な入管制度や労働法規に関する専門知識が求められるため、行政書士や社会保険労務士といった専門家の知見を積極的に活用し、適切な手続きとコンプライアンスの徹底を図ることが、成功への鍵となります。

最終的に、自社の事業内容、求める人材像、そして長期的な経営戦略に最も合致する在留資格を選択することが、外国人材の定着と企業の持続的な成長に繋がります。本記事で提供した情報とチェックリストが、貴社が最適な判断を下すための一助となれば幸いです。外国人材と共に、貴社の事業がさらなる発展を遂げることを心より願っております。

  • この記事を書いた人

行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

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