
ビルクリーニング業界で深刻化する人手不足にお悩みの経営者様、人事担当者様へ。清掃スタッフの高齢化や若手人材の採用難に直面し、「求人を出しても応募が来ない」「事業の維持・拡大が難しい」といった課題を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。その有効な解決策の一つとして注目されているのが、外国人材を雇用できる「特定技能」制度です。しかし、いざ導入を検討しようとしても、「特定技能ってそもそも何?技能実習とどう違うの?」「自社で受け入れられるのか、要件が複雑でわからない」「採用からビザ申請までの手続きが煩雑そう」「費用は一体どれくらいかかるのか」など、次々と疑問が湧き上がり、何から手をつければ良いのか途方に暮れてしまうケースは少なくありません。この記事は、まさにそうしたお悩みを抱える企業様のために、特定技能「ビルクリーニング」に関するあらゆる情報を一元化し、網羅的に解説するものです。結論から申し上げますと、特定技能「ビルクリーニング」は、制度を正しく理解し、計画的に準備を進めることで、貴社の人手不足問題を根本から解決し、事業成長を後押しする極めて強力な手段となり得ます。その成功の鍵は、受け入れ企業の要件や対象人材の基準を正確に把握し、煩雑な行政手続きをミスなく実行することにあります。本記事では、特定技能制度の基礎知識から、企業と外国人材それぞれに求められる要件、国内・海外からの具体的な採用フロー、煩雑なビザ申請の手順と必要書類、採用と雇用にかかる費用の内訳、そして採用後に企業が果たすべき支援義務まで、専門家の視点から一つひとつ丁寧に、そして具体的に解説していきます。この記事を最後までお読みいただくことで、特定技能「ビルクリーニング」の全体像を体系的に理解できるだけでなく、貴社が今すぐ何をすべきか、採用活動の第一歩を踏み出すための具体的なアクションプランを明確に描けるようになります。
1. 特定技能「ビルクリーニング」の基礎知識
ビルクリーニング業界は、快適で衛生的な環境を維持するために不可欠な社会インフラですが、深刻な人手不足に直面しています。この課題を解決する有効な手段として、2019年4月に導入された在留資格「特定技能」が注目されています。本章では、特定技能「ビルクリーニング」の基本的な仕組みや業務内容について、わかりやすく解説します。
1.1 特定技能制度の全体像とビルクリーニング分野の位置づけ
特定技能制度は、国内の人材確保が困難な状況にある特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることを目的とした在留資格です。ビルクリーニング分野も、その重要性と人手不足の深刻さから、この特定産業分野の一つに指定されています。
1.2 特定技能「ビルクリーニング」で従事できる具体的な業務内容
特定技能「ビルクリーニング」の外国人が従事できる業務は、法律で「建築物内部の清掃」と定められています。具体的には、商業施設、オフィスビル、ホテル、病院、空港など、多数の人が利用する建築物の内部を対象とした清掃作業です。
主な業務内容は以下の通りです。
- 居住部分や共用部分(廊下、階段、トイレなど)の清掃
- 床・カーペットの洗浄、ワックスがけ
- 窓ガラスや外壁の清掃
- 備品(トイレットペーパー、石鹸など)の管理・補充
- ゴミの分別・収集
一方で、個人宅の清掃(ハウスクリーニング)や、ビルメンテナンスにおける設備管理(電気、空調など)の業務に従事することは認められていません。受け入れ企業は、外国人がこれらの定められた業務に専念できるよう、適切な業務管理を行う必要があります。
1.3 技能実習制度との違いをわかりやすく比較
特定技能とよく比較される制度に「技能実習」があります。両者は外国人材を受け入れる点では共通していますが、その目的や要件は大きく異なります。企業が自社の状況に合わせて適切な制度を選択できるよう、主な違いを理解しておくことが重要です。
| 比較項目 | 特定技能 | 技能実習 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 人手不足が深刻な分野における労働力の確保 | 技能・技術・知識の移転による国際貢献 |
| 業務内容 | 定められた範囲の労働(清掃作業) | 技能実習計画に基づく技能等の修得活動 |
| 転職の可否 | 同一分野内での転職が可能 | 原則として転職は不可 |
| 在留期間 | 1号:通算で上限5年 | 最長5年 |
| 受入れ人数枠 | 事業所ごとの上限なし | 企業の常勤職員数に応じた上限あり |
| 家族帯同 | 原則不可 | 不可 |
このように、技能実習が「実習生」として技術を学ぶことを目的とするのに対し、特定技能は即戦力となる「労働者」を確保するための制度であるという根本的な違いがあります。
2. 特定技能外国人を受け入れる企業の要件
特定技能「ビルクリーニング」分野で外国人材を受け入れる企業(受入れ機関)は、特定技能制度で定められた共通の基準と、ビルクリーニング分野特有の基準の両方を満たす必要があります。ここでは、企業がクリアすべき具体的な要件を詳しく解説します。
2.1 受入れ機関(企業)が満たすべき基準
まず、ビルクリーニング分野で外国人を受け入れる大前提として、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」に規定される「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けている事業者でなければなりません。この登録は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事に対して行います。
その上で、すべての分野に共通する以下の基準を満たすことが求められます。これらの基準は、外国人が安定して日本で働き、生活できる環境を保証するための重要なルールです。
| カテゴリ | 主な基準内容 |
|---|---|
| 法令遵守 | 労働基準法や社会保険関連法規、税法などを遵守していること。過去5年以内に出入国管理法や労働関連法令に関する重大な違反(不正行為)がないこと。 |
| 雇用契約 | 外国人材と結ぶ雇用契約が適切であること(例:日本人と同等以上の報酬額、一時帰国を希望した場合の休暇取得など)。 |
| 支援体制 | 受け入れる外国人材に対する支援計画を策定し、それを適切に実施できる体制が整っていること。自社での支援が難しい場合は、登録支援機関に委託することも可能です。 |
| 財務状況 | 事業を安定的・継続的に営むことができる、健全な財務状況であること。 |
| 欠格事由 | 禁錮以上の刑に処せられた、暴力団関係者であるなど、出入国在留管理庁が定める欠格事由に該当しないこと。 |
2.2 建築物清掃業特定技能協議会への加入義務
特定技能外国人を受け入れる企業は、厚生労働省が設置・運営する「建築物清掃業特定技能協議会」への加入が義務付けられています。この協議会は、制度の適正な運用と、受け入れ企業および外国人材の保護を目的としています。
特定技能外国人の受入の前に協議会へ加入する必要があります。協議会への加入後は、協議会が行う調査への協力や、必要な情報提供など、構成員としての義務を果たすことが求められます。
協議会の詳細や加入手続きについては、厚生労働省のウェブサイトで最新の情報を確認してください。
(参考:厚生労働省「ビルクリーニング分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)について」)
3. 採用対象となる外国人材の要件
特定技能「ビルクリーニング」分野で外国人材を採用するためには、候補者となる外国人が「技能水準」と「日本語能力水準」という2つの要件を満たしている必要があります。これらの要件は、試験に合格することで証明されます。ただし、特定の条件を満たすことで試験が免除されるケースもあります。
3.1 技能水準を証明する「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」
特定技能外国人としてビルクリーニング業務に従事するには、その分野で求められる専門的な技能を持っていることを証明しなければなりません。この証明のために実施されるのが「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」です。
この試験は、建築物内の清掃作業において、指示された清掃方法を理解し、安全かつ衛生的に業務を遂行できるレベルにあるかを判断するものです。試験は学科試験と実技試験で構成されています。
| 試験区分 | 主な試験内容 |
|---|---|
| 学科試験 | 清掃作業の基本的な知識、安全衛生、資機材の取り扱いなどに関する知識を問う問題が出題されます。写真やイラストを見て作業手順の正誤を判断する形式です。 |
| 実技試験 | 実際に清掃用具を使い、指定された作業を行います。床面の定期清掃、ガラス面の定期清掃、洋式大便器の日常清掃など、3つの課題を通して実践的なスキルが評価されます。 |
試験の詳細は、試験実施機関である公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の公式サイトで確認できます。
なお、ビルクリーニング分野の技能実習2号を良好に修了した外国人は、この技能評価試験が免除されます。そのため、技能実習からの移行組は、試験を受けることなく特定技能ビザを申請することが可能です。
3.2 求められる日本語能力の水準
特定技能外国人には、業務上および日常生活で必要なコミュニケーションが取れる日本語能力が求められます。ビルクリーニング分野では、以下のいずれかの試験に合格することで、その水準を満たしていると判断されます。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2レベル以上に合格
- 日本語能力試験(JLPT)でN4以上に合格
どちらか一方の試験に合格すれば、日本語能力の要件をクリアしたことになります。これらの試験は、ある程度基礎的な日本語を理解できるレベル(A2レベルまたはN4)を証明するものです。
技能水準と同様に、ビルクリーニング分野の技能実習2号を良好に修了した外国人は、この日本語能力試験も免除されます。したがって、技能実習修了者は、技能試験と日本語試験の両方を受ける必要がなく、スムーズに特定技能へ移行できるという大きなメリットがあります。
4. 特定技能「ビルクリーニング」人材の採用方法
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を採用するには、大きく分けて「国内在住者を採用する方法」と「海外から新たに呼び寄せる方法」の2つのルートがあります。それぞれで手続きの流れや注意点が異なるため、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。ここでは、各採用方法の具体的な流れと、専門機関を活用するメリットについて解説します。
4.1 国内在住の留学生や技能実習修了者を採用する流れ
すでに日本国内に在留している留学生や、技能実習を修了した外国人を採用する方法です。候補者と直接コミュニケーションが取りやすく、比較的スムーズに採用プロセスを進められるのが特徴です。特に、ビルクリーニング分野の技能実習2号を良好に修了した人材は、特定技能に必要な技能試験と日本語試験が免除されるため、企業にとっては大きなメリットとなります。
国内採用の基本的なフローは以下の通りです。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 求人・募集 | ハローワークや人材紹介会社、自社サイトなどで求人情報を公開し、候補者を募集します。 | 在留資格や日本語レベルなど、求める人材要件を明確にします。 |
| 2. 面接・選考 | 書類選考や面接を実施し、候補者の技能レベルや人柄、就労意欲などを確認します。 | 業務内容や労働条件について、誤解が生じないよう丁寧に説明することが重要です。 |
| 3. 試験の確認・受験 | 候補者が特定技能の試験(技能・日本語)に合格しているか確認します。未合格の場合は受験を促します。 | 技能実習2号修了者は試験が免除されます。留学生などは合格が必須です。 |
| 4. 雇用契約の締結 | 労働条件を明示した雇用契約を締結します。母国語での説明や翻訳版の交付が推奨されます。 | 報酬額は、同等の業務に従事する日本人と同等以上である必要があります。 |
| 5. 在留資格変更許可申請 | 地方出入国在留管理局へ「在留資格変更許可申請」を行います。企業の支援体制を示す「支援計画書」も提出します。 | 申請から許可までは1~3ヶ月程度かかるのが一般的です。 |
| 6. 就労開始 | 在留資格の変更が許可され、新しい在留カードが交付されたら、正式に就労を開始できます。 | 入社後のオリエンテーションや支援を計画通りに実施します。 |
4.2 海外から新たに人材を呼び寄せる流れ
海外に在住している外国人を、新たに日本へ呼び寄せて採用する方法です。多くの候補者から選考できる可能性がありますが、国内採用に比べて手続きが複雑で、時間も長くかかる傾向にあります。現地の送出機関や日本の人材紹介会社と連携して進めるのが一般的です。
海外からの採用フローは以下の通りです。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 求人・募集 | 日本の人材紹介会社や現地の送出機関を通じて候補者を募集します。 | 国によってルールが異なるため、対象国の制度に詳しい専門機関との連携が不可欠です。 |
| 2. 面接・選考 | オンライン面接などで選考を行います。 | 通訳を介して、企業の魅力や業務内容を正確に伝えます。 |
| 3. 試験の受験 | 候補者は現地で実施される特定技能の試験(技能・日本語)を受験し、合格する必要があります。 | 試験は各国で定期的に実施されています。日程は公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のウェブサイトで確認できます。 |
| 4. 雇用契約の締結 | 合格者と雇用契約を締結します。 | 国内採用と同様に、日本人と同等以上の報酬水準が求められます。 |
| 5. 在留資格認定証明書交付申請 | 日本の地方出入国在留管理局へ「在留資格認定証明書」の交付を申請します。 | 申請から交付まで2~3ヶ月程度かかります。 |
| 6. ビザ(査証)申請・来日 | 交付された証明書を本人へ送付し、本人が現地の日本大使館・領事館でビザを申請します。ビザが発給され次第、来日します。 | 航空券や住居の手配などを企業側でサポートします。 |
| 7. 就労開始 | 空港への出迎え、住民登録、銀行口座開設などの生活サポートを行い、就労を開始します。 | スムーズに日本での生活をスタートできるよう、きめ細やかな支援が重要です。 |
4.3 人材紹介会社や登録支援機関を活用するメリット
特定技能外国人の採用や雇用管理には、専門的な知識と多くの手続きが必要です。自社だけで全て対応するのが難しい場合は、人材紹介会社や登録支援機関といった外部の専門機関を活用することをおすすめします。
登録支援機関とは、受入れ企業に代わって、特定技能外国人への支援計画を作成・実施する機関として出入国在留管理庁に登録された組織です。詳しくは出入国在留管理庁のウェブサイトで確認できます。
これらの専門機関を活用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 採用活動の効率化: 自社の希望条件に合った人材を国内外から効率的に探すことができます。
- 手続きの負担軽減: 複雑で専門知識が求められる在留資格申請書類の作成や申請取次を代行してもらえます。
- ミスマッチの防止: 候補者の技能や日本語能力、適性をプロの視点で見極めるため、採用後のミスマッチを減らすことができます。
- 法令遵守の徹底: 特定技能制度に関する最新の法令やルールに基づいたサポートを受けられるため、コンプライアンス違反のリスクを低減できます。
- 採用後の定着支援: 採用後の生活サポートや定期的な面談など、法律で定められた支援義務を委託できるため、外国人が安心して働き続けられる環境を構築できます。
特に初めて特定技能外国人を受け入れる企業や、社内に専門部署がない企業にとって、これらの専門機関は成功のための強力なパートナーとなり得ます。自社の状況に応じて、必要なサービスを選択し、活用を検討しましょう。
5. 【手順解説】特定技能ビザ申請の全体像と必要書類
特定技能「ビルクリーニング」で外国人を採用するには、出入国在留管理庁への在留資格(ビザ)申請が不可欠です。手続きは複雑に思えるかもしれませんが、全体の流れとポイントを掴めばスムーズに進めることができます。ここでは、採用決定から就労開始までの具体的な手順と必要書類をわかりやすく解説します。
5.1 採用決定から就労開始までのロードマップ
特定技能外国人の採用プロセスは、採用する人材が海外にいるか、国内にいるかによって手続きが異なります。いずれの場合も、採用活動と並行して、ビザ申請の準備を進めることが時間的ロスをなくすポイントとなります。まずは全体像を把握しましょう。
- 人材の募集・採用選考:国内または海外で人材を探し、面接等を実施します。
- 雇用契約の締結:労働条件などを明記した特定技能雇用契約を結びます。
- 事前ガイダンスの実施:業務内容、労働条件、日本での生活などについて、対面またはオンラインで説明します。
- 支援計画の策定:法律で定められた10項目の支援内容について、具体的な支援計画を作成します。(登録支援機関に委託可能)
- 出入国在留管理庁への申請:管轄の地方出入国在留管理局へ在留資格の申請を行います。
- 海外から呼び寄せる場合:在留資格認定証明書交付申請
- 国内在住者を採用する場合:在留資格変更許可申請
- 在留資格の許可・交付:審査を経て許可が下ります。
- 就労開始:海外からの人材は来日後、国内の人材は新しい在留カード受領後、就労を開始できます。
5.2 海外から新たに人材を呼び寄せる場合 在留資格認定証明書交付申請
海外に在住している外国人を日本に呼び寄せて採用する場合には、まず「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility: COE)」の交付を受ける必要があります。これは、その外国人が日本の在留資格の条件に適合していることを法務大臣が事前に証明する書類です。
申請は、受入れ機関(企業)の職員が代理人として、企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に行います。審査には通常2〜3ヶ月程度の期間を要します。
COEが交付されたら、その原本を本人に国際郵便などで送付します。本人(申請人)は、現地の日本大使館または総領事館でCOEを提示してビザ(査証)の発給を受け、来日するという流れになります。
5.3 国内人材を採用する場合 在留資格変更許可申請
留学生や技能実習2号修了者など、すでに他の在留資格で日本に滞在している外国人を採用する場合は、その在留資格を「特定技能1号」へ変更するための手続きが必要です。この手続きを「在留資格変更許可申請」と呼びます。
申請は原則として外国人本人が、自身の住居地を管轄する地方出入国在留管理局にて行います。ただし、受入れ機関の職員や弁護士などが申請を取り次ぐことも可能です。審査期間は通常1〜2ヶ月程度です。
無事に許可が下りると、新しい在留カードが交付され、記載された日から特定技能外国人として就労を開始できます。
5.4 申請時に必要な書類一覧チェックリスト
特定技能ビザの申請には、多くの書類が必要です。ここでは、代表的な必要書類をチェックリスト形式でご紹介します。申請区分(新規呼び寄せか国内変更か)や、支援を登録支援機関に委託するかどうかで必要書類は変動します。申請前に必ず出入国在留管理庁の公式サイトで最新情報を確認してください。
| 書類カテゴリ | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 申請書 | 在留資格認定証明書交付申請書 または 在留資格変更許可申請書 | 申請内容に応じていずれかの様式を使用します。 |
| 受入れ機関・契約に関する書類 | 特定技能雇用契約書の写し | 指定の様式(参考様式第1-5号)を使用します。 |
| 雇用条件書の写し | 労働基準法第15条第1項に基づき交付する書面です。 | |
| 事前ガイダンスの確認書 | 本人と実施担当者が署名したものが必要です。 | |
| 登記事項証明書 | 法人の場合に必要です。 | |
| 直近2年分の決算文書の写し | 損益計算書、貸借対照表など。 | |
| 建築物清掃業特定技能協議会の構成員であることの証明書 | 協議会への加入後に発行されます。 | |
| 外国人本人に関する書類 | 履歴書 | 指定の様式(参考様式第1-3号)を使用します。 |
| 技能試験の合格証明書の写し | 「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」の合格証です。 | |
| 日本語能力を証明する書類の写し | 日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2以上の合格証です。 | |
| 健康診断個人票 | 指定の様式(参考様式第1-3号)を使用し、受診後3ヶ月以内のものが必要です。 | |
| 支援に関する書類 | 1号特定技能外国人支援計画書 | 支援の具体的な内容や実施方法を記載します。 |
| 登録支援機関との支援委託契約書の写し | 支援業務を外部に委託する場合に必要です。 |
上記はあくまで一例です。個別の状況に応じて追加の書類が求められることもあります。書類に不備があると審査が長引く原因となるため、専門家である登録支援機関や行政書士に相談しながら準備を進めることをお勧めします。
6. 特定技能「ビルクリーニング」の採用と雇用にかかる費用
特定技能「ビルクリーニング」分野で外国人材を採用するには、日本人を雇用する場合とは異なる特有の費用が発生します。採用活動を始める前に、どのような費用が、どのタイミングで、いくらくらいかかるのかを把握し、計画的に資金を準備しておくことが重要です。ここでは、採用時にかかる「初期費用」と、雇用後に継続して発生する「ランニングコスト」に分けて詳しく解説します。
6.1 人材採用時にかかる初期費用
人材の採用を決定してから、実際に就労を開始するまでにかかる初期費用です。特に海外から人材を呼び寄せる場合は、国内在住者を採用するよりも高額になる傾向があります。主な費用の内訳と目安は以下の通りです。
| 費用の種類 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 人材紹介手数料 | 30万円~60万円/1名 | 人材紹介会社を利用する場合に発生。紹介会社や採用ルート(国内/海外)によって変動します。 |
| 在留資格申請費用 | 10万円~20万円/1名 | 行政書士などの専門家にビザ申請を依頼する場合の費用です。自社で申請する場合、印紙代(在留資格変更許可申請で6,000円)のみかかります。 |
| 海外からの渡航費 | 5万円~15万円/1名 | 海外在住者を採用する場合に発生する航空券代などです。原則として企業側の負担となります。 |
| 初期生活の準備費用 | 5万円~10万円 | 住居の契約初期費用(敷金・礼金など)や、生活に必要な家具・家電の準備費用です。企業が一時的に立て替えるか、一部を負担するケースが一般的です。 |
| その他(健康診断など) | 1万円~3万円 | 入国前後の健康診断費用や、特定技能評価試験の受験料を企業が負担する場合の費用です。 |
これらの初期費用は、採用する人材が国内にいるか海外にいるか、また利用するサービスによって大きく変動します。複数の人材紹介会社や行政書士から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。
6.2 雇用後に発生する支援費用やその他のコスト
特定技能外国人の雇用を開始した後に、継続的に発生する費用です。特に、法律で定められた支援義務を果たすためのコストが大きな割合を占めます。
| 費用の種類 | 費用の目安(月額) | 備考 |
|---|---|---|
| 登録支援機関への委託費 | 2万円~3.5万円/1名 | 支援計画の実施を登録支援機関にすべて委託する場合の費用です。支援内容によって料金は変動します。 |
| 給与・社会保険料 | 日本人従業員と同等以上 | 特定技能外国人には、同等の業務に従事する日本人従業員と同等額以上の報酬を支払うことが法律で義務付けられています。もちろん、社会保険への加入も必須です。 |
| 住居関連費用 | 実費(企業負担分) | 社宅を提供する場合の家賃。本人から家賃を徴収することも可能ですが、給与から不当に高額な費用を天引きすることは認められていません。 |
| 日本語教育の費用 | 都度発生 | 業務の習熟度やコミュニケーション円滑化のため、日本語学習の機会を提供する際の教材費や研修費用です。 |
特に重要なのが、登録支援機関への委託費用です。自社で支援体制を構築することが難しい多くの企業にとって、この費用は毎月発生する固定費となります。また、給与水準は最低賃金をクリアするだけでなく、近隣地域の同業種の給与水準や、自社の他の日本人従業員の給与も考慮して設定する必要があります。
7. 採用後に企業が果たすべき支援義務
特定技能外国人材の受け入れが決まった後、企業(受入れ機関)は、外国人が日本で安定的かつ円滑に活動できるよう、職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援を行う義務があります。これは「1号特定技能外国人支援計画」として作成・提出し、計画通りに実施しなければなりません。ここでは、法律で定められた支援義務の具体的な内容と、その実施方法について解説します。
7.1 法律で定められた10項目の支援内容
出入国在留管理庁が定める支援は、以下の10項目です。これらの支援はすべて義務であり、一つでも怠ると特定技能外国人の受け入れができなくなる可能性があります。支援の対象はビルクリーニング分野で雇用する特定技能1号の外国人です。
| 支援項目 | 具体的な支援内容 |
|---|---|
| 1. 事前ガイダンス | 雇用契約締結後、在留資格認定証明書の交付申請前または交付後に、労働条件、活動内容、入国手続き、保証金徴収の有無等について、対面またはオンラインで説明します。 |
| 2. 出入国する際の送迎 | 外国人が入国する際には空港等へ出迎え、帰国する際には保安検査場まで同行し、スムーズな出入国をサポートします。 |
| 3. 住居確保・生活に必要な契約支援 | 連帯保証人になる、社宅を提供するなどして住居を確保し、銀行口座の開設、携帯電話やライフライン(電気・ガス・水道)の契約等をサポートします。 |
| 4. 生活オリエンテーション | 入国後、日本のルールやマナー、公共機関の利用方法、災害時の対応など、日本で生活するための情報を日本語で説明します。 |
| 5. 公的手続き等への同行 | 必要に応じて、社会保障や税に関する手続き、住居地の市区町村での手続き(住民登録など)に同行し、書類作成を補助します。 |
| 6. 日本語学習の機会の提供 | 日本語教室やオンラインの日本語学習教材に関する情報を提供し、日本語を学ぶ機会を確保します。 |
| 7. 相談・苦情への対応 | 職場や生活上の悩みについて、外国人が十分に理解できる言語で相談に応じ、適切な助言や指導を行います。 |
| 8. 日本人との交流促進 | 地域のイベントや自治会への参加を促すなど、日本人との交流の機会を提供し、地域社会への孤立を防ぎます。 |
| 9. 転職支援 | 企業の都合で雇用契約を解除する場合、次の受け入れ先を探す手伝いや、推薦状の作成など、転職活動をサポートします。 |
| 10. 定期的な面談と行政機関への通報 | 支援責任者が、外国人本人およびその上司と3ヶ月に1回以上の頻度で面談し、労働基準法違反などがあれば行政機関へ通報します。 |
これらの支援内容の詳細は、出入国在留管理庁のウェブサイトで確認できます。
7.2 支援業務を登録支援機関に委託する場合
前述の10項目の支援をすべて自社で行うことが難しい場合、国の登録を受けた「登録支援機関」に支援業務の全部または一部を委託することができます。ビルクリーニング業界の企業様も、専門知識を持つ登録支援機関を活用することで、法令を遵守しながら、より手厚いサポートを効率的に行うことが可能です。
登録支援機関に委託する主なメリットは以下の通りです。
- 多言語対応が可能で、円滑なコミュニケーションが実現できる
- 専門的な知識に基づいた適切な支援計画の作成と実施が期待できる
- 支援担当者の設置や管理といった社内リソースの負担を軽減できる
- 法改正などの最新情報にも迅速に対応できる
ただし、注意点として、支援業務のすべてを登録支援機関に委託した場合でも、受入れ機関(企業)の支援責任が免除されるわけではありません。委託後も、登録支援機関と密に連携を取り、支援が適切に行われているかを監督する義務があります。信頼できる登録支援機関を選び、良好なパートナーシップを築くことが、特定技能外国人の定着と活躍の鍵となります。
8. まとめ
本記事では、2026年最新の情報に基づき、特定技能「ビルクリーニング」制度について、その基礎知識から採用方法、ビザ申請、費用、そして採用後の支援義務に至るまでを網羅的に解説しました。深刻化する人手不足に直面するビルメンテナンス業界にとって、この制度が極めて有効な解決策となり得ることをご理解いただけたかと思います。
ここで、本記事の重要なポイントを改めて振り返ります。
第一に、特定技能「ビルクリーニング」で受け入れる外国人材は、専門的な「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」と一定水準の日本語能力試験に合格した、即戦力として期待できる人材であるという点です。これは、一定の教育期間を要する技能実習制度とは異なり、現場のニーズに迅速に対応できる大きなメリットと言えます。
第二に、採用には国内在住者(留学生や技能実習修了者など)と、海外から新たに呼び寄せる2つのルートが存在します。自社の状況や採用計画に応じて最適な方法を選択できる柔軟性も、この制度の魅力です。しかし、どちらのルートを選択するにせよ、在留資格に関する申請手続きは複雑です。そのため、多くの企業が人材紹介会社や登録支援機関といった専門家のサポートを活用しています。これらの専門機関を利用することは、煩雑な書類作成や行政機関とのやり取りにかかる時間と労力を大幅に削減し、採用活動をスムーズに進めるための賢明な選択です。
第三に、外国人材を受け入れる企業には、建築物清掃業特定技能協議会への加入や、法律で定められた10項目の支援義務を果たす責任があることを忘れてはなりません。これらの義務は、単なるコンプライアンス遵守にとどまりません。外国人材が日本での仕事や生活に円滑に適応し、安心して長く働き続けられる環境を整えることは、人材の定着率を高め、結果として企業の安定的な成長に直結します。支援体制を自社で構築するのが難しい場合は、支援業務の全てを登録支援機関に委託することも可能です。
結論として、特定技能「ビルクリーニング」制度は、質の高い人材を確保し、事業の継続・発展を目指す企業にとって強力な武器となります。しかし、その成功は、制度への深い理解と、採用から雇用後の支援までを見据えた周到な準備にかかっています。本記事が、貴社にとって最良の外国人材採用を実現するための一助となれば幸いです。まずは、信頼できる登録支援機関や人材紹介会社に相談し、具体的な第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。