コラム 特定技能

【2026年最新版】特定技能の外国人受け入れ完全ガイド|手続きから費用まで専門家が解説

行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

深刻化する人手不足を解決する有効な手段として、今まさに注目を集めているのが「特定技能」制度による外国人の受け入れです。しかし、「特定技能ってそもそも何?技能実習とどう違うの?」「受け入れ手続きが複雑そうで、何から手をつければいいか分からない」「費用は一体どれくらいかかるのか不安…」といった疑問や不安を抱えている経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。結論から申し上げますと、特定技能制度は、即戦力となる優秀な外国人材を確保し、貴社の人手不足を根本から解消するための極めて強力な選択肢です。そして、その受け入れを成功させる最大の鍵は、「信頼できるパートナー(登録支援機関)を選び、法律を遵守した適切な支援体制を構築すること」にあります。本記事は、2026年の最新情報に基づき、特定技能外国人の受け入れを検討しているすべての企業様に向けて、制度の基本から具体的な手続き、費用の詳細、さらには受け入れ後の成功の秘訣まで、専門家が網羅的に解説する完全ガイドです。この記事を最後までお読みいただくことで、特定技能制度の全体像を体系的に理解できるだけでなく、受け入れ準備から採用、各種申請、来日後の支援に至るまでの一連の流れをステップバイステップで明確に把握できます。人材紹介会社や登録支援機関に支払う手数料、在留資格申請にかかる実費といった初期費用から、給与や月々の支援委託費などの運営費用まで、コストの内訳も徹底的に解説。さらに、外国人材を受け入れることのメリットだけでなく、事前に知っておくべきデメリットとその対策、優良な登録支援機関を見極めるためのチェックリスト、受け入れ後に発生しがちな労務管理や文化摩擦といったトラブルの予防策と解決策まで、実践的なノウハウを提供します。この一本の記事が、特定技能に関する疑問を解消し、貴社が自信を持って外国人材受け入れの第一歩を踏み出すための参考になれば幸いです。

目次 非表示

1. 特定技能とは 外国人受け入れの基本を理解する

特定技能制度は、国内の深刻な人手不足を背景に、2019年4月から開始された在留資格制度です。この制度の目的は、特に人材確保が困難な状況にある特定の産業分野において、専門性・技能を有する外国人材を即戦力として受け入れることにあります。 これまでの就労ビザでは認められにくかった業務にも門戸を開き、日本経済の基盤を支える重要な役割を担っています。

1.1 特定技能制度の概要と目的

特定技能制度は、生産性の向上や国内人材確保のための努力を行ってもなお人材が不足する特定の産業分野を対象としています。 受け入れられる外国人は、一定の技能水準と日本語能力水準を満たしている必要があり、各分野が定める技能測定試験と日本語試験に合格するか、技能実習2号を良好に修了することでその能力を証明します。この制度は、単なる労働力の補充ではなく、日本の社会・経済の持続的な発展を図るための重要な国家戦略と位置づけられています。

1.2 技能実習制度との違いは何か

特定技能と技能実習は、外国人材を受け入れるという点で共通していますが、その目的と制度設計が根本的に異なります。技能実習制度が「日本で培った技能の母国への移転による国際貢献」を目的とする教育的な制度であるのに対し、特定技能制度は「人手不足の解消」を目的とした労働力確保のための制度です。 この目的の違いが、転職の可否や受け入れ人数制限などの差に繋がっています。

項目特定技能技能実習
目的人手不足の解消(労働力の確保)国際貢献(技能の移転)
転職の可否同一分野内での転職が可能原則として転職は不可
在留期間1号は通算5年、2号は上限なし最長5年
受け入れ人数枠一部の分野を除き、人数制限なし企業の規模に応じて人数枠あり
家族の帯同2号のみ要件を満たせば可能不可

1.3 在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」の違い

特定技能の在留資格は、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に区分されます。 「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を持つ外国人向けの資格です。 一方、「特定技能2号」は、同分野で長年の実務経験に裏打ちされた熟練した技能を持つ外国人向けの資格であり、より高度な水準が求められます。

項目特定技能1号特定技能2号
技能水準相当程度の知識または経験を要する技能(試験等で確認)熟練した技能(試験等で確認)
在留期間通算で上限5年上限なし(更新可能)
家族の帯同原則として不可要件を満たせば可能(配偶者・子)
支援体制受け入れ機関または登録支援機関による支援が必須支援は義務ではない

1.4 対象となる16の特定産業分野

特定技能外国人の受け入れが可能な特定産業分野は、制度開始当初の12分野から、2024年の閣議決定により4分野が追加され、現在は合計16分野となっています。 これにより、さらに幅広い業種で外国人材の活躍が期待されています。対象となる分野は以下の通りです。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 工業製品製造業
  • 建設
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業
  • 自動車運送業(2024年追加)
  • 鉄道(2024年追加)
  • 林業(2024年追加)
  • 木材産業(2024年追加)

なお、このうち「特定技能2号」の対象となるのは、2026年1月現在で介護分野などを除く11分野です。 詳細は、出入国在留管理庁の特定技能総合支援サイトで確認することができます。

2. 特定技能外国人の受け入れで企業に求められる要件

特定技能外国人を受け入れる企業は「特定技能所属機関」と呼ばれ、国が定める特定の基準を満たす必要があります。これらの要件は、外国人が日本で安定して働き、生活できるようにするためのものであり、法令遵守から支援体制の整備まで多岐にわたります。基準を満たしていない場合、受け入れが認められないだけでなく、後から不適合が判明すると受け入れ停止などの措置が取られる可能性もあります。

2.1 受け入れ機関(特定技能所属機関)の基準

特定技能所属機関となるためには、まず健全な事業運営を行っていることが大前提です。具体的には、以下の基準をすべて満たす必要があります。

  • 法令の遵守: 労働基準法や社会保険関連法、国税・地方税に関する法令を遵守していること。 社会保険料や税金の未納がないことが求められます。
  • 非自発的離職者の不存在: 会社の都合で日本人従業員を解雇(非自発的離職)した場合、その後1年間は特定技能外国人を受け入れることができません。
  • 行方不明者の不発生: 受け入れ企業の責任によって、過去1年以内に行方不明者を発生させていないこと。
  • 欠格事由への非該当: 過去5年以内に出入国管理法や労働関連法令で不正行為を行ったり、刑罰を受けたりしていないこと。 暴力団関係者なども欠格事由に該当します。
  • 契約の履行体制: 外国人との雇用契約を継続して履行できる、安定した経営基盤があること。

これらの基準は、外国人が不当な扱いや不安定な雇用に陥ることを防ぐための重要なセーフティネットです。

2.2 外国人材に支払う報酬に関する基準

特定技能外国人の報酬に関して最も重要な原則は、同じ業務に従事する日本人労働者と同等額以上であることです。 これは、国籍を理由とした不当な賃金差別を防ぐためのルールです。

比較対象となる日本人が社内にいない場合は、近隣地域の同業他社で同じような業務に従事する労働者の賃金水準を参考にします。 給与額は基本給だけでなく、通勤手当や住宅手当などの各種手当、賞与も含めて総合的に判断されます。 日本人従業員に賞与制度があるにもかかわらず、外国人従業員にだけ支給しない、といった差別的な取り扱いは認められません。

また、給与の支払いは、本人名義の預貯金口座への振り込みが原則とされており、現金手渡しによるトラブルや不透明な控除を防ぐ措置が取られています。

2.3 受け入れ後の支援体制に関する基準

特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、彼らが日本での仕事や生活に円滑に適応できるよう、「1号特定技能外国人支援計画」を策定し、実行する義務があります。 この支援は、自社で行うか、国に登録された「登録支援機関」にすべて、または一部を委託することが可能です。

法律で定められた「義務的支援」は以下の10項目に及び、その内容は多岐にわたります。 詳細は出入国在留管理庁の公式サイトでも確認できます。

支援項目主な内容
事前ガイダンス雇用契約の内容、日本のルールやマナーについて、本人が理解できる言語で説明します。
出入国時の送迎来日時には空港から住居まで、帰国時には空港の保安検査場まで同行します。
住居確保・生活契約支援アパートの連帯保証人になる、または社宅を提供するなどして住居を確保し、銀行口座開設や携帯電話の契約などを補助します。
生活オリエンテーション日本の交通ルール、公共機関の利用方法、災害時の対応など、生活に必要な情報を提供します。
公的手続きへの同行住民登録や社会保険、税金に関する手続きを役所で行う際に同行し、書類作成を補助します。
日本語学習の機会提供日本語教室の情報提供や、日本語学習教材の提供など、本人の希望に応じて学習機会を設けます。
相談・苦情への対応仕事や生活上の悩みについて、本人が理解できる言語で相談に応じ、適切な助言や指導を行います。
日本人との交流促進地域のイベントやお祭りの案内など、日本人との交流の場を設ける手助けをします。
転職支援会社の都合で雇用契約を解除する場合、次の受け入れ先を探す手伝いや推薦状の作成などを行います。
定期的な面談・通報支援責任者が3ヶ月に1回以上、本人とその上司と面談し、労働基準法違反などがあれば行政機関に通報します。

3. 【ステップ別】特定技能外国人の受け入れ手続きの流れ

特定技能外国人を受け入れるための手続きは、対象となる外国人が日本国内に在住しているか、海外に在住しているかによって流れが大きく異なります。ここでは、それぞれのケースに応じた手続きの基本的な流れを、ステップごとに分かりやすく解説します。

3.1 ステップ1 受け入れ準備と求人

まず、受け入れ機関(企業)は、どのような人材が必要かを明確にし、求人活動を開始します。求人は、ハローワークや民間の職業紹介事業者を通じて行うことが可能です。この段階で、受け入れる外国人が国内在住者か海外在住者かによって、その後の手続きルートが分岐します。

3.1.1 国内在住の外国人と海外在住の外国人の違い

手続きの最も大きな違いは、申請する在留資格の種類です。国内にすでに他の在留資格で滞在している外国人(留学生や技能実習修了者など)の場合は「在留資格変更許可申請」を、海外にいる外国人を新たに呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」を行います。 一般的に、国内在住者の方が採用から就労開始までの期間が短い傾向にあります。

対象者主な手続き申請場所
国内在住の外国人在留資格変更許可申請地方出入国在留管理官署
海外在住の外国人在留資格認定証明書交付申請地方出入国在留管理官署

3.2 ステップ2 採用決定と雇用契約の締結

採用する外国人が決定したら、受け入れ機関と外国人との間で「特定技能雇用契約」を締結します。この契約では、報酬額が同等の業務に従事する日本人と同等以上であることや、差別的な取り扱いをしないことなどが厳しく定められています。 契約内容は、外国人が十分に理解できる言語で説明する必要があります。

3.3 ステップ3 事前ガイダンスと健康診断の実施

雇用契約締結後、就労を開始する前に、業務内容、労働条件、日本での生活に関するルールなどを説明する「事前ガイダンス」を実施します。 また、外国人が健康な状態で就労できることを確認するために、所定の項目を満たした健康診断を受診してもらう必要があります。

3.4 ステップ4 在留資格認定証明書の交付申請

海外に在住している外国人を呼び寄せる場合に最も重要な手続きが、この在留資格認定証明書の交付申請です。 受け入れ機関が、必要書類を揃えて管轄の地方出入国在留管理官署に申請します。 主な必要書類には、申請書のほか、特定技能雇用契約書の写し、1号特定技能外国人支援計画書などがあります。 詳しくは出入国在留管理庁の公式サイトで確認してください。

3.5 ステップ5 在留資格認定証明書の交付と送付

申請が許可されると、出入国在留管理庁から「在留資格認定証明書」が交付されます。受け入れ機関は、この証明書の原本を速やかに海外にいる外国人本人へ送付します(電子申請の場合はメールで送付)。この証明書は、後のビザ(査証)申請で必要となる重要な書類です。

3.6 ステップ6 ビザ(査証)の申請と来日

在留資格認定証明書を受け取った外国人は、自国の日本国大使館または総領事館でビザ(査証)を申請します。 ビザが発給されたら、パスポートとビザ、在留資格認定証明書を持って来日します。日本の空港での上陸審査を経て、在留カードが交付され、正式に入国が許可されます。

3.7 ステップ7 受け入れ後の各種届出

外国人の受け入れ後、企業は様々な届出義務を負います。 外国人が就労を開始したら、一年ごとに受け入れ状況や支援の実施状況などをまとめた「定期届出」を出入国在留管理庁へ提出する必要があります。 このほか、雇用契約の変更や支援計画の変更があった場合などには、その都度「随時届出」が求められます。 これらの届出を怠ると罰則の対象となるため、確実な実施が不可欠です。

4. 特定技能外国人の受け入れにかかる費用を徹底解説

特定技能外国人の受け入れを検討する上で、費用の把握は極めて重要です。採用活動から受け入れ後の支援まで、様々な場面でコストが発生します。事前に全体像と内訳を理解し、適切な予算計画を立てることが、安定した雇用と事業運営の鍵となります。

費用は、採用する外国人が海外在住か国内在住かによっても変動します。 ここでは、受け入れまでにかかる「初期費用」と、雇用を継続する上で発生する「運営費用」に分けて、それぞれの内訳と相場を詳しく解説します。

4.1 初期費用(イニシャルコスト)の内訳

初期費用は、特定技能外国人を採用し、就労を開始するまでの一時的に発生する費用です。国内在住者か海外在住者かで総額は変わりますが、一般的に40万円~100万円以上が目安となります。 主な内訳は以下の通りです。

4.1.1 人材紹介会社への手数料

国内外の候補者の中から自社にマッチする人材を探し、採用を成功させるために人材紹介会社を利用する場合、成功報酬として手数料が発生します。相場は、採用する外国人1名あたり30万円~60万円程度ですが、求めるスキルや日本語能力、国籍によって変動します。 海外在住者を採用する場合は、現地の送り出し機関への手数料が別途必要になるケースもあります。

4.1.2 登録支援機関への支援委託費

特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、法律で定められた支援(義務的支援)を行う義務があります。 この支援を外部の登録支援機関に委託する場合、初期費用として各種申請サポートや事前ガイダンス、生活オリエンテーションなどの費用が発生します。 これらは月額の支援料とは別に、初期費用として5万円~15万円程度が目安となります。

4.1.3 在留資格申請関連の費用

外国人が日本で就労するためには、在留資格の取得が必須です。この手続きを国家資格者である行政書士に依頼する場合、その報酬が発生します。自社で申請することも可能ですが、書類の複雑さから専門家へ依頼する企業が少なくありません。 費用は依頼する内容によって異なりますが、在留資格認定証明書の交付申請で10万円~20万円程度が相場です。 これに加えて、申請時には出入国在留管理庁に支払う収入印紙代(6,000円)などの実費が必要です。

4.2 運営費用(ランニングコスト)の内訳

運営費用は、特定技能外国人が入社してから継続的に発生する費用です。最も大きな割合を占めるのは給与ですが、それ以外にも特有のコストがかかります。

4.2.1 本人に支払う給与と社会保険料

特定技能外国人への報酬は、同等の業務に従事する日本人労働者と同等額以上であることが法律で厳しく定められています。 これに加えて、日本人従業員と同様に、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険といった社会保険への加入が義務付けられており、その保険料の企業負担分が発生します。

4.2.2 登録支援機関への月額支援料

登録支援機関に支援業務を委託する場合、初期費用とは別に月額の委託料が発生します。これには、定期的な面談の実施や、公的手続きの同行、相談・苦情への対応などが含まれます。 外国人1名あたり月額2万円~4万円が相場とされています。

4.3 活用できる助成金や補助金制度

外国人材の受け入れや職場定着を促進するため、国や地方自治体は様々な助成金・補助金制度を用意しています。これらを活用することで、企業の費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。

代表的なものに、厚生労働省が管轄する「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」があります。 これは、外国人労働者のための就労環境整備(通訳費、翻訳料、研修など)にかかった経費の一部を助成する制度です。 支給を受けるためには、就労環境整備計画を作成し、管轄の労働局へ提出するなど、定められた要件を満たす必要があります。

費用区分項目費用相場備考
初期費用人材紹介手数料300,000円~600,000円採用する人材のスキル等により変動。
登録支援機関への初期費用50,000円~150,000円支援計画作成、事前ガイダンス等。
在留資格申請費用(行政書士)100,000円~200,000円別途、印紙代等の実費が必要。
運営費用給与・社会保険料日本人と同等額以上法律で定められた基準。
登録支援機関への月額支援料月額 20,000円~40,000円支援内容により変動。

5. 特定技能外国人の受け入れにおける企業のメリットとデメリット

特定技能制度を活用した外国人の受け入れは、多くの企業にとって人手不足を解消する有効な手段となり得ます。しかし、メリットを最大限に享受し、円滑な受け入れを実現するためには、デメリットとその対策についても深く理解しておくことが不可欠です。ここでは、企業が外国人材を受け入れる際の具体的なメリットと、知っておくべきデメリットへの対策を詳しく解説します。

5.1 外国人材を受け入れる3つの大きなメリット

特定技能外国人を受け入れることで、企業は主に「労働力の確保」「社内の活性化」「グローバル化への対応」という3つの大きなメリットを得ることが期待できます。

5.1.1 メリット1:深刻な人手不足の解消と即戦力の確保

特定技能制度活用の最大のメリットは、何と言っても人手不足の解消です。 特に、採用が困難な状況にある特定産業分野において、技能試験と日本語能力試験に合格した、一定の専門性とスキルを持つ即戦力人材を確保できることは、事業の維持・拡大に直結します。 技能実習制度とは異なり、労働力確保を直接の目的としているため、企業のニーズに合った人材を迅速に補充することが可能です。 また、介護や建設分野を除き、受け入れ人数の上限がない点も大きな魅力です。

5.1.2 メリット2:組織の活性化とダイバーシティの推進

異なる文化や価値観を持つ外国人材が職場に加わることで、日本人従業員への新たな刺激となり、組織全体の活性化が期待できます。 新しい視点や発想が生まれることで、業務プロセスの改善や新サービスの創出につながる可能性も秘めています。多様性を受け入れる企業文化(ダイバーシティ&インクルージョン)を醸成することは、企業の創造性を高め、長期的な成長の土台となります。

5.1.3 メリット3:海外展開への足がかりとグローバル化

将来的に海外進出を視野に入れている企業にとって、特定技能外国人の受け入れは大きな一歩となります。受け入れた人材の母国に対する理解を深め、現地の言語や商習慣に精通した人材を確保することで、将来の海外事業展開における強力なブリッジ役として活躍が期待できます。 まずは国内で強固な関係を築くことが、グローバル市場への挑戦を成功させる鍵となるでしょう。

5.2 知っておくべき2つのデメリットと対策

メリットがある一方で、言語や文化の違いから生じる課題や、手続き・支援にかかるコストといったデメリットも存在します。しかし、これらは事前の準備と適切な対策によって乗り越えることが可能です。

デメリット具体的な対策
コミュニケーションや文化・習慣の違いによる摩擦社内マニュアルや掲示物の多言語化、図や写真を用いた「やさしい日本語」での伝達を徹底する。 日本人従業員向けに異文化理解研修を実施し、相互理解を促進する。 母国語で相談できる窓口を設置したり、定期的な面談を実施したりして、悩みや不安を早期に把握し解消する体制を整える。
手続きの煩雑さと支援コストの発生在留資格の申請や更新、各種届出などの複雑な事務手続きは、行政書士などの専門家に相談する。 1号特定技能外国人への支援計画の作成・実施は、専門知識を持つ登録支援機関に委託することで、企業の負担を大幅に軽減できる。 国や地方自治体が提供する助成金・補助金制度(人材確保等支援助成金など)を積極的に活用し、コスト負担を抑える。

特定技能外国人の受け入れは、単なる労働力不足の解決策にとどまりません。デメリットを正しく理解し、適切な対策を講じることで、それは企業に新たな価値をもたらし、持続的な成長を促すための重要な経営戦略となります。事前の計画と準備を徹底し、全社的な協力体制を築くことが成功への鍵です。

6. 登録支援機関の役割と選び方のポイント

特定技能外国人の受け入れにおいて、自社で支援体制を整えることが難しい企業にとって、登録支援機関は不可欠なパートナーです。 この章では、登録支援機関の具体的な役割と、数多くの機関の中から自社に最適なパートナーを選ぶためのポイントを解説します。

6.1 登録支援機関とは 義務的支援と任意的支援

登録支援機関とは、出入国在留管理庁長官の登録を受け、特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)に代わって、支援計画の作成や実施を行う法人のことです。 支援には、法律で定められた「義務的支援」と、各機関が独自に提供する「任意的支援」の2種類があります。

受け入れ企業は、自社で支援を行うか、登録支援機関に全ての支援を委託するかを選択できます。 登録支援機関に委託することで、法令を遵守した専門的なサポートを受けられ、企業は本来の事業に集中できるというメリットがあります。

6.1.1 必ず実施すべき「義務的支援」

法律で定められている10項目の支援内容です。 これらは特定技能1号の外国人が日本で安定的・円滑に活動するために必須のサポートです。

支援項目主な支援内容
事前ガイダンス雇用契約の内容、日本のルール、入国手続きなどについて、本人が理解できる言語で説明します。
出入国する際の送迎来日時は空港から住居や事業所へ、帰国時は空港の保安検査場まで送迎・同行します。
住居確保・生活に必要な契約支援連帯保証人になる、社宅を提供するなど住居の確保を支援し、銀行口座開設や携帯電話の契約などを補助します。
生活オリエンテーション日本の交通ルール、公共機関の利用方法、ごみの分別、災害時の対応など、生活に必要な情報を提供します。
公的手続き等への同行必要に応じて、市区町村役場での住民登録や社会保険、税金に関する手続きに同行し、書類作成を補助します。
日本語学習の機会の提供日本語教室の案内や、オンライン教材の情報提供など、日本語を学ぶための機会を提供します。
相談・苦情への対応仕事や生活上の悩みについて、本人が理解できる言語で相談に応じ、必要な助言や指導を行います。
日本人との交流促進地域のお祭りやイベントの案内、自治会への紹介など、日本人との交流の場に参加できるよう支援します。
転職支援(会社都合の離職時)受け入れ企業の都合で雇用契約を解除する場合、次の受け入れ先を探す手伝いや推薦状の作成などを行います。
定期的な面談・行政機関への通報3ヶ月に1回以上、本人とその上司などと面談し、労働基準法違反などがあれば行政機関へ通報します。

6.1.2 付加価値となる「任意的支援」

任意的支援は法律上の義務ではありませんが、外国人材の定着率向上や、より円滑な受け入れのために登録支援機関が独自に提供するサービスです。 例えば、資格取得の学習サポート、より高度な日本語教育プログラムの提供、企業内での異文化理解研修の実施などが挙げられます。 これらの支援が充実しているかは、機関を選ぶ上での一つの判断材料となります。

6.2 優良な登録支援機関を選ぶためのチェックリスト

全国には1万を超える登録支援機関が存在します。 その中から信頼できるパートナーを選ぶために、以下の6つのポイントを確認しましょう。

  • 1. 正式な登録と行政処分の有無
    出入国在留管理庁のウェブサイトで登録支援機関登録簿に掲載されているか、また過去に行政指導などを受けていないかを確認します。 これは最も基本的な確認事項です。
  • 2. 支援実績と専門性
    自社と同じ業種での支援実績が豊富か、また、受け入れたい外国人の国籍に対応しているかを確認します。 定着率などの具体的な数値を開示している機関は、支援の質に自信があると考えられます。
  • 3. 多言語対応とコミュニケーション体制
    外国人本人の母国語で対応できるスタッフが在籍しているかは非常に重要です。 また、企業担当者との報告・連絡・相談がスムーズに行えるか、レスポンスの速さなども確認しましょう。
  • 4. 明確な料金体系
    月々の支援委託費のほか、どの支援に、いくら費用がかかるのかが明確になっているかを確認しましょう。 複数の機関から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが失敗を防ぐ鍵です。
  • 5. 支援内容の具体性と柔軟性
    義務的支援はもちろん、どのような任意的支援を提供しているかを確認します。 画一的なサービスだけでなく、企業の状況や外国人の個性に合わせて柔軟に対応してくれるかどうかも重要なポイントです。
  • 6. 人材紹介から一括で対応可能か
    機関によっては、人材の募集・紹介から、在留資格申請、入社後の支援までを一括して(ワンストップで)依頼できる場合があります。 これにより、手続きがスムーズに進み、担当者の負担を大幅に軽減できます。

これらの点を総合的に評価し、長期的に良好な関係を築ける登録支援機関を選ぶことが、特定技能外国人の受け入れを成功に導きます。

7. 特定技能外国人の受け入れ成功のための注意点

特定技能外国人の受け入れを成功させ、企業と外国人材の双方が良好な関係を築くためには、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、労務管理、コミュニケーション、そしてトラブル対応の3つの側面に焦点を当てて解説します。

7.1 受け入れ後の労務管理とコンプライアンス

外国人材を雇用する上で、日本の労働関係法令(労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法など)を遵守することは絶対条件です。 これらは国籍を問わず、すべての労働者に等しく適用されます。特に以下の点には細心の注意を払い、適切な労務管理体制を構築してください。

  • 労働条件の明確化: 賃金、労働時間、休憩、休日などの基本的な労働条件は、外国人が十分に理解できる言語で作成した雇用契約書で明確に示し、双方合意の上で契約を締結します。
  • 各種届出の履行: 特定技能外国人を受け入れた企業は、一年ごとに就労状況や支援の実施状況などを報告する「定期届出」や、雇用契約の変更時などに行う「随時届出」を出入国在留管理庁へ提出する義務があります。 これらの届出を怠ると罰則の対象となるため、必ず期限内に実施してください。
  • コンプライアンス違反のリスク: 許可されていない業務に従事させる「資格外活動」や、賃金未払い、社会保険の未加入といった法令違反は、企業の信頼を失うだけでなく、特定技能外国人の受け入れ停止や罰金などの厳しい処分につながる可能性があります。

詳細な届出義務については、出入国在留管理庁のウェブサイトで最新の情報を確認することをお勧めします。

7.2 文化や習慣の違いを乗り越えるコミュニケーション

言語の壁や文化・習慣の違いは、誤解や人間関係のトラブルを引き起こす主な原因です。 受け入れを成功させるためには、企業側が積極的にコミュニケーションの橋渡しをすることが不可欠です。

  • 「やさしい日本語」の活用: 業務指示や連絡事項は、専門用語や曖昧な表現を避け、簡潔で分かりやすい「やさしい日本語」を心がけましょう。図や写真を用いたマニュアルを作成することも有効です。
  • 定期的な面談の実施: 支援責任者や直属の上司が定期的に面談を行い、仕事の悩みや生活上の不安を早期に把握し、解決に努めることが重要です。 これにより、本人の孤立を防ぎ、離職率の低下にも繋がります。
  • 異文化理解の促進: 宗教上の理由による食事(ハラルなど)や礼拝への配慮、日本人従業員向けの異文化理解研修の実施など、会社全体で多文化共生への理解を深める姿勢が求められます。

7.3 よくあるトラブル事例とその解決策

特定技能外国人の受け入れにおいて発生しがちなトラブルと、その対策を事前に把握しておくことで、問題の発生を未然に防ぎ、迅速に対応することが可能になります。 以下に代表的な事例と解決策をまとめました。

トラブル事例主な原因解決策・予防策
失踪・突然の転職・賃金や労働条件への不満
・人間関係の悩み、職場での孤立
・より良い条件を求めての移動
・雇用契約内容の丁寧な説明と遵守
・定期的な面談による不満のヒアリング
・相談しやすい窓口の設置と周知
業務指示の誤解やミス・言語の壁、専門用語の不理解
・「察する」文化による曖昧な指示
・指示内容の理解度確認不足
・「やさしい日本語」の使用
・図や実演を交えた具体的な指示
・指示後に内容を復唱させて理解度を確認
無断欠勤や遅刻・日本の労働慣行への理解不足
・体調不良時の連絡方法が分からない
・文化的な時間感覚の違い
・就業規則(特に勤怠ルール)を母国語で説明
・緊急時の連絡先と方法を明確に伝える
・日本のビジネスマナーに関する研修を実施
同僚との人間関係・コミュニケーション不足
・文化や価値観の違いによる誤解
・一方的な指導や高圧的な態度
・メンター(相談役)制度の導入
・社内交流イベントの開催
・日本人従業員への異文化理解教育

これらの注意点を踏まえ、特定技能外国人を単なる「労働力」としてではなく、共に働く「仲間」として受け入れる姿勢が、受け入れ成功の最も重要な鍵となります。

8. まとめ

本記事では、2026年最新情報として、特定技能制度を活用した外国人の受け入れについて、制度の基本から具体的な手続き、費用、成功のポイントまでを網羅的に解説しました。深刻化する人手不足に直面する多くの企業にとって、特定技能外国人の受け入れは、事業の維持・発展に不可欠な選択肢となりつつあります。

特定技能制度は、即戦力となる人材を確保できるという大きなメリットがある一方で、技能実習制度とは目的も要件も大きく異なります。特に「特定技能1号」と「特定技能2号」では在留期間や家族帯同の可否などが違うため、自社のニーズに合った人材像を明確にすることが最初のステップです。また、受け入れ企業には、日本人従業員と同等以上の報酬支払いや、安定的かつ継続的な支援体制の構築が法律で義務付けられています。これらの基準を満たせなければ、そもそも外国人材を受け入れることはできません。

受け入れ手続きは、求人から始まり、雇用契約の締結、在留資格認定証明書の申請、そして来日後の各種届出まで、複数のステップを踏む必要があります。特に、国内在住者と海外在住者では手続きの流れが異なる点に注意が必要です。これらの複雑なプロセスを円滑に進めるためには、事前の計画と準備が成功の鍵を握ります。費用面においても、人材紹介会社への手数料や登録支援機関への委託費といった初期費用だけでなく、給与や月々の支援委託料などの運営費用も正確に把握し、長期的な資金計画を立てることが重要です。

特定技能外国人の受け入れを成功させるための最も重要な結論は、「信頼できるパートナーと連携すること」です。特に、外国人材への支援計画の作成・実施は専門的な知識を要するため、多くの企業にとって自社のみで全ての義務を果たすのは現実的ではありません。そこで重要な役割を果たすのが「登録支援機関」です。住居の確保や公的手続きの補助、日本語学習の機会提供といった義務的支援を委託することで、企業は受け入れにかかる負担を大幅に軽減し、本来の事業に集中できます。優良な登録支援機関を選ぶことが、受け入れ後のトラブルを未然に防ぎ、外国人人材の定着率を高めることに直結します。

特定技能外国人の受け入れは、単なる労働力の確保ではありません。異なる文化や価値観を持つ人材を仲間として迎え入れ、共に成長していくという視点が不可欠です。本記事で解説した手続き、費用、注意点をしっかりと理解し、適切な準備と支援体制を整えることで、特定技能制度は貴社の未来を切り拓く強力な一手となるでしょう。まずは自社が受け入れ要件を満たしているかを確認し、信頼できる登録支援機関に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

  • この記事を書いた人

行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

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