コラム 特定技能

特定技能 自社支援 完全ガイド|出入国在留管理庁の最新基準と対応フロー

2026年1月4日

行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

このページは「特定技能 自社支援」で検索した受入機関の担当者が、出入国在留管理庁の最新の告示基準・運用方針に沿って、いま現場で何をどう準備・実行すべきかを一気通貫で把握できる実務ガイドです。読めば、自社支援と登録支援機関の違い、支援責任者・支援担当者の要件と体制づくり、外部委託の可否と範囲、行政指導や取消リスクの勘所を理解し、事前ガイダンス、雇用契約書・労働条件通知書の整備、多言語での重要事項説明、空港出迎えと移動手配、住民登録・マイナンバー取得、銀行口座・携帯通信・ライフライン契約、生活オリエンテーション、相談窓口の設置、定期面談とモニタリングによる失踪防止、帰国支援・転籍時の対応まで、必須業務を抜け漏れなく実行できます。さらに、受入機関の届出、支援計画書の作成、在留資格の申請・更新・変更、四半期報告と管理台帳の整備、提出期限・提出方法、記録保存と内部監査の手順、労働条件の適正化(賃金・休暇・安全衛生)や社会保険・税・年金の加入手続、ハラスメント防止とメンタルヘルス支援、多言語対応資料の整備ポイント、支援計画・生活ガイド・面談記録のテンプレート、コスト試算と登録支援機関への委託比較までを具体的に解説します。結論として、自社支援は「体制の明確化」「記録とエビデンスの徹底」「四半期報告の期限順守」「労働関係法令の遵守」を満たせば十分に運用可能であり、外部委託は一定業務で活用できるものの最終責任は受入機関にある点を押さえることが重要です。本ガイドは実務フローとチェックリストで検索意図を網羅し、日々の運用と監査対応に直結する意思決定材料を提供します。

目次 非表示

1. このガイドの想定読者と検索意図の整理

本章では「特定技能 自社支援」を検討・運用する受入機関の実務担当者が、出入国在留管理庁の最新基準と運用方針に整合した支援体制を自走構築できるよう、知りたい情報と検索意図を明確化します。登録支援機関への委託と比較しつつ、支援計画の作成から四半期報告、申請・届出、生活オリエンテーション、モニタリング、転籍・帰国支援、労務コンプライアンスまでを実務直結の視点で網羅します。

1.1 受入機関の担当者が知りたいこと

中小企業の人事総務、介護・外食・宿泊・建設・製造の現場管理者、コンプライアンス責任者、経営層が主な読者です。関心は「自社支援と登録支援機関の違い」「支援責任者・支援担当者の配置要件」「外部委託の可否」「告示基準と監督措置」「在留資格の更新・変更」「支援計画と四半期報告」「賃金・社会保険・安全衛生・ハラスメント防止」「失踪防止と定期面談」「転籍・帰国支援」「コスト試算と体制設計」に集中します。

想定読者主な課題検索意図(知りたいこと)
人事・総務担当要件の不明確さと工数の見積り不足自社支援の必須業務一覧、対応フロー、必要書類、四半期報告・台帳整備の具体
現場管理者配属・教育・生活立上げの同時並行対応空港出迎え、住民登録、口座・通信・住居、生活オリエンテーション、相談窓口設置
法務・コンプライアンス違反時の行政指導・取消リスク管理告示基準・運用方針の要点、監督措置、内部監査と記録保存、外部委託の範囲
経営層費用対効果とガバナンス自社支援のコスト試算項目、登録支援機関委託との比較、体制最適化の判断材料
社会保険・労務担当適法な雇用条件と加入手続の徹底雇用契約・労働条件書面の整備、賃金・休暇・安全衛生、社会保険・税・年金の実務

1.2 キーワード 特定技能 自社支援 で求められる情報

検索ユーザーは、制度の定義や比較だけでなく、実装可能な手順・チェックリスト・テンプレートを求めています。特に「支援体制の要件」「支援責任者と支援担当者」「外部委託の可否」「在留資格の申請・更新・変更」「定期面談・モニタリングと失踪防止」「転籍・帰国支援」「記録保存と内部監査」「コスト比較」の即時活用情報への需要が高いです。

検索意図タイプ具体的ニーズ本ガイドの提供内容
情報収集(制度理解)自社支援と登録支援機関の違い、告示基準・運用方針の要点要件の整理、支援体制の定義、監督措置・取消リスクの要約
手順・実務(どうやるか)事前ガイダンス、生活立上げ、面談・モニタリング、四半期報告対応フロー、時系列タスク、提出期限・方法、記録保存・内部監査の手順
申請・届出(書類)受入機関届出、支援計画、在留資格の申請・更新・変更必要書類リスト、作成ポイント、よくある不備と回避策
比較検討(コスト・体制)自社支援の費用・工数、委託との損益分岐コスト試算項目、体制案のモデル、意思決定チェックリスト
リスク対策(コンプライアンス)労務違反・ハラスメント・失踪防止賃金・社会保険・安全衛生の留意点、相談窓口、エスカレーション設計

本ガイドは、出入国在留管理庁の最新基準に即して、自社支援を「設計できる・運用できる・監査できる」状態に到達するための実務情報を、過不足なく提供します。

2. 特定技能 自社支援の全体像

特定技能の受入機関は、義務的支援(生活オリエンテーション、出入国時の送迎、住居・ライフライン契約支援、相談対応、行政手続の補助、日本語学習機会の提供など)を「自社支援」か「登録支援機関への委託」のいずれかで実施します。自社支援は受入機関が支援計画書を作成し、支援責任者・支援担当者を置いたうえで、全責任を自ら負って実行する方式であり、内部体制とコンプライアンスの整備が前提となります。

2.1 自社支援と登録支援機関の違い

両方式は支援の中身(義務的支援の項目)は同一ですが、体制・責任・費用構造が異なります。受入機関の規模、在籍国籍の多様性、拠点数、技能分野の特徴に応じて最適な方式を選択します。

項目自社支援(受入機関が実施)登録支援機関へ委託
実施主体受入機関が直接実行。支援計画書の作成・運用も自社で管理。委託契約に基づき登録支援機関が実行。計画書は受入機関名義で作成。
体制要件支援責任者・支援担当者の選任、言語対応・相談体制の整備が必要。登録支援機関が体制を保持。受入機関は連絡・労務面の協力が必要。
外部委託一部実務は外部活用可だが、最終責任は受入機関。支援業務は原則登録支援機関が担い、必要に応じて同機関が再委託。
費用固定費(人件費・多言語ツール等)中心。人数増で平均コスト低減しやすい。人数連動の委託料が一般的。少人数でも即戦力の体制を利用可能。
品質・多言語自社業務との連動が円滑。多言語・休日夜間対応は自社整備が必要。多言語・ノウハウが標準化されやすいが、現場密着度は委託設計次第。
監督・責任監督庁の指導・報告要求に直接対応。是正も自社で実施。委託しても最終的な適合性は受入機関の責任。委託先の管理が重要。
報告・記録四半期報告・台帳整備・記録保存を自社運用。委託先が下書き等を支援するが、最終提出は受入機関が担う。

2.2 自社支援のメリットとデメリット

自社支援は現場密着でスピードと納得感を得やすい一方、体制・運用ミスは直ちに行政リスクに直結します。コンプライアンス基準を満たす運用設計と、支援担当者の教育・監督を継続できるかが成否を左右します

観点メリット留意点(デメリット)
現場適合性業務・勤務シフト・社内規程に即した支援が可能。改善のPDCAを内製化。属人化・担当者の離職で品質が不安定になりやすい。
コスト一定人数以上で委託料より総コストを抑えやすい。少人数期は固定費負担が重い。多言語・通訳の確保費用が発生。
コンプライアンス労務・安全衛生・就業規則と一体管理でき、是正が迅速。最新告示・運用方針のキャッチアップと内部監査の継続が不可欠。
スケール拠点展開時に自社標準を横展開しやすい。多拠点・多言語では統制・教育コストが増大。

2.3 対象分野と在留資格の前提条件

自社支援の義務は「特定技能1号」に適用されます(2号は支援義務の対象外)。対象分野は告示で定められており、分野ごとの技能水準・日本語能力や受入機関の適合要件に従います。受入機関は、適正な雇用契約(日本人と同等以上の報酬水準、法令遵守、社会保険加入など)と、実行可能な支援計画書を整備したうえで申請・運用します。

項目特定技能1号特定技能2号
主な要件分野ごとの技能試験合格等+日本語能力(例:基礎レベル)。熟練技能の評価基準を満たすこと。
在留期間更新可・通算上限あり(原則5年)。更新上限なし。
家族帯同原則不可。要件を満たせば可。
支援義務受入機関に義務(自社支援または登録支援機関へ委託)。義務なし(ただし労務・法令遵守は必要)。

分野別の技能要件や運用は随時更新されるため、受入機関は最新の告示・運用方針を確認し、支援担当者への周知と支援計画書の更新を継続することが重要です。

3. 出入国在留管理庁の最新基準の要点

自社支援を選択する受入機関(特定技能所属機関)は、出入国在留管理庁が示す告示基準と運用要領に基づき、全支援項目を継続的・無償で適正に実施する義務があります。 最新情報は出入国在留管理庁および特定技能制度ポータルで公表されています(出入国在留管理庁特定技能制度ポータル)。

3.1 告示基準と運用方針の重要ポイント

支援は「告示基準」に定める全項目を対象とし、特定技能外国人が十分に理解できる言語で、費用負担を求めることなく行います。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、出入国管理及び難民認定法等の関連法令の遵守は前提であり、違約金や保証金の徴収、パスポート等の不当な預かりは禁止です。運用要領は実施手順・記録整備・報告様式等を詳細化しており、最新改訂の確認が必要です。

支援項目概要実施の原則
事前ガイダンス労働条件・業務内容・報酬・住居・費用負担の有無等を多言語で説明書面と説明記録を保存。虚偽・不利益な条件変更の禁止
出入国時の送迎空港等への出迎え・送迎、入国直後の生活立ち上げ支援安全配慮と到着当日の生活支援導線の確保
住居・契約支援住居確保、携帯・銀行・ライフライン等の契約支援名義・費用の明確化。不当な費用転嫁の禁止
生活オリエンテーション生活ルール、防災、医療、地域情報、労働法の基礎理解度確認と多言語資料の付与
公的手続の補助住民登録、マイナンバー、年金・税・社会保険の手続期日遵守と控えの保存。通訳等の手配
日本語学習の機会学習機会の提供や受講案内就労に支障のない形で継続的に案内
相談・苦情対応多言語の相談窓口、緊急時対応、専門機関連携不利益取扱いの禁止。記録化と改善
交流促進日本人・地域との交流機会の案内任意参加で負担のない設計
定期面談・モニタリング職場・生活の状況確認、課題の早期把握通訳同席可。記録保存と是正措置
転籍・帰国支援雇用終了時の職業紹介案内、帰国調整ハラスメント等非自発的離職時の迅速支援

3.1.1 言語・費用・記録に関する横断基準

すべての支援は無償・多言語・記録化が原則で、説明資料・面談記録・実施台帳を適切に保存します。 最新の様式・運用は公表資料に従います(特定技能制度ポータル)。

3.2 支援体制の要件 支援責任者と支援担当者

自社支援では、所属機関内に「支援責任者」と「支援担当者」を置き、計画策定・実施・点検を一体で運用します。両者はいずれも適格な従業員であり、法令違反歴がないこと、必要な言語対応ができる体制であることが要件です。

3.2.1 役割分担とガバナンス

役割主な責務配置の考え方
支援責任者支援計画の策定・改訂、体制整備、内部監査、当局対応管理部門等に配置し、意思決定権限と監督機能を付与
支援担当者日々の支援実施、面談・モニタリング、記録作成現場に近接配置。担当人数は実務量に応じ適正化

3.2.2 適格性・行為規範

本人負担の徴収、旅券等の不当保管、ハラスメント行為は厳禁で、守秘義務とコンプライアンス教育を徹底します。 多言語対応は社内人材に加え、必要に応じて通訳者を手配します。

3.3 外部委託の可否と範囲

自社支援を基本としつつも、業務の性質に応じて外部活用は可能です。ただし、支援計画の実施責任は常に所属機関に残ります。

3.3.1 全部委託(包括委託)

支援の全部を委託する場合は、法に基づき「登録支援機関」への委託が必要です。 委託先の登録の有効性・体制・実績を事前確認し、委託契約と実施報告の受領を徹底します(出入国在留管理庁)。

3.3.2 一部委託(スポット活用)

通訳、交通・住居手配、日本語教育の提供等、補助的業務は外部ベンダーの活用が可能です。面談・相談対応等の中核は所属機関が主体的に実施し、記録・是正まで責任を負います。

3.3.3 委託管理

委託範囲・水準・言語・SLA・個人情報保護・費用負担の明確化、実施結果のエビデンス回収、再委託可否の統制を行います。

3.4 監督措置 行政指導と取消リスク

出入国在留管理庁は、届出情報・報告・実地確認等によりモニタリングを行い、是正が必要な場合は指導・助言・勧告等を行います。重大・継続的な不適正が判明した場合、新規受入れの停止・申請不許可・名称公表等の対象となり得ます。委託先が登録支援機関である場合、同機関は別途登録取消・業務停止等のリスクを負います。

不適正事例典型的な影響再発防止の要点
支援未実施・虚偽記録行政指導、申請不許可、受入停止の可能性面談・実施記録の標準化、内部監査の定例化
不当な費用徴収是正命令・公表等、返金対応費用基準の明確化、第三者監査の導入
労働関係法令違反申請審査で不利、監督強化労務監査、是正計画とフォローアップ

監督対応で重要なのは、違反の未然防止(教育・体制・記録)と、事案発生時の迅速な是正・再発防止の提示です。 最新の監督方針・資料は公表情報で確認してください(特定技能制度ポータル)。

4. 特定技能 自社支援の必須業務と対応フロー

自社支援では、受入機関が支援計画に基づく全ての必須支援を自ら実施し、実施記録と根拠書類を一元管理することが不可欠です。 下記のフェーズ別フローに沿って、抜け漏れを防ぎ、本人が理解できる言語での実施とエビデンス化を徹底します。

フェーズ主な支援業務実施主体記録・エビデンス
採用前〜在留申請前事前ガイダンス、雇用契約・労働条件書面の作成・多言語説明、住居・初期費用の方針決定、支援計画の確定受入機関(支援責任者/支援担当者)説明資料・翻訳、同意書サイン、支援計画、通訳者情報、質疑応答記録
入国直前〜入国日空港出迎え手配、移動・宿泊手配、緊急連絡体制の共有受入機関出迎え記録、行程表、連絡網、連絡履歴
入国後初動住民登録手続の同行、マイナンバー受領サポート、生活基盤(口座・携帯・ライフライン)契約支援受入機関同行記録、受付票/控えの写し、契約確認書
入社初月生活オリエンテーション、職場ルール・安全衛生説明、相談窓口の設置・周知受入機関オリエンテーション資料、参加名簿、理解度確認記録
稼働中の定期運用定期面談・現場モニタリング、勤怠・賃金の実態確認、トラブル予防と失踪防止受入機関面談記録、巡回記録、相談・苦情対応簿
離職・帰国・転籍帰国手続支援、転籍時の情報提供・引継ぎ、居住・契約の清算支援受入機関支援実施記録、旅程・予約控え、引継ぎメモ

4.1 事前ガイダンスと書面整備

採用決定後すぐに、在留資格「特定技能」の制度概要、職務内容、配置先、賃金・手当・控除、労働時間・深夜残業の有無、住居や初期費用負担の方針、支援計画の範囲を本人が理解できる言語で説明します。費用負担がある場合は金額・内訳・支払時期と返金条件を明確化し、同意書に署名を得ます。

4.1.1 雇用契約 労働条件書面の整備

労働条件通知書・雇用契約書には、業務内容・就業場所、契約期間、所定労働時間・休憩・休日、時間外労働の有無、賃金形態・締日・支払日、法定控除・任意控除、試用期間、年次有給休暇、安全衛生・災害補償、社会保険加入などの必須事項を記載し、和文と本人の理解言語で提示します。署名済み原本・翻訳・説明記録を保存します。

4.1.2 多言語での重要事項説明

通訳または翻訳を用い、苦情申出・相談先(社内窓口、労働基準監督署、都道府県労働局、各自治体の相談窓口)や、ハラスメント防止方針、緊急時連絡体制、個人情報の取扱いを説明します。理解度の確認(復唱・チェックテスト)と通訳者の氏名・使用言語・方法(対面/遠隔)の記録を残します。

4.2 出入国手続と生活立ち上げ

円滑な入国と定住初期支援は、就労定着とミスマッチ防止に直結します。移動・行政手続・契約支援を計画化し、必要書類を事前に収集して同伴します。

4.2.1 空港出迎えと移動手配

空港での出迎え、本人確認、移動経路の安全確保、宿舎・職場までの送迎、到着後の安否報告を行います。遅延・欠航時の代替手配や、深夜帯到着時の宿泊手配も事前に準備します。

4.2.2 住民登録 マイナンバー取得

市区町村での住民登録の届出に同行し、健康保険・年金の資格取得届と併せて案内します。マイナンバーの通知方法と保管・取扱い注意点を多言語で説明し、各種手続への活用可否を明確にします。

4.2.3 銀行口座 携帯通信 ライフライン契約

銀行口座開設(在留カード・本人確認書類の準備)、携帯通信(音声・データ・料金プラン、違約金の有無)、電気・ガス・水道の開始手続、ゴミ出しルール掲示の確認を支援します。連帯保証・敷金・火災保険など住居契約の費用構成と負担主体を明示し、同意書を取得します。

4.3 生活オリエンテーションと相談窓口

生活オリエンテーションでは、日本の法令順守、地域ルール(ゴミ分別・騒音)、防災情報(ハザードマップ・避難所)、医療の受診方法(保険証の使い方・救急受診)、交通ルール、金融詐欺防止、税・社会保険、職場ルール・安全衛生、ハラスメント防止、日本語学習機会の情報提供を多言語で行います。資料・動画・ピクトグラム等を活用し、相談窓口(社内・社外)の連絡先と対応言語・受付時間を周知します。

4.4 定期面談とモニタリング 失踪防止

支援責任者または支援担当者が、本人面談と現場確認を定期的に実施し、勤怠・賃金支払・時間外労働・安全衛生・住環境・人間関係・学習状況を把握します。賃金台帳・シフト・給与明細をもとに齟齬の有無を確認し、通訳同席や匿名相談で心理的安全性を確保します。問題の兆候(欠勤増加、連絡不通、送金トラブル、借金・高額ローン、居住不安)を早期に把握し、原因分析と是正措置、関係部署(人事・現場・衛生委員会)との共有、再発防止策を記録します。失踪防止は「生活・労務・人間関係」の三点同時改善が要諦であり、単発の呼びかけでは効果が限定的です。

4.5 帰国支援と転籍時の対応

契約満了・自己都合・会社都合の別を明確化し、帰国時は航空券手配支援、空港までの送迎、転出・解約(住居・水道光熱・携帯)の手続支援、保証金・敷金の精算、残業代・有休消化・退職金の精算をサポートします。転籍時は、就業先情報の提供、職歴・評価の多言語推薦、居住継続・引越しの調整、在留資格の継続に関する留意点の説明を行い、引継ぎ事項を文書で整理します。いずれも本人の意思確認・同意と、実施内容・日付・担当者を詳細に記録します。帰国・転籍はトラブルが集中する局面のため、費用・期日・当事者の役割分担を多言語で事前合意しておくことが重要です。

5. 申請手続と必要書類

本章は、受入機関が「自社支援」で特定技能外国人を受け入れる際の申請ルートと必要書類、定期報告、記録管理を、出入国在留管理庁の公表資料に基づいて簡潔に整理したものです。制度全体の公式情報は出入国在留管理庁の特集ページをご確認ください(出入国在留管理庁 特定技能制度)。

5.1 受入機関の届出と支援計画書の作成

自社支援を行う受入機関は、支援責任者・支援担当者を定め、運用要領に沿った支援計画を作成します。就労・生活支援の範囲、実施方法、使用言語、外部委託の有無、緊急時対応、相談体制などを具体的に記載し、雇用契約・労働条件通知と整合させます。名称・所在地・役員等に変更が生じた場合や受入停止等は、所定の様式で受入機関の各種届出を行います(制度・様式は出入国在留管理庁 特定技能制度参照)。

書類概要作成・提出主体留意点
支援計画書就労前後の生活・行政手続支援、相談・面談、転籍・帰国支援等の具体計画受入機関(自社支援)多言語で本人に説明・同意。雇用契約と矛盾なく、実施記録と紐付け
支援体制説明資料支援責任者・担当者、連絡先、実施方法、外部委託の範囲受入機関兼務可否・担当者数は運用基準に適合させる
雇用契約書/労働条件通知書就業場所、職務、賃金、労働時間、割増、休日、退職・解雇等受入機関・本人社会保険加入前提。日本語と母語等で重要事項を説明
支払能力・適法性資料決算書・納税証明、保険加入状況、労基法・安衛法遵守体制受入機関未払賃金・法令違反の有無が審査に影響
居住・生活立上げ計画住宅確保、口座・携帯・ライフラインの支援方法受入機関初期費用負担・敷金等の取扱いを明確化
多言語ガイダンス資料労働条件・安全衛生・相談窓口・苦情申出の案内受入機関理解可能な言語で提供。更新時の再説明を記録

5.2 在留資格申請 更新 変更の手順

申請の基本ルートは、海外採用なら在留資格認定証明書→査証→入国、国内在住者は在留資格変更、継続雇用は在留期間更新です。いずれも、本人の技能測定試験・日本語試験(免除要件に該当する場合を除く)の結果証明、雇用契約、支援計画等を添付します。申請は出入国在留管理局等の窓口または郵送で行い、対象手続は在留申請オンラインシステムが利用可能です(トップ情報は出入国在留管理庁参照)。

ケース主な申請主な必要書類(抜粋)留意点
新規(海外在住の採用)在留資格認定証明書交付申請雇用契約・労働条件通知、支援計画、受入機関の体制資料、技能測定試験合格・日本語試験合格の証明(免除該当時は代替証明)、賃金台帳等の写し(同職種の水準確認)交付後、在外公館で査証申請。入国後の初期支援を速やかに実施
国内切替(留学・技能実習等から)在留資格変更許可申請上記一式に加え、現行在留資格に関する在学・修了、技能実習修了証明などの証明試験免除の可否と根拠資料を確認
継続雇用(更新)在留期間更新許可申請直近の雇用実態(賃金支払・勤怠)、支援実施記録、継続雇用の契約書、社会保険加入状況職務・条件が変更される場合は計画・契約も更新
転籍(所属機関変更)所属機関変更の手続新旧機関の情報、退職・採用の経緯、支援計画の引継ぎ、住居・連絡先の変更情報支援の空白期間を生じさせない計画と記録が必要

最新の様式・告示・運用要領は出入国在留管理庁の特集ページで確認し、地域局の個別指示に従ってください(出入国在留管理庁 特定技能制度)。

5.3 四半期報告と管理台帳の整備

受入機関は、雇用・支援の実施状況等について四半期ごとに報告し、日常的なモニタリング記録を管理台帳として整理・保存します。内容は支援計画と整合し、個人情報保護に配慮して管理します。

管理台帳の主な項目具体例エビデンス
本人情報・在留情報在留カード情報、在留期限、資格外活動許可の有無在留カード写し、申請控え
雇用・賃金契約内容、職務、賃金額、割増、勤怠雇用契約、賃金台帳、出勤簿
支援実施記録事前ガイダンス、生活オリエンテーション、各種手続支援説明資料、同意書、支援チェックリスト
相談・面談・苦情対応定期面談結果、相談履歴、是正措置面談記録、改善報告
住居・連絡先住所、連絡手段、緊急連絡先住民票写し(必要に応じ)、連絡記録
安全衛生・教育安全衛生教育、健康診断、災害時対応教育計画・受講記録、健診結果の控え

5.3.1 提出期限と提出方法

四半期報告は各四半期終了後、出入国在留管理庁が定める期限内に提出します。提出先は管轄の地方出入国在留管理局等で、手続に応じて窓口提出・郵送・オンライン申請の可否が異なるため、最新の案内を確認してください(総合案内:出入国在留管理庁)。

手続提出先提出方法期限の目安
在留資格認定証明書交付申請管轄の地方出入国在留管理局等窓口/郵送/オンライン(対象手続のみ)採用決定後速やかに
在留資格変更・在留期間更新同上同上在留期限までに余裕をもって
四半期報告同上窓口/郵送(様式・方法は最新案内に従う)各四半期終了後、定められた期限内
所属機関等の各種届出(変更・停止等)同上窓口/郵送事由発生後、速やかに

5.3.2 記録保存と内部監査

支援計画・実施記録、雇用・賃金・勤怠、面談・相談履歴、提出書類控え・受領書は、法令・運用要領に基づき適切に保存し、アクセス権限と改ざん防止を徹底します。内部監査では、支援未実施・遅延、賃金水準・割増計算、社会保険加入、四半期報告の網羅性・期限遵守を重点点検し、是正措置を記録・追跡します。制度変更や様式更新は、出入国在留管理庁の特集ページで定期的に確認してください(出入国在留管理庁 特定技能制度)。

6. 労務とコンプライアンスの実務

特定技能の自社支援では、一般の労働法令・社会保険・税務の遵守を前提に、言語・文化差を踏まえた運用で「わかる・守れる」仕組みを現場に落とし込むことが要点です。

6.1 労働条件の適正化 賃金休暇安全衛生

労働基準法等に基づき、就業規則・労働条件通知・勤怠賃金・安全衛生を多言語で整備し、特定技能外国人に確実に周知・説明・同意を取ります。

項目法定基準の要旨自社支援での実務記録・保存年限
労働時間・休憩・休日1日8時間・週40時間が原則。時間外・休日労働は労使協定(36協定)が必要。シフト設計と勤怠システムで実残業を把握。変形労働時間制は就業規則と協定を整備。出勤簿等3年
割増賃金時間外25%以上、深夜(22時~5時)25%以上、法定休日35%以上、月60時間超は50%以上。締日毎に割増自動計算。深夜・休日重複時の加算を検証。賃金台帳3年
最低賃金地域別最低賃金以上を保証(各都道府県)。控除後の実受給額も点検。寮費等控除は適正か審査。賃金台帳3年
年次有給休暇入社6か月で10日付与(8割出勤)。年5日の時季指定義務。付与・残日数を多言語で見える化。計画的付与を活用。年休管理簿3年
安全衛生・健康管理労働安全衛生法に基づく雇入時・定期健診、危険有害作業の教育。常時50人以上は衛生委員会・ストレスチェック義務。作業手順書・KYTを図解・多言語化。通訳・ピクトグラムで初回教育を実施。教育記録・健診結果5年等
就業規則・周知常時10人以上で届出と周知義務。原文+多言語要約・重要条項の口頭説明・確認書の取得。届出控・同意書保管

不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)と募集・採用・配置・昇進・退職までの差別的取扱いの排除を徹底し、外国人だからという理由の格差を設けない方針を明文化します。

6.2 社会保険 税 年金の加入手続

被用者保険・労働保険・税務の初期手続と資格管理を漏れなく行います。健康保険・厚生年金は原則、所定労働時間が同一事業所の通常の労働者の4分の3以上で加入(短時間労働者の特例適用あり)。雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで加入。労災保険は全労働者が対象。詳細は日本年金機構の最新案内を参照。

区分主な要件主要届出・実務提出先の例
健康保険・厚生年金常用的雇用者(適用基準を満たす者)被保険者資格取得届、標準報酬決定、扶養認定年金事務所
雇用保険週20時間以上・31日以上見込み適用事業所設置、被保険者資格取得届公共職業安定所(ハローワーク)
労災保険全労働者保険関係成立手続、労災給付請求対応労働基準監督署 等
税(源泉・住民税)給与支払者の源泉徴収義務扶養控除等申告書の提出、源泉徴収・年末調整、住民税特別徴収国税庁・地方自治体

マイナンバーの取得・本人確認・安全管理措置(収集目的の特定、アクセス制限、保管・廃棄)を徹底します。国外居住親族を扶養に入れる場合は、親族関係書類・送金関係書類などの提出要件を事前に案内します。

在留資格の更新・変更スケジュールと社会保険・税の資格管理(取得・喪失・月変・算定)を一体で運用し、異動・労働条件変更時に自動で見直す運用を標準化します。

6.3 ハラスメント防止とメンタルヘルス支援

労働施策総合推進法に基づくパワーハラスメント防止措置、男女雇用機会均等法に基づくセクシュアルハラスメント防止、育児・介護休業法に基づく妊娠・出産等に関するハラスメント防止を講じます。方針の明確化・周知、相談窓口設置、迅速な事実確認と再発防止を就業規則と規程に落とし込み、外国語での受付体制(通訳・第三者窓口)を整えます。

  • 多言語の行動規範・研修(事例・ロールプレイ・匿名通報の使い方)
  • 相談・通報の受付(オフライン/オンライン)、記録、関係者保護、報復禁止
  • 産業医・保健師・外部EAP等との連携、復職支援・配置転換の配慮
  • 常時50人以上はストレスチェック義務、衛生委員会での対策審議と労使協働

「言語バリアで声を上げられない」を前提に、匿名・多言語・24時間の相談経路を最低2系統以上用意し、受付から初動対応・是正・再発防止までのタイムラインを予め定義して運用します。

7. チェックリストとひな型

自社支援の実務で即利用できる「チェックリスト」と「ひな型(テンプレート)」を提示し、支援計画の実効性と記録の適正化を同時に満たすことを目的とします。

ここで示す書式は受入機関の業種・分野・人員規模・就業形態に合わせて必ずカスタマイズし、実施内容と記録の整合性を常に保ってください。

7.1 支援計画 生活ガイド 面談記録のテンプレート

支援計画は「実施内容の定義」と「証憑・台帳の紐づけ」を一体で設計し、生活ガイドと面談記録は運用現場での説明・合意・モニタリングを一貫化するために利用します。

7.1.1 支援計画書テンプレート(要点)

下記は支援計画の骨子です。各行の「関連記録」に、提出物・台帳・証憑を対応づけます。

セクション必須項目具体記載例関連記録
支援体制支援責任者・支援担当者/所属・連絡先/代替者氏名・直通・メール・受付時間・通訳体制組織図/職務分掌/委嘱辞令
事前ガイダンス言語/実施方法(対面・オンライン)/実施時期入国前1週間以内に母語資料配布+30分テスト参加者名簿/配布資料/理解度確認票
生活オリエンテーション初日〜7日間の項目・順序・担当地域ルール・防災・医療受診・交通・ごみ分別実施チェックリスト/写真記録
住居・ライフライン・公的手続住民登録/マイナンバー/口座/携帯/年金・保険同行支援の有無・予約方法・費用負担受付控え/委任状/同行記録
日本語学習機会提供方法/頻度/費用負担/評価週1回Eラーニング+月次確認テスト受講台帳/成績記録
相談・苦情対応窓口/受付時間/匿名・多言語対応電話・チャット・フォーム(記名/匿名)受付台帳/対応記録/再発防止策
定期面談・モニタリング頻度/通訳有無/実施者の独立性入社3か月は月1回、その後四半期面談記録/改善計画/合意メモ
転籍・帰国支援申出窓口/期日管理/費用負担の整理求人情報提供・日程調整・空港案内支援履歴/同意書/旅程記録
安全衛生・防災リスク・教育計画/安否確認手段避難訓練・熱中症/災害時連絡手順教育記録/訓練記録/連絡テスト

7.1.2 生活ガイド(生活オリエンテーション)テンプレート

配布・説明・理解確認をワンセット化します。必要に応じて「やさしい日本語」版と母語版を併記します。

トピック配布資料対応言語更新頻度
生活ルール・地域マナーごみ分別・交通・騒音・近隣挨拶日本語/やさしい日本語/英語ほか年1回+制度変更時
生活インフラ・防災電気・ガス・水道/防犯/避難場所図日本語/英語/ベトナム語/中国語 など年1回
医療受診方法・夜間休日・保険証の使い方日本語/やさしい日本語病院変更時
金融・賃金給与明細の読み方・控除内訳・送金日本語/英語 ほか賃金規程改定時
住居賃貸契約・退去手続・火災保険日本語/母語契約更新時
労働ルール就業規則要約・時間外・有給・ハラスメント日本語/やさしい日本語/母語規程改定時
緊急連絡110/119・大使館・社内緊急連絡先日本語/母語連絡先変更時

7.1.3 面談記録テンプレート

記録は「事実」「評価」「合意」「期日」の4要素を必ず含め、本人確認の署名または同意取得方法を明記します。

項目記入例
対象者氏名/在留カード番号(下4桁)/所属
面談情報日付・時間・場所・面談者・通訳有無
就労状況配置・作業内容・指導状況・残業の実績
賃金・控除確認支給額・残業代・控除の内訳の説明可否
生活状況住居・交通・人間関係・困りごと
健康・メンタル体調・睡眠・ストレス・必要支援
安全衛生危険源・保護具使用・ヒヤリハット
相談事項と対応相談内容/初期対応/期限/責任者
次回予定・合意次回面談日・合意事項・本人同意

7.1.4 相談・苦情受付記録とエスカレーション

チャネル別の初動時間と責任者を明確にし、機微情報はアクセス権を限定した台帳に保管します。

区分受付チャネル目標初期対応時間責任者記録先
労務・賃金専用フォーム/電話当日内人事・労務相談台帳(賃金)
生活・住居チャット/面談24時間以内生活支援生活相談台帳
人間関係・ハラスメント匿名可フォーム/通報窓口当日内コンプライアンス通報管理台帳
安全衛生・災害電話/緊急ライン即時安全衛生管理者事故・災害記録
在留・各種手続面談/メール2営業日以内在留手続担当手続支援台帳

7.1.5 失踪・所在不明時の初動チェックリスト

私物・個人情報の取扱いに配慮し、確認は必要最小限で行います。必要に応じて管轄警察・地方出入国在留管理局等の公的機関へ相談・報告します。

項目期限担当通報・連絡先証憑
出勤状況・連絡不能の確認判明当日現場責任者支援責任者へ即時連絡勤怠記録/通話履歴の有無
寮・職場での所在確認当日生活支援寮管理者・同僚確認メモ/目撃情報
関係者への聞き取り当日〜翌日支援担当同室者・友人聞き取り記録
本人・家族への連絡試行当日支援責任者電話・メール・メッセージ送受信ログ
公的機関への相談状況に応じ即時支援責任者警察/地方出入国在留管理局相談受付番号・日時
社内報告・記録保存当日コンプライアンス経営・人事事故報告書・対応計画

7.2 多言語対応資料の整備ポイント

用語は「やさしい日本語」を基準に原稿を作り、母語訳・英訳を派生させると、版管理と理解度が安定します。

翻訳は専門用語の用語集で統一し、視覚資料(ピクトグラム・写真)を併用します。通訳は第三者性と守秘を担保し、改定時は必ず旧版の回収と最新版の周知を行います。

文書類推奨言語品質確保の要点担当
雇用契約・労働条件通知日本語/母語/英語対訳・用語集・最終確認の読み合わせ人事・法務
重要事項説明書・生活ガイド日本語(やさしい日本語)/母語図解・ピクト・理解度テスト生活支援
就業規則要約・安全衛生資料日本語/母語改定差分の明示・版管理(版番号/日付)総務・安全衛生
相談窓口案内・通報手順日本語/母語/英語匿名手段の明記・24時間受付の可否コンプライアンス

8. コストと体制の比較検討

自社支援か登録支援機関への委託かは、総コスト(初期費・運用費・リスク費)と運用体制(人員スキル・多言語対応・ガバナンス)の両面で定量・定性評価し、受入人数と拠点分布に沿って意思決定することが重要です。

8.1 自社支援のコスト試算項目

自社支援は固定費が中心になりやすいため、TCO(Total Cost of Ownership)で12カ月・1人あたりの原価に落とし込むと比較が容易です。

8.1.1 初期費用(立上げ)

業務設計、様式整備、通訳・翻訳体制、ツール導入、教育・訓練、規程整備が主な内訳です。

費目代表的な内容算定式の例費用性質留意点
業務設計・書式支援計画テンプレート、面談記録、四半期報告様式、社内手順書作成工数(時間)×人件費単価固定費最新版の運用方針に合致させ定期改訂
通訳・翻訳体制多言語翻訳、通訳者アサイン、用語集・翻訳メモリ整備言語数×初期辞書作成工数固定費+一部変動母語別品質差の吸収が重要
システム・ツール多言語チャット、ビデオ通訳、ドキュメント管理、タスク管理ライセンス費×利用アカウント数固定費(年額)個人情報保護・アクセス権管理を設計
教育・訓練支援責任者・支援担当者の研修、日本語教育の教材整備受講者数×研修時間×人件費固定費(導入期)新人・異動時の再教育を前提化
規程・文書整備多言語の労働条件書面、就業規則の整合、社内規程の改定作成工数+外部専門家報酬(任意)固定費日本語原本基準と整合・改定履歴管理

8.1.2 運用費用(継続)

月次・四半期・年次のルーチンと、出入国・更新・緊急時対応などのイベントで構成されます。

費目代表的な内容算定式の例費用性質連動要因
人件費定期面談、モニタリング、相談対応、四半期報告の作成担当FTE×月間稼働時間×単価固定費(人員)受入人数・拠点数・言語数
通訳・翻訳重要事項説明、トラブル対応、多言語オリエンテーション分単価×対応時間+翻訳枚数×単価変動費面談頻度・案件難易度
移動・同行空港出迎え、役所・金融機関・医療機関への同行件数×交通費+拘束時間×人件費変動費入社・更新・転居イベント
住居・生活立上げ住宅手配、ライフライン契約補助、携帯通信手続件数×手続工数×人件費変動費採用時・転居時
申請関連在留資格 申請・更新・変更の資料収集と書類作成案件数×準備時間×人件費(外部委託時は報酬)変動費更新サイクル・在籍変動

8.1.3 隠れコストとリスクコスト

内部監査・記録保存、個人情報保護対応、行政指導発生時の是正、失踪・転籍発生時の追加工数など、平常時に見えにくいコストを織り込む必要があります。コンプライアンス逸脱の是正対応は短期の人件費増だけでなく、受入停止や風評リスクを通じた機会損失に直結します。

8.1.4 体制設計と必要FTEの目安

標準化と業務分担を前提に、FTEで算定します。

受入人数の目安役割構成FTE算定式(例)運用の要点
1〜10人支援責任者1(兼務)、支援担当0.5〜1、外部通訳スポット(面談・報告・同行の月間総時間)÷稼働時間立上げはテンプレ活用、通訳は外部併用
11〜30人支援責任者1、支援担当1〜2、主要言語の内製通訳言語別対応時間の合算÷稼働時間拠点別SOPと記録一元化
31〜100人支援責任者1、支援担当2〜4、通訳2言語以上、夜間当番体制イベント対応(入社・更新)平準化係数を加味ピーク分散、外部委託の併用を前提化

人員は受入人数だけでなく、拠点分散・シフト勤務・言語多様性・想定トラブル頻度で増減します。

8.2 登録支援機関への委託との比較

費用は変動費化でき、専門性・多言語対応・代替要員の即応性を確保しやすい一方、現場密着の情報量や自社基準の徹底は自社運用に優位があります。

8.2.1 コスト構造の違い

自社支援は固定費中心、登録支援機関への委託は人数・案件連動の変動費中心となります。予算安定性と柔軟性のどちらを優先するかで選択が分かれます。

観点自社支援登録支援機関への委託
費用の性質人件費・ツール費が固定化。規模拡大で平均コスト低減入社・更新・同行などイベント連動で変動。人数増に比例
初期投資設計・教育・多言語整備が必要最小限。契約・運用SLA整合で開始可能
スケールメリット受入人数が増えるほど有利ボリュームディスカウントの余地はあるが限界あり
内部工数高い(管理・監督・記録・監査)中(委託先管理・最終責任は自社)
地域・移動コスト拠点分散で増加しやすい全国ネットワークで抑制しやすい

8.2.2 品質・リスク・スピード

対応品質はSOPの成熟度と担当者の経験に依存します。委託時はSLA(対応時間・言語・報告様式)とKPI(面談実施率、是正完了日数)を明確化しましょう。いずれの方式でも労務管理・最終責任は受入機関に残るため、記録と監督は自社で保持する体制が不可欠です。

観点自社支援登録支援機関への委託
対応スピード現場密着で即応しやすいSLA準拠で安定、繁忙期は事前調整が鍵
多言語対応主要言語は内製化、希少言語は外部手配広範な言語カバレッジを確保しやすい
ガバナンス自社基準を徹底しやすい委託基準を契約で整合、監査・評価が必要
事業継続担当者不在時の代替確保が課題代替要員の確保が容易

8.2.3 ハイブリッド運用の選択肢

日常支援は自社、出入国同行や更新ピークは委託など、業務を切り分けると費用最適化と品質維持を両立しやすくなります。

業務自社実施の狙い委託実施の狙い
定期面談・モニタリング現場密着・早期是正多言語の安定運用
空港出迎え・役所同行自社配属の導線最適化移動・待機の外部化で工数削減
在留資格 申請・更新自社情報の即時反映専門性活用とピーク平準化
多言語オリエンテーション自社規程の浸透教材・通訳の品質確保

最適解は単一方式ではなく、受入規模・言語構成・拠点分布に応じたハイブリッド化と標準化(SOP・テンプレート・記録一元化)です。

9. よくある質問

9.1 自社支援はどのような体制で実施すればよいですか?

受入機関が出入国在留管理庁の告示基準に適合する支援体制を構築し、支援責任者と支援担当者を選任して支援計画を作成・運用することで実施できます。支援は多言語で理解可能性を担保し、実施記録と四半期報告を適切に行うことが前提です。

9.2 支援責任者・支援担当者に必須の資格や語学要件はありますか?

特定の国家資格は必須ではありませんが、特定技能外国人が十分に理解できる言語で支援を提供できる体制が必要です。社内の多言語対応が難しい場合は、通訳者や外部の多言語支援サービスを活用します。

9.3 自社支援の一部を外部委託できますか?

支援業務の一部は外部委託が可能です。ただし、支援計画の統括、実施状況の把握・記録・報告の最終責任は受入機関にあります。

9.3.1 委託時の実務ポイント

委託範囲を契約で明確化し、成果物(面談記録、多言語資料、対応ログ)を自社で回収・保存します。苦情・相談の一次受付は自社にも窓口を残し、緊急時連絡体制を二重化します。

9.3.2 委託に適さない場面

労務管理に直結する個別調整(勤務実態に基づく面談、職場内のハラスメント初動対応など)は自社が主導し、必要に応じて外部専門家を補助に用います。

9.4 自社支援に要する費用を外国人本人に負担させられますか?

支援業務(事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応、面談・モニタリング等)の実施費用は受入機関が負担するのが原則です。本人の私的費用(本人名義の家賃・通信費など)は契約に基づき本人負担とできますが、賃金からの控除は書面合意と最低賃金の確保が必要です。

費用項目本人負担の可否実務上の注意点
支援業務の実施費用(多言語化、相談対応、面談記録の作成など)不可受入機関負担。外部委託しても転嫁不可。
住居の家賃・光熱費(本人名義契約)控除時は労使合意・控除明細の明示・最低賃金遵守。
携帯電話・通信費(本人名義契約)会社立替は精算規程と本人同意書で運用。

9.5 途中で登録支援機関へ切り替えることは可能ですか?

可能です。支援計画の変更、受入機関の届出、特定技能外国人への十分な説明と同意、登録支援機関との契約締結、引継ぎ資料(支援記録・相談履歴等)の整備を行います。

9.6 面談・モニタリングの頻度や方法はどう決めますか?

支援計画に基づき、就労・生活状況に応じて頻度・手段(対面、電話、オンライン等)を定め、実施記録を残します。職場や生活面の課題がある場合は頻度を増やし、改善措置まで一体で管理します。

9.7 四半期報告や管理台帳は誰が作成しますか?

受入機関が作成・提出します。外部委託で作成補助を受けられますが、内容の正確性と提出の適時性に関する最終責任は受入機関にあります。

9.8 副業・兼業は可能ですか?

特定技能は所属機関との雇用契約に基づく活動に限定されるため、原則として兼業は認められません。別の事業所で就労する場合は、事前の手続(契約・支援計画の変更など)が必要です。

9.9 自社支援で受入人数の上限はありますか?

一律の人数上限は設けられていませんが、支援計画どおりに実施できる人員・体制であることが必要です。面談・相談対応・生活立ち上げ支援が行き届く範囲で適正数を設定します。

9.10 ハラスメント相談があった場合の初動は?

当事者双方から事実を丁寧に聴取し、通訳等で理解可能性を確保しながら記録化します。就業環境の一時的分離など安全確保を優先し、社内規程に沿って迅速に是正措置を講じ、外部相談窓口の案内も行います。

9.11 失踪や連絡不能が疑われるときの対応は?

安否確認(勤務先・住居・同僚への聞き取り)を直ちに行い、状況を記録します。必要に応じて警察等の関係機関へ連絡し、行政への報告と社内の再発防止策(面談頻度の見直し、生活相談の強化)を実施します。

9.12 転籍の相談を受けた場合、どう対応すべきですか?

手続や留意点を事実に即して説明し、支援計画に基づき適切に対応します。不当な違約金や過度な費用負担で転籍を妨げるような取扱いは行わないでください。必要に応じて専門家への相談を案内します。

9.13 社会保険・税の手続は誰が行いますか?

日本人労働者と同様に、受入機関が適用・手続(健康保険、厚生年金、雇用保険、源泉徴収など)を行います。資格取得や扶養の有無、住所変更等の届出は生活オリエンテーションで周知し、記録に残します。

10. まとめ

結論として、特定技能の自社支援は、出入国在留管理庁の告示・運用方針に適合する体制と運用、そして証跡管理が整っていれば十分に実行可能です。現場と支援が一体化することで定着率向上やコスト最適化が期待できる一方、基準不適合や不備があると行政指導や受入停止のリスクが高まります。体制が未整備であれば登録支援機関の活用、整備できるなら自社支援の推進が合理的な結論です。

自社支援と登録支援機関の使い分けは、①多言語で対応できる人員と教育、②地域資源(自治体・医療・日本語学習等)への接続力、③労務・法令の内部統制の3点が判断軸です。3点を満たせるなら自社支援が優位、難しい場合は委託またはハイブリッド体制が現実的です。

基準面の要点は、支援責任者・支援担当者の選任、理解可能な言語での周知、実行可能な支援計画の策定と履行、四半期報告と記録保存、そして外部委託の有無にかかわらず受入機関が最終責任を負うことです。告示や運用の改定に機動的に追随できる更新プロセスを持つことが必須です。

実務フローは、事前ガイダンス→契約書・労働条件書の多言語整備→入国・生活立ち上げ(住民登録・口座・通信・ライフライン)→生活オリエンテーション→定期面談・相談窓口→更新・転籍・帰国支援が骨子です。全工程をチェックリスト化し、証跡(記録・書面・写真・ログ)を残すことが合否を分けます。

コンプライアンスの核心は、労働基準法・最低賃金・安全衛生の遵守と、社会保険・税・年金の適正手続です。加えて、ハラスメント防止、メンタルヘルス支援、日本語学習の機会提供が定着に直結します。疑義があれば労働基準監督署や日本年金機構、自治体窓口で早期確認することが安全です。

監督・リスク対応では、苦情と是正の記録、事故・トラブルの初動基準、失踪兆候の早期把握が重要です。重大事案は状況に応じて警察、ハローワーク、出入国在留管理局へ適切に連絡し、内部監査で継続的に点検します。これが取消リスクの低減につながります。

コストは、初期設計(規程・様式・教育)、多言語化、運用人件費、外部専門家費まで見える化し、登録支援機関への委託費と総合比較します。KPIは定着率、更新率、面談実施率、四半期報告の期限遵守率などを設定し、運用改善の指標とします。

総じて、自社支援は「設計(基準準拠)」「運用(フローと役割)」「証跡(台帳と報告)」の三位一体で成功します。出入国在留管理庁が公表する最新情報を常時確認し、支援計画や社内規程を速やかに更新することが、リスクを抑えつつ受入効果を最大化する最も確実な道筋です。

  • この記事を書いた人

行政書士 松浪 正治

ビザ申請を専門にしている大阪府枚方市の行政書士です。 オンライン申請により全国対応可能です。

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