
特定技能外国人材の受け入れ準備を進める中で、「健康診断はどうすればいいのだろう?」と頭を悩ませていませんか。「いつ、どのタイミングで受けさせるのか」「必要な検査項目は何か」「費用は会社と本人のどちらが負担するのか」「そもそも義務なのか、罰則はあるのか」など、次々と疑問が浮かび、手続きの複雑さに戸惑っているご担当者様も多いことでしょう。特に、初めて外国人材を受け入れる企業にとっては、どこから手をつければ良いかわからないのが実情かもしれません。まず結論から申し上げますと、特定技能外国人の健康診断は、受け入れ企業に課せられた法的な義務であり、その費用も原則として企業が全額負担する必要があります。この義務を正しく理解し、適切に履行しなければ、在留資格の申請が認められないだけでなく、労働安全衛生法に基づく指導の対象となったり、最悪の場合、特定技能制度の利用が困難になったりするリスクも伴います。しかし、ご安心ください。この記事を最後までお読みいただければ、特定技能外国人の健康診断に関するあらゆる疑問が解消され、担当者としてすべきことがすべて明確になります。具体的には、健康診断が義務である法的根拠、入国前と入国後の2つのタイミングで実施すべき健康診断の目的と内容の違い、出入国在留管理庁が定める必須検査項目の詳細リスト、省略可能なケースの条件、健康診断にかかる費用の全国的な相場と法律で定められた費用負担のルール、国内外での適切な病院の選び方と注意点、そして、予約から診断書の受領、関係各所への書類提出までを迷わず進められる具体的な5つのステップを、一つひとつ丁寧に解説します。さらに、万が一診断結果に異常が見つかった場合に企業が取るべき対応についても詳しくご紹介します。この記事は、出入国在留管理庁や厚生労働省が公表している最新の情報に基づいており、複雑な手続きや専門用語もわかりやすく説明しているため、他のサイトや資料をいくつも調べる必要はもうありません。この記事一本で、自信を持って特定技能外国人の健康診断手続きを進められるようになります。大切な人材を万全の体制で迎え入れるために、ぜひご活用ください。
1. 特定技能外国人の健康診断は受け入れ企業の義務
特定技能外国人を受け入れる企業にとって、健康診断の実施は法律で定められた重要な義務です。これは、外国人材が心身ともに健康な状態で日本での業務に従事できるようにするため、また、日本の公衆衛生を守るために不可欠な措置です。「知らなかった」では済まされない企業の責任であることを、まずはっきりと認識しておく必要があります。
健康診断の実施を怠ると、後述する罰則の対象となるだけでなく、特定技能外国人の受け入れ自体が認められない可能性もあります。企業のコンプライアンス遵守と、外国人材との良好な関係構築の第一歩として、健康診断のルールを正しく理解し、適切に実施しましょう。
1.1 なぜ健康診断が義務付けられているのか
特定技能外国人に健康診断が義務付けられている主な理由は、以下の3点です。
- 外国人材の健康状態の把握と維持: 慣れない日本での生活や労働は、心身に大きな負担をかけることがあります。企業が定期的に健康状態を把握し、必要な配慮を行うことで、外国人材が安心して働き続けられる環境を整えます。
- 公衆衛生上のリスク防止: 結核など、集団生活において感染拡大のリスクがある特定の疾患について、入国前にスクリーニングを行うことで、日本国内の公衆衛生を守る目的があります。
- 企業の安全配慮義務の履行: 企業は、国籍を問わず、雇用するすべての労働者に対して安全と健康を配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。健康診断の実施は、この義務を果たすための具体的な取り組みの一つです。
1.2 法的根拠と罰則の有無
特定技能外国人の健康診断は、主に「労働安全衛生法」と「出入国管理及び難民認定法(入管法)」という2つの法律に基づいて義務付けられています。それぞれ根拠となる法律が異なり、違反した場合のペナルティも異なります。
特に、労働安全衛生法に定められた健康診断を実施しなかった場合、企業には罰金が科されるため、注意が必要です。
| 根拠法 | 概要 | 違反した場合のペナルティ |
|---|---|---|
| 労働安全衛生法 | 日本人従業員と同様に、労働者として雇用する際の「雇入れ時健康診断」や年に1回の「定期健康診断」の実施を企業に義務付けています。 | 50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)。健康診断を実施しない、または結果を記録・保存しない場合などが対象です。 |
| 出入国管理及び難民認定法 | 特定技能の在留資格で上陸するための条件として、申請人が健康であることが定められています。この基準を満たしていることを証明するため、入国前に指定された項目の健康診断を受ける必要があります。 | 罰則ではありませんが、健康診断証明書を提出できない場合、在留資格認定証明書が交付されず、日本に入国することができません。 |
このように、特定技能外国人の健康診断は、企業の法的義務であり、受け入れプロセスの大前提となるものです。次の章では、具体的にどのタイミングで、どのような健康診断を実施すべきかを詳しく解説します。
2. 特定技能の健康診断を実施する2つのタイミング
特定技能外国人を受け入れる企業は、法律に基づき、大きく分けて2つの異なるタイミングで健康診断を実施する義務があります。それは「入国前」と「入国後」です。それぞれの目的と実施時期を正しく理解し、適切な対応をすることが求められます。
2.1 入国前に実施する健康診断
入国前の健康診断は、在留資格の申請に先立ち、候補者が日本で特定技能外国人として就労する上で健康上の問題がないかを確認するための重要な手続きです。この診断は、出入国在留管理庁が定めた基準に基づいて行われます。
原則として、在留資格認定証明書交付申請を行う前の3ヶ月以内に受診し、その結果を記した「健康診断個人票(参考様式第1-3号)」を準備する必要があります。この書類は、申請時に地方出入国在留管理局へ提出が求められるため、受け入れ準備の初期段階で必ず実施しなければなりません。詳しくは出入国在留管理庁の公式サイトで確認してください。
2.2 入国後に実施する定期健康診断
特定技能外国人を雇用した後は、日本人従業員と同様に、労働安全衛生法に基づいて定期的な健康診断を実施しなければなりません。これは、労働者の健康を確保し、安全な職場環境を維持するための企業の義務です。入国後の健康診断は、主に「雇入れ時の健康診断」と「1年以内ごとに1回の定期健康診断」の2つに分けられます。
| 健康診断の種類 | 実施時期 | 法的根拠 |
|---|---|---|
| 雇入れ時の健康診断 | 特定技能外国人を常時使用する労働者として雇い入れた際 | 労働安全衛生規則 第43条 |
| 定期健康診断 | 雇入れ後、1年以内ごとに1回、定期的に | 労働安全衛生規則 第44条 |
なお、入国前に実施した健康診断の受診日から、雇入れ日の期間が3ヶ月以内である場合、その健康診断の結果を証明する書面を提出すれば、雇入れ時の健康診断の一部の項目を省略することが可能です。
3. 【タイミング別】特定技能の健康診断で必要な検査項目
特定技能外国人に実施する健康診断は、在留資格の申請に関わる「入国前」と、雇用後の労働安全衛生法に基づく「入国後」で、根拠となる法律や検査項目が異なります。それぞれのタイミングでどの検査が必要なのか、具体的に見ていきましょう。
3.1 入国前健康診断で定められた検査項目リスト
入国前の健康診断は、在留資格認定証明書の交付申請に必要な手続きの一環です。この健康診断は、申請前の3ヶ月以内に受診する必要があります。特に、日本への入国にあたり、結核などの感染症にかかっていないかを確認することが重要な目的とされています。検査項目は、出入国在留管理庁が定める「健康診断個人票(参考様式第1号の3)」に基づいて実施しなければなりません。
| 分類 | 検査項目 | 備考 |
|---|---|---|
| 身体測定 | 身長、体重、視力、聴力(オージオメーターによる) | 基本的な身体状況の確認 |
| 胸部X線検査 | 胸部エックス線直接撮影 | 結核の有無を確認するための最重要項目 |
| 喀痰検査 | 喀痰塗抹染色顕微鏡検査 | 胸部X線検査で結核の疑いなど、異常な影が見られた場合にのみ実施 |
| 診察 | 問診、診察所見 | 医師による総合的な診察 |
上記の項目は最低限必要なものであり、これらの結果を出入国在留管理庁指定の様式に記入し、提出します。
3.2 定期健康診断で定められた検査項目リスト
特定技能外国人を雇用した後は、日本人従業員と同様に、労働安全衛生法に基づき定期健康診断を実施する義務があります。これは「雇入れ時の健康診断」と「1年以内ごとに1回行う定期健康診断」が該当し、検査項目も法律で定められています。外国人であることを理由に、検査項目を減らしたり省略したりすることはできません。
| 検査項目 | 備考 |
|---|---|
| 既往歴及び業務歴の調査 | - |
| 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 | - |
| 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 | 入国前検査にはない「腹囲」が追加されます |
| 胸部エックス線検査及び喀痰検査 | - |
| 血圧の測定 | - |
| 貧血検査(赤血球数、血色素量) | - |
| 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP) | - |
| 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセリド) | - |
| 血糖検査 | - |
| 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) | - |
| 心電図検査 | - |
これらの項目は、労働安全衛生規則第44条で定められている内容です。
3.3 検査項目を省略できるケースとは
毎回すべての検査項目を実施する必要はなく、一定の条件下で一部の項目を省略することが認められています。これはコストや受診者の負担を軽減するために重要です。
3.3.1 定期健康診断における医師の判断による省略
1年以内ごとに行う定期健康診断では、労働安全衛生規則第44条に基づき、医師が必要でないと認めるときに以下の項目の省略が可能です。
- 身長測定:20歳以上の者
- 腹囲の検査:40歳未満(35歳を除く)の者など、一定の条件を満たす場合
- 喀痰検査:胸部X線検査によって病変が発見されなかった者など、一定の条件を満たす場合
- 血液検査・心電図検査など:35歳未満の者及び36歳から39歳までの者については、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査を省略可能
3.3.2 他の健康診断結果の活用による省略
入国後すぐに行う「雇入れ時の健康診断」は、入国前に受けた健康診断の結果で代用できる場合があります。具体的には、入国前3ヶ月以内に受けた健康診断が、日本の労働安全衛生規則で定められた「雇入れ時の健康診断」の全ての項目を満たしている場合です。その健康診断結果の写しを提出することで、雇入れ時の健康診断を省略できます。これにより、外国人の負担軽減と企業のコスト削減につながります。
4. 特定技能外国人の健康診断にかかる費用とその負担者
特定技能外国人の健康診断を実施するにあたり、受け入れ企業が最も気になる点の一つが費用ではないでしょうか。ここでは、健康診断にかかる費用の相場と、法律で定められた費用負担のルールについて詳しく解説します。
4.1 健康診断の費用相場
特定技能外国人の健康診断にかかる費用は、受診する医療機関や国、検査項目によって変動します。あくまで目安ですが、一般的な費用相場は以下の通りです。
| 健康診断の種類 | 費用相場(1人あたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 入国前健康診断 | 5,000円~15,000円程度 | 海外で受診する場合は、現地の医療水準や為替レートによって大きく変動します。 |
| 定期健康診断 | 10,000円~15,000円程度 | 日本国内の医療機関で受診する場合の一般的な料金です。オプション検査を追加すると費用は加算されます。 |
これらの費用は、あくまで基本的な検査項目を実施した場合の目安です。企業が独自に人間ドックなどの詳細な検査を追加する場合は、さらに費用がかかります。
4.2 法律で定められた費用負担のルール
健康診断の費用を誰が負担するかについては、法律で明確に定められています。結論から申し上げると、特定技能外国人の健康診断にかかる費用は、すべて受け入れ企業が負担しなければなりません。
これは、労働安全衛生法第66条に基づく事業者の義務であり、外国籍の労働者であっても日本人と同様に適用されます。厚生労働省も、事業者が労働安全衛生法に基づき実施する健康診断の費用は、当然に事業者が負担すべきものであるとの見解を示しています。(参考:厚生労働省:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう)
そのため、健康診断の費用を外国人本人に請求したり、給与から天引きしたりすることは法律違反となります。特定技能外国人の雇用は、こうした費用も事業運営のコストとして計画に含めておくことが重要です。
5. 特定技能の健康診断はどこで受ける?病院選びのポイント
特定技能外国人の健康診断は、国内・海外のどちらでも受診可能ですが、それぞれにルールと注意点があります。受け入れ企業担当者がスムーズに手続きを進めるための、病院選びのポイントを解説します。
5.1 日本国内で受診する場合の病院の探し方
入国後の定期健康診断や、何らかの理由で入国前に健康診断を受けられなかった場合、日本国内の医療機関で受診します。法律で受診する病院の指定は特にありませんが、どの病院でも良いというわけではありません。
病院を選ぶ際は、労働安全衛生法で定められた健康診断の検査項目をすべて実施できるかを事前に確認することが最も重要です。特定技能ビザ申請用の様式がありますので、そちらを持参し健康診断を受診すると検査項目の漏れのリスクを回避できます健康診断個人票(参考様式第1-3号)。
病院を探す具体的な方法は以下の通りです。
- 企業の産業医や提携医療機関に相談する: 普段から企業の健康管理をサポートしているため、スムーズに相談できます。
- 近隣の健診センターやクリニックを探す: 企業健診を多く扱っている医療機関は、手続きに慣れている場合が多く安心です。
- 外国語対応可能な病院を探す: 外国人本人が安心して受診できるよう、多言語対応が可能な医療機関を選ぶのも一つの方法です。厚生労働省が提供する「医療機能情報提供制度(医療情報ネット)」などを活用して探すことができます。
外国人材の受け入れに慣れている登録支援機関に相談し、提携している医療機関を紹介してもらうのも効率的な方法です。
5.2 海外で受診する場合の注意点と要件
在留資格認定証明書の交付申請に必要な入国前健康診断は、外国人が母国にいる間に現地の医療機関で受診するのが一般的です。ただし、その診断書が有効と認められるためには、日本の法律で定められた要件をすべて満たす必要があります。
要件を満たさない健康診断書は、出入国在留管理庁での審査で認められず、在留資格が許可されない可能性があるため、必ず以下の点を確認してください。
| 確認項目 | 要件と注意点 |
|---|---|
| 使用する書式 | 出入国在留管理庁が定めた「健康診断個人票(参考様式第1-3号)」を使用する必要があります。他の様式は認められません。 |
| 検査項目 | 日本の法律で定められた検査項目をすべて網羅している必要があります。不足項目があると無効になります。 |
| 診断書の言語 | 特定技能外国人本人が十分に理解できる言語で記載されている必要があります(外国語の様式はこちらを参照下さい)。 |
| 診断書の有効期限 | 在留資格認定証明書交付申請の提出日から3ヶ月以内に作成されたものである必要があります。 |
| 医師の署名 | 診断を行った医師による署名、または記名押印が必須です。 |
現地の病院を選ぶ際は、これらの要件を正確に理解し、指定の様式で診断書を作成できるか、事前に十分な確認が必要です。本人任せにせず、受け入れ企業や登録支援機関が主導して、適切な病院を選定・案内することがトラブル防止の鍵となります。
6. 健康診断の予約から書類提出までの5ステップ
特定技能外国人の健康診断は、手続きを順序立てて進めることでスムーズに完了します。ここでは、受け入れ企業が実際に行うべきことを、病院の予約から関係各所への書類提出まで、具体的な5つのステップに分けて解説します。
6.1 ステップ1 病院の選定と予約
まず、特定技能外国人の健康診断に対応している医療機関を選定し、予約を行います。前章で解説したポイントを参考に病院を探しましょう。
予約の際には、以下の点を明確に伝えることが重要です。
- 特定技能の在留資格申請(または定期健診)のための健康診断であること
- 必要な検査項目(入国前か定期健診かで異なる)
- 診断書の様式(特に、入国前健康診断の場合は出入国在留管理庁指定の「参考様式第1-3号」での作成が可能か)
- 受診者の氏名、国籍、生年月日
特に、出入国在留管理庁へ提出する診断書は指定様式があるため、対応可能かどうかを予約時に必ず確認してください。
6.2 ステップ2 健康診断の受診
予約した日時に、外国人本人が医療機関で健康診断を受診します。企業担当者が同行すると、受付や問診票の記入がスムーズに進むため安心です。
受診当日は、以下のものを持参するよう外国人に伝えておきましょう。
- 在留カード(またはパスポート)
- 健康保険証(定期健康診断の場合)
- 会社の連絡先がわかるもの
また、検査項目によっては前日の食事や飲酒に制限がある場合があります。事前に医療機関からの指示内容を確認し、本人に正確に伝えておくことが大切です。
6.3 ステップ3 診断書(健康診断個人票)の受領
健康診断の受診後、通常1週間から2週間程度で診断結果が記載された「健康診断個人票(診断書)」が発行されます。医療機関から直接受け取るか、郵送で送付してもらいます。
診断書を受け取ったら、提出前に必ず以下の点に不備がないかを確認しましょう。
- 受診者の氏名や生年月日が正確に記載されているか
- 必要な検査項目がすべて実施され、結果が記載されているか
- 医師の診断、署名、医療機関の名称・所在地が明記されているか
- (入国前健康診断の場合)出入国在留管理庁の指定様式に沿っているか
もし記載内容に漏れや誤りがあった場合は、速やかに医療機関に連絡し、修正を依頼してください。
6.4 ステップ4 診断結果の確認と対応
受け取った診断書の内容を確認します。結果が「異常なし」であれば、次のステップに進みます。もし「要再検査」「要精密検査」「要治療」などの所見が見つかった場合は、企業として適切な対応が必要です。
まずは診断書に記載された医師の意見を確認し、必要に応じて再検査や治療の手配を進めます。健康上の問題は、本人の就労や生活に直接影響するため、プライバシーに配慮しつつ、しっかりとサポートすることが求められます。
6.5 ステップ5 関係各所への書類提出
最後に、作成された健康診断に関する書類を関係各所へ提出します。提出先とタイミングは、健康診断の種類によって異なります。
| 提出先 | 提出タイミング | 必要な書類 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 出入国在留管理庁 | 在留資格認定証明書交付申請時 または在留資格変更許可申請時 | 健康診断個人票(参考様式第1-3号) | 申請日から遡って3ヶ月以内に作成されたものが必要です。 |
| 労働基準監督署 | 定期健康診断実施後、遅滞なく | 定期健康診断結果報告書 | 常時50人以上の労働者を使用する事業場のみ提出義務があります。 |
特に在留資格の申請に関わる書類は、提出期限や様式が厳格に定められています。手続きの遅延を避けるためにも、各ステップを確実に実行し、計画的に書類を準備・提出することが極めて重要です。
7. 健康診断の結果に異常が見つかった場合の企業の対応
特定技能外国人の健康診断で「異常の所見あり」という結果が出た場合、受け入れ企業は慌てず、適切な手順に沿って対応する必要があります。本人の健康と安全を守り、企業の法的責任を果たすための具体的な対応方法を解説します。
7.1 まず行うべきこと:本人への通知とプライバシー保護
健康診断の結果は、極めて重要な個人情報です。企業は、結果を本人に速やかに通知するとともに、本人のプライバシー保護を徹底しなければなりません。結果の取り扱いには細心の注意を払い、人事労務担当者など、業務上必要な最小限の範囲で情報を共有するようにしましょう。外国人本人に結果を伝える際は、必要に応じて通訳を介し、不安を煽らないよう配慮することが大切です。
7.2 医師からの意見聴取と就業上の措置の決定
健康診断の結果、異常の所見があった労働者については、企業はその労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聴かなければならないと労働安全衛生法で定められています。これは企業の義務です。
医師からの意見を聴取した後は、その意見を勘案し、必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じる必要があります。これらの対応は、外国人本人と十分に話し合い、納得を得た上で進めることが重要です。
7.2.1 就業上の措置の具体例
医師の意見に基づき、企業が検討すべき就業上の措置には、以下のようなものがあります。
| 措置の区分 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 就業制限 | 特定の有害な業務や、症状を悪化させる可能性のある作業への従事を禁止・制限する。 |
| 作業転換 | 現在の業務から、身体的負担の少ない他の業務へ変更する。 |
| 労働時間の短縮 | 所定労働時間や残業時間を短縮し、十分な休息が取れるように配慮する。 |
| 深夜業の回数減少 | 生活リズムの乱れが健康に影響を与える場合、深夜勤務の回数を減らす、または免除する。 |
| 治療との両立支援 | 通院のための休暇取得を認めるなど、治療と仕事を両立できる環境を整備する。 |
これらの措置については、厚生労働省が公表している「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」も参考に、適切な対応を検討してください。
7.3 【重要】結果を理由とした一方的な内定取り消し・解雇はできない
健康診断の結果、何らかの異常が見つかったからといって、それを理由に直ちに内定を取り消したり、一方的に解雇したりすることは、原則としてできません。労働契約法に基づき、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められます。
単に「異常があった」というだけでは、この要件を満たしません。医師の意見を聴取した上で、就業上の措置を講じてもなお、業務の遂行が著しく困難である、あるいは本人の生命や健康に重大なリスクがある、といった特別な事情がない限り、解雇は無効と判断される可能性が非常に高いです。安易な判断は大きな労務トラブルに発展するリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
7.4 結核など特定の感染症が発見された場合の対応
特定技能の健康診断項目には結核の有無を調べる胸部X線検査が含まれています。結核が発見された場合の対応は、入国前と入国後で異なります。
7.4.1 入国前に結核が判明した場合
入国前の健康診断で活動性の結核が判明した場合、その外国人は「特定技能」の基準に適合しないと判断され、在留資格認定証明書が交付されません。したがって、日本に入国して就労することはできません。まずは母国での治療に専念してもらうことになります。
7.4.2 入国後に結核が判明した場合
入国後の定期健康診断などで結核が判明した場合は、感染症法に基づき対応します。保健所長の判断により、就業が制限されたり、入院勧告が出されたりすることがあります。企業としては、保健所の指示に従うとともに、本人が安心して治療に専念できるよう、休職制度の適用や社会保険の手続きなどをサポートすることが重要です。回復後、医師から就労可能の診断が出れば、職場復帰に向けた支援を行います。
8. まとめ
本記事では、特定技能外国人を受け入れる企業が必ず実施しなければならない健康診断について、その目的から具体的な手続き、費用負担のルールまで網羅的に解説しました。特定技能外国人の健康診断は、単なる手続きではなく、法律で定められた受け入れ企業の重要な義務です。
健康診断が義務付けられている理由は、第一に、外国人材本人の健康を維持し、慣れない日本での就労をサポートするためです。そして第二に、結核などの感染症の国内流入を防ぎ、公衆衛生を守るという重要な目的があります。この義務を怠った場合、労働安全衛生法に基づき罰則が科される可能性もあるため、確実な実施が求められます。
健康診断を実施するタイミングは、大きく分けて「入国前」と「入国後(定期)」の2つです。入国前の健康診断は、在留資格認定証明書の交付申請に必要な手続きの一環であり、定められた検査項目をすべて満たす必要があります。一方、入国後の定期健康診断は、日本人従業員と同様に、労働安全衛生規則に基づき1年以内ごとに1回実施するものです。それぞれのタイミングで必要な検査項目が異なるため、混同しないよう注意しましょう。
特に受け入れ担当者が誤解しやすいのが費用負担のルールです。特定技能外国人の健康診断にかかる費用は、入国前・入国後を問わず、法律によって企業が全額負担することが定められています。外国人本人に負担させることはできませんので、あらかじめ予算に計上しておくことが不可欠です。
健康診断の実施にあたっては、病院選びから書類提出まで、計画的に進めることが成功の鍵となります。国内の病院はもちろん、海外の医療機関でも受診は可能ですが、その場合は日本の出入国在留管理庁が定める様式(参考様式第1-3号)に準拠した診断書を作成してもらう必要があります。受診予約、診断書の受領、そして結果に異常があった場合の医師への意見聴取と就業上の措置、関係各所への書類提出といった一連の流れを正確に把握し、対応することが重要です。
特定技能外国人の健康診断は、受け入れ企業が果たすべき責任の第一歩です。この手続きを適切に行うことは、コンプライアンスを遵守するだけでなく、外国人材が心身ともに健康な状態で能力を発揮し、長く自社で活躍してもらうための基盤となります。この記事で解説したポイントを押さえ、スムーズで確実な受け入れ準備を進めていきましょう。