
特定技能外国人の受け入れを決定したものの、その後の「届出」という手続きの複雑さに頭を悩ませてはいませんか。「いつまでに、どこへ、何を提出すればいいのか」「必要な書類は何か」「もし忘れたらどうなるのか」など、次々と疑問が湧き、不安を感じている企業の担当者様も少なくないでしょう。特定技能制度は、人手不足に悩む多くの企業にとって画期的な解決策となり得ますが、その運用には法令に基づいた厳格なルールが定められています。特に、出入国在留管理庁やハローワークへの各種届出は、企業が果たすべき重要な義務であり、この手続きを正しく理解し、遅滞なく実行することが、制度活用の成否を分けると言っても過言ではありません。もし、これらの届出を怠ったり、内容を誤ったりした場合には、企業に対して改善命令や指導が入るだけでなく、最大30万円以下の罰金が科されたり、最悪の場合には特定技能外国人の受け入れが今後一切できなくなったりする、という非常に重いペナルティが待っています。本記事は、そのようなリスクを未然に防ぎ、初めて特定技能外国人の受け入れを担当する方でも安心して手続きを進められるよう、複雑な届出業務を網羅的に、そして分かりやすく解説するために作成しました。この記事を最後までお読みいただくことで、受け入れ前から雇用後に至るまでの届出の全体フロー、年に一度の「定期届出」と突発的な事態に対応する「随時届出」の具体的な内容と提出期限、そして届出義務違反に伴うリスクまで、必要な知識のすべてが身につきます。結論として、特定技能外国人の受け入れを成功させる最大の鍵は、定められた届出を「適切なタイミング」で「正確に」行うことです。これは単なる事務作業ではなく、企業が外国人材を責任もって雇用し、適切に支援していることを公的に証明する、コンプライアンス上極めて重要な行為です。
1. 特定技能制度の基本を理解しよう
特定技能制度は、国内の人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人材を受け入れるために2019年4月に創設された在留資格です。深刻化する人手不足に対応するための即戦力として、外国人材の活躍が期待されています。この制度を正しく理解することが、スムーズな届出と適正な雇用の第一歩となります。
1.1 特定技能1号と特定技能2号の違い
特定技能の在留資格は、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に区分されています。それぞれ在留期間や求められる技能水準、家族の帯同可否などが異なります。まずは両者の違いを正確に把握しましょう。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 技能水準 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能 | 特定産業分野に属する熟練した技能 |
| 日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力(日本語能力試験N4程度など)が必要 | 不要(漁業分野・外食業分野を除く) |
| 在留期間 | 通算で上限5年 | 上限なし(3年、2年、1年又は6月ごとの更新) |
| 家族の帯同 | 原則として認められない | 要件を満たせば可能(配偶者、子) |
| 受入れ機関(または登録支援機関)による支援 | 必須 | 不要 |
| 対象分野 | 16分野(介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業) | 11分野 |
このように、特定技能1号は幅広い分野で即戦力となる人材を確保するための資格であり、特定技能2号はより熟練した技能を持つ人材が長期的に日本で活躍するための資格と位置づけられています。どちらの人材を受け入れるかによって、企業の長期的な事業計画も変わってくるでしょう。制度の詳細は出入国在留管理庁のウェブサイトでも確認できます。
1.2 受入れ企業(特定技能所属機関)に求められること
特定技能外国人を受け入れる企業は「特定技能所属機関」と呼ばれ、いくつかの基準を満たす必要があります。届出や申請の前に、自社がこれらの要件を満たしているか必ず確認してください。
- 法令の遵守: 労働基準法や社会保険関連法規、税法などを遵守していること。過去に外国人労働者の雇用に関して不正行為などがないことも求められます。
- 適切な雇用契約: 外国人であることを理由に、報酬や労働条件で不当な差別をしないこと。日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬を支払う必要があります。
- 外国人支援体制の確保: 受け入れた外国人が日本で安定的・円滑に活動できるよう、職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援を行う「支援計画」を作成し、実施する義務があります。
- 事業の安定性・継続性: 企業の経営が安定しており、継続して外国人を雇用できる財政基盤があること。
特に重要なのが「外国人支援体制の確保」です。支援計画の策定や実施には専門的な知識が必要となり、企業にとって大きな負担となる場合があります。その場合、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」に支援業務の全部または一部を委託することが可能です。自社での支援が難しい場合は、登録支援機関の活用を検討しましょう。
2. 【時系列で解説】特定技能外国人受入れから雇用後までの届出フロー
特定技能外国人の受入れには、様々な申請や届出が必要です。手続きが多く複雑に感じるかもしれませんが、時系列に沿って一つずつ確認すれば、決して難しいものではありません。ここでは、外国人材を受け入れる前から雇用した後まで、どのような手続きがどのタイミングで必要になるのか、全体の流れを分かりやすく解説します。
2.1 ステップ1 受入れ前に必要な申請
まず、特定技能外国人として雇用を開始する前に行うべき、最も重要な手続きについて解説します。これらの申請が許可されなければ、日本で就労することはできません。
2.1.1 在留資格認定証明書の交付申請
海外に住んでいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合、受け入れる企業が、地方出入国在留管理局に対して「在留資格認定証明書」の交付を申請します。これは、その外国人が日本で行う活動が「特定技能」の在留資格に該当することを法務大臣が事前に証明するものです。審査には通常1〜3ヶ月程度かかりますので、雇用計画に合わせて早めに準備を進めましょう。なお、すでに日本に在留している留学生などを特定技能として雇用する場合は、「在留資格変更許可申請」を行います。
2.1.2 特定技能雇用契約の締結
在留資格に関する申請を行う前提として、受け入れ企業と外国人本人の間で「特定技能雇用契約」を締結する必要があります。この契約書は、在留資格認定証明書交付申請の際の必須書類となります。契約内容には、業務内容、労働時間、報酬額、その他の労働条件について、法令で定められた基準を満たしていることを明確に記載しなければなりません。
2.2 ステップ2 受入れ後に必須となる出入国在留管理庁への届出
無事に特定技能外国人が就労を開始した後も、受入れ企業には継続的な報告義務が課せられます。これらの届出は、特定技能制度の適正な運用を確保するために非常に重要です。
届出は、企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局へ行います。届出には大きく分けて「定期届出」と「随時届出」の2種類があります。詳細は、出入国在留管理局のホームページを参照下さい。
2.2.1 一年ごとの定期届出
特定技能外国人を受け入れている企業は、年に1回ごとに受入れ状況や支援の実施状況などを報告する義務があります。これは「定期届出」と呼ばれ、雇用を継続している限り必ず行わなければならない手続きです。
2.2.2 変更や問題発生時の随時届出
定期的な報告とは別に、特定の事由が発生した際にその都度行わなければならないのが「随時届出」です。事由が発生した日から14日以内に届け出る必要がありますので、迅速な対応が求められます。例えば、特定技能雇用契約の内容変更(昇給など)、支援計画の変更、受入れが困難になった場合、外国人本人が失踪した場合などが該当します。
2.3 ステップ3 ハローワークへの届出も忘れずに
出入国在留管理庁への届出に加えて、ハローワーク(公共職業安定所)への届出も法律で義務付けられています。これは「外国人雇用状況の届出」と呼ばれるもので、特定技能に限らず、すべての外国人労働者を雇用する事業主が対象です。
届出は、外国人を雇い入れた場合と、その外国人が離職した場合の両方で必要です。それぞれの事由が発生した月の翌月10日までに、事業所の所在地を管轄するハローワークへ提出します。この届出は、オンラインで行うことも可能です。詳しくは厚生労働省の案内ページをご参照ください。
3. 【種類別】特定技能で必要な届出を詳しく解説
特定技能外国人を雇用する受入れ企業(特定技能所属機関)には、出入国在留管理庁への届出が法律で義務付けられています。届出には、定期的に報告する「定期届出」と、特定の事由が発生した都度報告する「随時届出」の2種類があります。これらの届出は、特定技能制度が適正に運用されているかを確認するための重要な手続きです。
3.1 定期届出 受入れ状況や支援の実施状況の報告
定期届出は、特定技能外国人の雇用状況や活動内容、生活支援の実施状況などを四半期ごとに報告するものです。これにより、出入国在留管理庁は受入れ企業が支援計画に沿って適切に外国人材を支援しているかを確認します。
3.1.1 定期届出の提出時期と提出方法
対象年の4月1日から翌年3月31日までのものを翌年5月31日までに提出する必要があります。例えば、令和7年4月1日から令和8年3月31日までの期間に関する届出は、令和8年5月31日までに提出しなければなりません。
提出方法は、以下の3つです。
- 企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局の窓口に持参
- 管轄の地方出入国在留管理局へ郵送(封筒の表面に「特定技能届出書在中」と朱書き)
- 出入国在留管理庁電子届出システムを利用したオンライン提出
手続きの効率化のため、オンラインでの提出が推奨されています。
3.1.2 定期届出の具体的な内容
定期届出で報告すべき主な内容は以下の通りです。これらの情報は、特定技能外国人が安定して日本で働き、生活できているかを示す重要な指標となります。
| 報告事項 | 具体的な報告内容の例 |
|---|---|
| 特定技能外国人の受入れ状況 | 届出時点での特定技能外国人の総数、氏名、在留カード番号など |
| 特定技能外国人の活動状況 | 氏名ごとの報酬の支払状況、従事した業務内容、労働日数、労働時間、時間外労働時間など |
| 支援の実施状況 | 実施した相談の内容と対応結果、生活オリエンテーションの実施状況、日本語学習機会の提供状況など |
| その他 | 離職者数、行方不明者数、転職支援の実施状況など |
3.2 随時届出 発生から14日以内の届出が必要
随時届出は、雇用契約や支援計画の変更、外国人の失踪など、あらかじめ定められた特定の事由が発生した場合に、その都度行う届出です。事由が発生した日から14日以内に提出する必要があり、迅速な対応が求められます。
3.2.1 受入れ企業の変更に関する届出
受入れ企業(特定技能所属機関)に関する情報に変更があった場合に必要となる届出です。具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 会社の名称や所在地の変更
- 会社の倒産
3.2.2 雇用契約の変更に関する届出
特定技能外国人との雇用契約に関する重要な変更があった場合に提出します。特に、外国人の雇用継続に関わる重大な事由が対象となります。
- 契約の終了:自己都合退職や解雇などにより、雇用契約が終了した場合。
- 新たな契約の締結:他の企業から転職してきた特定技能外国人と新たに雇用契約を締結した場合。
企業の都合で契約を解除した場合は、その外国人が次の受入れ先を見つけるための転職支援(求職活動のための有給休暇の付与や必要書類の作成協力など)を行う義務があります。
3.2.3 支援計画の変更に関する届出
最初に提出した「1号特定技能外国人支援計画」の内容に変更が生じた場合に必要です。軽微な変更は対象外ですが、支援の根幹に関わる変更は届出が必須です。
- 支援責任者や支援担当者の変更
- 登録支援機関との委託契約を新たに締結した場合
- 登録支援機関との契約を終了した場合、または委託内容を変更した場合
3.2.4 外国人の失踪や受入れ困難時の届出
これは最も緊急性が高く、迅速な対応が求められる届出です。該当する事由が発生した場合は、速やかに管轄の地方出入国在留管理局に報告・相談してください。
- 特定技能外国人の行方不明(失踪):連絡が取れなくなり、行方が分からなくなった場合。
- 受入れ困難:企業の経営悪化による給与の支払遅延や、外国人が重大な病気や怪我を負い、長期間にわたって業務を遂行できなくなるなど、雇用契約の継続が困難になった場合。
これらの事態は、特定技能外国人本人だけでなく、制度全体の信頼性にも関わるため、発覚後すぐに届け出ることが極めて重要です。
4. 特定技能の届出を怠った場合のリスクと罰則
特定技能外国人の雇用に関する各種届出は、出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められた受入れ企業の重要な義務です。もし、これらの届出を怠ったり、虚偽の内容で提出したりした場合、企業は厳しいペナルティを受けることになります。ここでは、届出義務違反によって生じる具体的なリスクと罰則について解説します。
4.1 受入れ企業(特定技能所属機関)への行政上の処分
届出を適切に行わない企業は、特定技能外国人を受け入れるための基準を満たしていないと判断される可能性があります。その結果、出入国在留管理庁から指導や改善命令を受けることがあります。さらに、違反が悪質であると判断された場合や、改善命令に従わない場合には、特定技能外国人の受入れ停止という重い処分が科されます。具体的には、改善命令に違反すると最大で5年間、新たな特定技能外国人を受け入れることができなくなります。これは企業の事業計画に深刻な影響を及ぼす、非常に大きなリスクです。
4.2 出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく罰則
行政上の処分に加えて、届出義務違反には刑事罰や行政罰も定められています。違反の内容によって、科される罰則が異なります。
| 違反行為 | 罰則の内容 |
|---|---|
| 虚偽の届出をした場合 | 30万円以下の罰金(刑事罰) |
| 届出を怠った(しなかった)場合 | 10万円以下の過料(行政罰) |
上記のように、意図的に事実と異なる内容を届け出る「虚偽の届出」は特に悪質とみなされ、刑事罰である「罰金」の対象となります。一方で、定められた期間内に届出をしなかった「届出の不履行」には、行政罰である「過料」が科されます。過料は前科にはなりませんが、法律違反であることに変わりはありません。こうした罰則を受ける事実は、企業の社会的信用を大きく損なうだけでなく、今後の外国人材の受入れ全般に悪影響を及ぼす可能性があるため、絶対に避けなければなりません。
5. まとめ
本記事では、特定技能外国人の受入れに際して企業が果たすべき「届出」の義務について、制度の基本から具体的な手続き、怠った場合のリスクまでを網羅的に解説しました。特定技能制度は、深刻化する人手不足を解消するための有効な手段ですが、その一方で、受入れ企業(特定技能所属機関)には外国人材の適正な雇用と生活を支えるための重い責任が課せられています。その責任を果たす上で中核となるのが、出入国在留管理庁やハローワークへの各種届出です。
届出業務がなぜこれほどまでに重要視されるのか、その理由は、制度の透明性と健全性を担保するためです。年に一度の「定期届出」は、特定技能外国人の活動状況や支援計画の実施状況を国が定期的に把握し、制度が適切に運用されているかを確認するためのものです。一方、契約内容の変更や失踪といった問題発生時に14日以内の提出が求められる「随時届出」は、個々の外国人材の状況変化に迅速に対応し、必要な保護や指導を行うための重要な情報源となります。これらの届出は、単なる事務手続きではなく、外国人材の人権を守り、不適切な労働環境を防ぐためのセーフティネットとしての役割を担っているのです。
この記事で繰り返し強調したように、届出義務を怠った場合のリスクは決して軽視できません。指導や改善命令に従わない場合、最大30万円の罰金が科されるだけでなく、悪質なケースでは特定技能外国人の新たな受入れが5年間停止されるといった極めて重い処分が下される可能性があります。これは、企業のコンプライアンス体制が問われるだけでなく、事業計画そのものに深刻な影響を及ぼす経営リスクに直結します。したがって、「知らなかった」「忙しくて忘れていた」という言い訳は通用しないと認識し、確実な管理体制を構築することが不可欠です。
初めて特定技能外国人を受け入れる企業様、あるいは現在の管理体制に不安を感じている企業様は、まずこの記事で解説した時系列フローと届出の種類を参考に、自社で必要な手続きのチェックリストを作成することから始めてください。そして、誰が、いつ、どの届出を行うのか、社内の担当者と業務フローを明確に定めることが重要です。もし、自社のみでの対応に困難を感じる場合は、決して一人で抱え込まず、専門家である登録支援機関に相談・委託することも賢明な選択肢です。専門家のサポートを得ることで、手続きの正確性を担保し、担当者の負担を軽減できるため、企業は本来注力すべき事業活動に集中することができます。
特定技能外国人は、企業の成長を支える貴重なパートナーです。そのパートナーと良好な関係を築き、共に発展していくためには、法律で定められたルールを遵守し、誠実な対応を続けることが大前提となります。本記事が、皆様の適正な特定技能外国人材の受入れと、その後の安定した雇用管理の一助となれば幸いです。