
特定技能制度を活用して外国人材の受け入れを検討しているものの、「特定技能1号と2号の違いが複雑でよくわからない」「結局、自社はどちらの制度を利用すべきなのか判断できない」とお悩みの企業担当者様も多いのではないでしょうか。特定技能1号と2号は、名称は似ていますが、在留期間や家族帯同の可否など、異なる特徴を持つ在留資格です。この違いを正確に理解しないまま受け入れを進めてしまうと、将来的に「もっと長く働いてほしかったのに、制度上不可能だった」「優秀な人材なのに、家族を呼び寄せられず帰国してしまった」といった事態に陥りかねません。結論から申し上げると、特定技能1号と2号の最大の違いは、在留期間の上限の有無と、それに伴う永住権取得の可能性です。特定技能1号が通算5年という期限付きの就労であるのに対し、特定技能2号には在留期間の上限がなく、要件を満たせば配偶者や子の帯同も可能となり、長期的なキャリア形成、ひいては永住も見据えることができます。本記事では、特定技能制度に精通した専門家が、外国人材の受け入れを成功に導くために不可欠な特定技能1号と2号の5つの具体的な違い(在留期間、技能水準、家族帯同、対象分野、支援義務)を、初心者の方にも分かりやすく徹底的に比較・解説します。さらに、両者の違いが一目でわかる比較一覧表や、1号から2号へ移行するための要件と試験内容、そして2023年6月の閣議決定で拡大された2号の対象分野についても詳しくご説明します。この記事を最後までお読みいただくことで、貴社が受け入れるべき人材の要件が明確になり、どちらの在留資格が最適なのかを自信を持って判断できるようになります。技能実習との違いや転職の可否といった、現場でよく挙がる疑問にもお答えしますので、特定技能に関するあらゆる不安や疑問を解消し、スムーズな受け入れ計画を立てるための確かな知識がすべて手に入ります。
1. 特定技能制度とは 深刻な人手不足に対応するための在留資格
特定技能とは、日本の少子高齢化に伴う労働力人口の減少に対応するため、2019年4月に創設された在留資格です。 国内での人材確保が困難な特定の産業分野において、専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。
1.1 特定技能制度の目的
本制度の最大の目的は、日本国内の深刻な人手不足を解消することにあります。 生産性の向上や国内人材の確保に努めてもなお、人手が足りない状況にある産業分野を支えるための重要な仕組みとして位置づけられています。 そのため、特定技能の在留資格を持つ外国人には、一定水準以上の技能と日本語能力が求められます。
1.2 技能実習制度との根本的な違い
特定技能と混同されやすい在留資格に「技能実習」がありますが、両者は制度の目的が根本的に異なります。 技能実習が日本の技術を発展途上国へ移転するための「国際貢献」を目的としているのに対し、特定技能は「労働力の確保」を目的としています。 この目的の違いを理解することが、両制度を正しく活用する上で非常に重要です。
| 制度 | 目的 |
|---|---|
| 特定技能 | 国内の労働力不足を補うための人材確保 |
| 技能実習 | 技能移転を通じた国際貢献 |
この目的の違いから、在留期間の上限や転職の可否など、様々な点で制度設計が異なっています。詳細については、以降の章で詳しく解説していきます。
2. 特定技能1号と2号の5つの違いを比較
特定技能制度には「1号」と「2号」の2つの区分があり、それぞれ在留資格としての特徴が大きく異なります。特定技能2号は、1号を修了した外国人材が移行できる、より上位の資格です。ここでは、両者の具体的な違いを5つの重要なポイントに絞って詳しく解説します。
2.1 違い1 在留期間の上限
特定技能1号と2号では、日本に滞在できる期間(在留期間)に大きな違いがあります。1号は有期雇用、2号は無期雇用を前提とした制度と理解すると分かりやすいでしょう。
| 区分 | 在留期間 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 通算で上限5年 |
| 特定技能2号 | 上限なし(更新が必要) |
特定技能1号は、在留期間が通算で最大5年と定められています。 許可された期間ごとに在留期間の更新が必要です。 一方、特定技能2号には在留期間の上限がありません。 定期的な更新手続きを行えば、事実上、無期限に日本で就労し続けることが可能となり、永住権の取得も視野に入ります。
2.2 違い2 求められる技能水準
特定技能1号と2号では、外国人材に求められる技能レベルが明確に区別されています。
| 区分 | 技能水準 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 特定産業分野における、相当程度の知識または経験 |
| 特定技能2号 | 特定産業分野における、熟練した技能 |
特定技能1号は、即戦力として業務に従事できるレベルが求められます。これは、技能実習2号を良好に修了するか、各分野が定める技能測定試験と日本語能力試験に合格することで証明されます。 対して特定技能2号は、現場のリーダーとして他の技能者を指導できるような、より高度で熟練した技能が要求されます。 そのため、特定技能2号の試験は1号よりも難易度が高く設定されています。
2.3 違い3 家族帯同の可否
家族と一緒に日本で生活できるかどうかは、外国人材にとって非常に重要な要素です。この点において、1号と2号には明確な違いがあります。
| 区分 | 家族帯同 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 原則として認められない |
| 特定技能2号 | 可能(配偶者と子に限る) |
特定技能1号では、原則として家族を日本に呼び寄せる「家族帯同」は認められていません。 ただし、人道上の配慮から例外的に許可されるケースもあります。 一方、特定技能2号では、要件を満たすことで配偶者と子を「家族滞在」ビザで日本に呼び寄せ、一緒に暮らすことが可能です。 ただし、帯同できるのは法律上の配偶者と子のみで、両親や兄弟姉妹は対象外です。
2.4 違い4 対象となる産業分野
特定技能外国人が就労できる産業分野は、1号と2号で異なります。2024年に特定技能1号の対象分野が拡大され、より多くの業種で受け入れが可能になりました。
2.4.1 特定技能1号の対象16分野
特定技能1号は、深刻な人手不足が課題となっている以下の16の産業分野で受け入れが可能です。
- ①介護
- ②ビルクリーニング
- ③工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
- ④建設
- ⑤造船・舶用工業
- ⑥自動車整備
- ⑦航空
- ⑧宿泊
- ⑨農業
- ⑩漁業
- ⑪飲食料品製造業
- ⑫外食業
- ⑬自動車運送業(2024年追加)
- ⑭鉄道(2024年追加)
- ⑮林業(2024年追加)
- ⑯木材産業(2024年追加)
2.4.2 特定技能2号の対象分野
特定技能2号の対象分野は、当初2分野でしたが、大幅に拡大されました。現在、上記の1号の対象分野のうち、「介護」を除く11分野が対象となっています。 2024年に追加された4分野は、現時点では2号の対象外です。
- 建設
- 造船・舶用工業
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
2.5 違い5 受入れ機関からの支援義務
特定技能外国人を受け入れる企業(受入れ機関)には、外国人が安定して日本で働き、生活するための支援を行う義務があります。この支援義務にも1号と2号で違いがあります。
| 区分 | 支援義務 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 義務的支援が必要 |
| 特定技能2号 | 義務的支援は不要 |
特定技能1号の外国人に対しては、受入れ機関(または委託を受けた登録支援機関)が、職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援を行う「義務的支援」を提供しなければなりません。 これには、事前ガイダンス、住居確保の支援、日本語学習機会の提供などが含まれます。 一方、特定技能2号は日本での生活に慣れた熟練人材とみなされるため、この義務的支援は不要となります。
3. 特定技能1号と2号の違いがわかる比較一覧表
特定技能1号と2号の主な違いを一覧表にまとめました。在留期間の上限や家族を呼び寄せられるかなど、両者には明確な差があります。特に特定技能2号は、より長期間日本で活躍したい外国人材にとって魅力的な在留資格と言えるでしょう。
| 比較項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算で上限5年 | 更新すれば上限なし(永住の可能性あり) |
| 技能水準 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能(試験等で確認) | 特定産業分野に属する熟練した技能(試験等で確認) |
| 日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力(試験等で確認) | 日本語能力を測る試験は不要 |
| 家族帯同 | 原則として認められない | 要件を満たせば可能(配偶者・子) |
| 対象分野 | 16分野 (介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業) ※2024年より4分野が追加され計16分野に拡大 | 11分野 (ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業) ※介護分野を除く |
| 受入れ機関等による支援 | 義務あり | 義務なし |
この表からわかるように、特定技能2号は在留期間が無期限となり、要件を満たせば家族と一緒に日本で暮らすことも可能です。 これは、熟練した技能を持つ外国人材に、より安定した環境で長く日本社会に貢献してもらうことを目的としています。詳細な情報については、出入国在留管理庁のウェブサイトをご確認ください。
4. 特定技能1号から2号へ移行するための要件と試験
特定技能1号の在留期間上限である5年が近づくにつれ、より長期的な日本での就労を目指し、特定技能2号への移行を検討する方が増えています。特定技能2号は、熟練した技能を持つ人材を対象とした在留資格であり、移行にはいくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、その具体的な要件と試験について詳しく解説します。
4.1 移行するための主要な要件
特定技能1号から2号へ移行するためには、主に「実務経験」と「技能試験の合格」という2つの大きな要件をクリアする必要があります。これらの要件は、外国人が日本でさらに高いレベルの業務を遂行できる能力があることを証明するために設けられています。
4.1.1 実務経験
特定技能2号の申請には、対象となる分野での実務経験が必須です。 求められる経験年数は分野によって異なりますが、多くの場合、複数の作業員を指導する立場(班長やライン長など)での2年以上の実務経験や、現場での3年以上の実務経験などが求められます。 この経験は、単に作業をこなすだけでなく、現場の工程管理や部下の指導といった監督者としての能力を証明するために重要です。 移行を希望する場合、受け入れ企業は実務経験を証明する書類を作成する必要があります。
4.1.2 技能試験の合格
特定技能2号の技能水準を測るための試験に合格しなければなりません。 この試験は、特定技能1号の試験よりも高度な専門知識と実践的なスキルを評価する内容となっています。 試験は各分野で実施され、筆記試験と実技試験で構成されることが一般的です。 なお、漁業分野・外食業分野を除き日本語能力試験(JLPT)の合格は原則として不要ですが、試験問題はすべて日本語で出題されるため、業務指示や管理業務を遂行できるレベルの日本語能力が実質的に求められます。
4.2 特定技能2号の対象分野と技能試験
2023年6月の閣議決定により、特定技能2号の対象分野は大幅に拡大され、介護を除く11分野で2号への移行が可能になりました。 これにより、多くの外国人材が日本で長期的なキャリアを築く道が開かれています。各分野で求められる技能試験の概要は以下の通りです。
| 対象分野 | 試験の概要 |
|---|---|
| 建設 | 建設分野特定技能2号評価試験、または技能検定1級等の合格。担当する工事種類に応じた試験を受験します。 |
| 造船・舶用工業 | 各業務区分(溶接、塗装など)に応じた技能検定1級または2級の実技試験への合格が必要です。 |
| 自動車整備 | 自動車整備分野特定技能2号評価試験、または自動車整備士技能検定試験2級以上の合格が求められます。 |
| 航空 | 空港グランドハンドリングまたは航空機整備の区分で、それぞれ「空港グランドハンドリング2号スキル測定試験」または技能検定1級等の合格が必要です。 |
| 宿泊 | 「宿泊分野特定技能2号技能測定試験」に合格する必要があります。接客や広報、企画などの管理者レベルの業務知識が問われます。 |
| 農業 | 「農業技能測定試験(2号)」に合格する必要があります。耕種農業と畜産農業の区分があり、管理者としての知識や安全衛生管理に関する内容が含まれます。 |
| 漁業 | 漁業と養殖業の区分で、それぞれ「漁業技能測定試験(2号)」に合格する必要があります。 |
| 飲食料品製造業 | 「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」に合格する必要があります。食品製造における工程管理や品質管理、安全衛生に関する高度な知識が問われます。 |
| 外食業 | 「外食業特定技能2号技能測定試験」に合格する必要があります。店舗運営や管理、人材育成に関する専門的な知識が求められます。 |
| ビルクリーニング | 「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」または「建築物環境衛生管理技術者」の免許取得が必要です。現場責任者としての能力が問われます。 |
| 工業製品製造業 | 「製造分野特定技能2号評価試験」に合格する必要があります。機械金属加工、電気電子機器組立てなど、選択する業務区分に応じた試験を受験します。 |
これらの試験に合格し、実務経験要件を満たした後、出入国在留管理局へ「在留資格変更許可申請」を行うことで、特定技能2号への移行手続きが進められます。 詳しくは、出入国在留管理庁の公式サイトで最新情報をご確認ください。
5. 特定技能の受け入れでよくある質問
5.1 技能実習との違いはなんですか
特定技能制度と技能実習制度は、どちらも外国人材を受け入れるための在留資格ですが、その目的が根本的に異なります。技能実習が日本の技術を開発途上国へ移転する「国際貢献」を目的としているのに対し、特定技能は国内の人手不足を解消するための「労働力の確保」を目的としています。 この目的の違いにより、従事できる業務の範囲や転職の可否などに差が生まれます。
主な違いは以下の表の通りです。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 国際貢献(技能移転) | 人手不足の解消(労働力の確保) |
| 転職の可否 | 原則として不可 | 可能 |
| 家族の帯同 | 不可 | 1号は不可、2号は要件を満たせば可能 |
| 受け入れ人数枠 | 有り(企業の規模による) | 一部の分野を除き制限なし |
より詳しい情報については、出入国在留管理庁のウェブサイトをご確認ください。
5.2 特定技能外国人の転職は可能ですか
はい、特定技能外国人は転職することが可能です。 ただし、在留資格変更許可申請が必要です。
ただし、異なる産業分野へ転職する場合には、新たにその分野の技能測定試験に合格する必要があります。 また、転職する際には、転職先の企業と新たに雇用契約を結んだ上で、地方出入国在留管理局にて在留資格の変更許可申請を行わなければなりません。 この申請が許可されるまでは、新しい職場で働くことはできないため、計画的に手続きを進めることが重要です。
6. まとめ
本記事では、深刻化する日本の人手不足への対策として注目される「特定技能」制度について、特に「特定技能1号」と「特定技能2号」の具体的な違いを5つの観点から徹底的に比較・解説しました。両者は同じ特定技能という枠組みにありながら、その目的や要件、待遇において全く異なる在留資格であることがお分かりいただけたかと思います。
改めて、5つの重要な違いを振り返ります。
- 在留期間:1号は通算5年が上限であるのに対し、2号には上限がなく、更新を続けることで永住権申請の道も開かれます。
- 技能水準:1号が「相当程度の知識又は経験」を要する業務であるのに対し、2号は現場監督レベルの「熟練した技能」が求められます。
- 家族帯同:1号は原則として認められませんが、2号は配偶者と子の帯同が可能です。
- 対象分野:1号は16分野と幅広い一方、2号は熟練技能が求められる11分野に限定されています(2026年1月時点)。
- 支援義務:受入れ機関(企業)は1号の外国人に対して「支援計画」に基づく幅広い支援が義務付けられますが、日本での生活に習熟していると見なされる2号では、この義務が原則として免除されます。
これらの違いの背景にある理由は、それぞれの在留資格が想定する役割にあります。特定技能1号は、特定分野における人手不足を補うための即戦力としての役割を担います。そのため、比較的幅広い分野で受け入れが行われる一方、在留期間は限定的です。対して特定技能2号は、熟練した技能を持つプロフェッショナル人材として、企業の基幹業務を担い、長期的に日本に定着してもらうことを目的としています。この長期定着という目的があるからこそ、在留期間の上限がなく、家族帯同も認められるのです。
また、特定技能1号から2号への移行パスが用意されている点は、企業と外国人材双方にとって大きなメリットです。企業は、1号で受け入れた人材を育成し、試験を経て2号人材として長期的に雇用し続けることが可能になります。外国人材にとっては、日本でキャリアを積み上げ、安定した生活基盤を築くための明確な道筋となります。
結論として、特定技能制度を効果的に活用するためには、自社の事業計画や人材戦略に基づき、1号と2号のどちらの要件が適しているのかを正確に理解し、判断することが不可欠です。制度は複雑で、法改正も頻繁に行われるため、受け入れを検討する際には、行政書士や登録支援機関といった専門家のサポートを得ながら、コンプライアンスを遵守した上で、計画的に進めることを強く推奨します。