
日本で就労ビザを取得して働いている方の中には、「家族に会うために一時帰国したい」「友人の結婚式に出席したい」など、様々な理由で母国へ帰ることを検討している方も多いのではないでしょうか。久しぶりに母国の空気を吸い、大切な人々と過ごす時間はかけがえのないものですが、その一方で「一時帰国している間に、苦労して取得した就労ビザが失効してしまったらどうしよう」「日本に戻ってこれなくなるのではないか」といった大きな不安がつきまとうのも事実です。また、どのような手続きが必要なのか、誰に何を報告すればよいのか、インターネットで調べても情報が断片的で、かえって混乱してしまうこともあるかもしれません。ご安心ください。結論から申し上げますと、現在お持ちの就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)で一時帰国することは全く問題なく可能です。重要なのは、日本を出国する前に「再入国許可」に関する制度を正しく理解し、ご自身の帰国期間に応じた適切な手続きを確実に行うことです。この記事では、入管業務を専門とする行政書士が、就労ビザを持つあなたが安心して一時帰国し、再びスムーズに日本での仕事に戻るために必要な知識のすべてを解説します。この記事を最後までお読みいただければ、一時帰国で最も重要な「みなし再入国許可」と「再入国許可」の違いが明確に理解でき、1年未満の短期帰国と1年以上の長期帰国、それぞれのケースで必要な手続きが具体的にわかります。さらに、会社への報告から空港での出国・再入国手続きの流れ、在留カードの正しい取り扱い、見落としがちな在留期間の確認や一時帰国中の住民税の支払い義務といった注意点まで、出国前から日本へ再入国するまでのステップを詳細にガイドします。この記事が、あなたの一時帰国に関する疑問や不安を解消し、自信を持って準備を進めるための一助となれば幸いです。
1. 就労ビザを持つ方の日本からの一時帰国は可能
日本で「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザ(在留資格)を持って働いている外国人の方が、休暇や冠婚葬祭、家庭の事情などで母国へ一時的に帰国することは、適切な手続きを行えば全く問題なく可能です。多くの方が「一度日本を出国すると、苦労して取得した就労ビザが失効してしまうのではないか」とご心配されますが、その心配は要りません。
日本の出入国管理制度には、現在の在留資格を維持したまま一時的に出国し、再び日本へ戻るための「再入国許可制度」という仕組みが用意されています。この制度を利用することで、出国前に改めてビザを取り直すといった複雑な手続きをすることなく、スムーズに日本での仕事や生活に復帰することができます。
この後の章で詳しく解説しますが、一時帰国の鍵となるのは、この「再入国許可制度」を正しく理解し、ご自身の出国期間に合わせて適切な手続きを選択することです。まずは安心して一時帰国の計画を立てられるよう、基本的な知識として「就労ビザを持っていても一時帰国はできる」ということを覚えておきましょう。詳細な情報については、出入国在留管理庁の公式サイトでも確認が可能です。
2. 一時帰国で最も重要な「再入国許可制度」を理解する
就労ビザなどの中長期在留資格で日本に滞在している外国人が一時的に出国し、再び同じ在留資格で日本に入国するためには、「再入国許可」に関する手続きが不可欠です。この手続きを怠ると、出国時に保有していた在留資格が失効してしまい、日本に戻れなくなる可能性があります。
再入国許可制度には、事前の申請が不要な「みなし再入国許可」と、出国前に出入国在留管理局で申請が必要な「再入国許可」の2種類があります。どちらを利用するかは、日本国外に滞在する予定の期間によって決まります。
2.1 原則は「みなし再入国許可」を利用
ほとんどの一時帰国では、この「みなし再入国許可」を利用することになります。これは、有効な旅券(パスポート)と在留カードを所持している方が、出国後1年以内に日本に再入国する場合に適用される、非常に簡便な制度です。
ただし、在留期限が出国後1年未満に到来する場合は、その在留期限までに再入国する必要があります。事前の申請は一切不要で、出国する空港で再入国出国記録(EDカード)の「みなし再入国許可による出国を希望します」という欄にチェックを入れるだけで手続きは完了します。手数料もかかりません。
現在、出入国在留管理庁では、入国審査の際に提出する外国人入国記録(EDカード)について、スムーズな入国手続きのため、「Visit Japan Web」を利用して電子的に提出することを推奨しています。
2.2 1年以上の長期出国は「再入国許可」の事前申請が必要
仕事の都合や家庭の事情などで、出国期間が1年を超える見込みの場合は、出国前に「再入国許可」を取得する必要があります。これは、お住まいの地域を管轄する出入国在留管理局で事前に申請する手続きです。
この許可の有効期間は、現在の在留期間の範囲内で、最大5年間となります。許可には1回限り有効な「シングル」と、有効期間中であれば何度でも出入国できる「マルチプル」の2種類があり、それぞれ手数料が異なります。
「みなし再入国許可」と「再入国許可」の主な違いは以下の通りです。
| 項目 | みなし再入国許可 | 再入国許可 |
|---|---|---|
| 対象となる出国期間 | 出国後1年以内 | 出国後1年を超える場合 |
| 有効期間 | 1年間(在留期限が1年未満の場合はその期限まで) | 最大5年間(現在の在留期間の範囲内) |
| 事前申請 | 不要 | 必要 |
| 申請場所 | 出国する空港・港 | 居住地を管轄する出入国在留管理局 |
| 手数料 | 無料 | シングル: 4,000円(オンラインは3,500円) マルチプル: 7,000円(オンラインは6,500円) |
2.2.1 再入国許可申請の手続きと必要書類
再入国許可を申請する場合は、以下の書類を準備し、居住地を管轄する出入国在留管理局の窓口で手続きを行います。申請は出国前に行う必要がありますので、スケジュールに余裕を持って準備しましょう。
- 再入国許可申請書:出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロードできます。
- 在留カード(提示)
- 旅券(パスポート)(提示)
- 手数料(許可時に収入印紙で納付)
申請から許可までは通常即日で完了しますが、混雑状況によっては時間がかかる場合もあります。確実に手続きを終えるためにも、早めの行動を心がけてください。
3. 【出国から再入国まで】就労ビザで一時帰国する手続きの全ステップ
就労ビザで一時帰国する際の手続きは、出国前から再入国後までいくつかのステップに分かれています。一つひとつの手続きを確実にこなすことで、スムーズな一時帰国が実現できます。ここでは、具体的な流れを3つのステップに分けて詳しく解説します。
3.1 STEP1 会社への報告と出国前の準備
日本を出国する前に、まずは勤務先への報告と必要な準備を済ませましょう。特に会社への報告は、社会保険や税金の手続きにも関わるため、トラブルを避けるためにも不可欠です。
会社の就業規則を確認し、定められた手続きに従って直属の上司や人事部に一時帰国の予定を報告してください。報告する際は、出国日、再入国予定日、帰国中の連絡先を明確に伝えることが重要です。また、航空券の手配と合わせて、パスポートと在留カードの有効期限が、日本への再入国予定日以降も十分に残っていることを必ず確認しておきましょう。
3.2 STEP2 空港での出国手続きと在留カードの提示
出国日当日は、空港で出国手続きを行います。航空会社のカウンターでチェックインを済ませ、保安検査場を通過した後、出国審査カウンターへ向かいます。
出国審査では、審査官にパスポートと在留カードを提示します。このとき、「みなし再入国許可」を利用して出国する意思表示をすることが最も重要です。具体的には、出国審査カウンターに備え付けられている再入国出国記録(EDカード)の「□ 1. みなし再入国許可による出国を希望します。」のチェックボックスに必ずチェックを入れ、パスポートと一緒に提出してください。この手続きを忘れてしまうと、現在お持ちの就労ビザが失効し、日本へ戻る際にビザを再取得する必要が生じるため、絶対に忘れないようにしましょう。詳細な制度については出入国在留管理庁のウェブサイトでも確認できます。
3.3 STEP3 日本への再入国時の手続き
日本に到着したら、入国審査を受けます。空港の案内に従い、「日本人/再入国(JAPANESE/RE-ENTRY)」と表示されたブースへ進んでください。
入国審査官には、パスポートと在留カードを提示します。出国時に「みなし再入国許可」の手続きを済ませていれば、特別な申請は不要で、在留カードを提示するだけでスムーズに再入国が許可されます。審査官が在留資格と有効期限を確認し、問題がなければ手続きは完了です。その後、手荷物を受け取り、税関検査を経て到着ロビーへ出ることができます。
4. 就労ビザで一時帰国する際に知っておくべき注意点
就労ビザでの一時帰国は、いくつかの重要なポイントを押さえておかないと、再入国時に思わぬトラブルに発展する可能性があります。ここでは、出国前に必ず確認すべき3つの注意点を詳しく解説します。
4.1 在留期間の有効期限を確認する
一時帰国を計画する上で、最も基本的ながら最も重要なのが在留期間の確認です。日本へ再入国する日において、在留期間の有効期限が残っている必要があります。
もし、一時帰国中に在留期間の満了日を迎えてしまう場合は、出国前に必ず「在留期間更新許可申請」を済ませておかなければなりません。この申請は、原則として在留期間が満了する約3ヶ月前から、お住まいの地域を管轄する出入国在留管理庁で行うことができます。
パスポートに記載された在留期限と一時帰国のスケジュールを照らし合わせ、余裕を持って計画を立てることが、スムーズな再入国の鍵となります。
4.2 在留カードは一時帰国中も必ず携帯する
在留カードは、日本に中長期滞在する外国人にとって身分を証明する大切な公的証明書です。一時帰国で日本を離れている間も、パスポートと一緒に必ず携帯し、厳重に管理してください。
日本の空港での出国手続きや、日本への再入国手続きの際には、パスポートと合わせて在留カードの提示が求められます。万が一、一時帰国先で在留カードを紛失してしまうと、再発行手続きは日本国内でしか行えないため、日本への再入国が非常に困難になる恐れがあります。盗難や紛失のリスクを常に意識し、管理には細心の注意を払いましょう。
4.3 一時帰国中の住民税の支払い義務
住民税は、その年の1月1日時点に日本国内に住所がある人に対して課税される地方税です。短期間の一時帰国の場合、生活の本拠地は日本にあると判断されるため、納税義務は継続します。
たとえ一時的に日本を離れていても、住民税の支払い義務はなくならないという点を理解しておくことが重要です。多くの会社員の方は給与から天引き(特別徴収)されているため問題ありませんが、ご自身で納付書を使って支払う「普通徴収」の方は注意が必要です。
普通徴収の方が納付期限に日本にいない場合は、出国前に以下のいずれかの対応を取る必要があります。
- 出国前に全ての税額を納付する
- 日本国内に住む家族や知人などを「納税管理人」として指定し、代わりに納付してもらう
納税管理人を定める場合は、出国前に住所地を管轄する税務署長へ「納税管理人申告書」を提出する必要があります。手続きの詳細は、国税庁のウェブサイトでご確認ください。
5. まとめ
本記事では、就労ビザで日本に在留する方が一時帰国する際に必要な手続きや注意点について、網羅的に解説しました。結論として、就労ビザをお持ちの方が一時帰国することは、正しい手順を踏めば全く問題なく可能です。安心して母国へ戻るために、この記事で解説した重要なポイントを最後にもう一度確認しておきましょう。
一時帰国における最も重要な制度が「再入国許可制度」です。この制度を正しく理解することが、スムーズな出入国と在留資格維持の鍵となります。具体的には、日本を出国する期間に応じて、利用すべき手続きが異なります。
まず、出国期間が1年以内で、かつ在留期間の満了日までに日本へ戻ってくる場合は、原則として「みなし再入国許可」を利用します。これは、出国当日に空港で、再入国出国記録(EDカード)の「みなし再入国許可による出国を希望します」という欄にチェックを入れるだけで手続きが完了する、非常に便利な制度です。事前の申請は一切不要であるため、短期の一時帰国ではほとんどの方がこの方法を選択します。
一方で、プロジェクトの長期化やご家庭の事情などで、出国期間が1年を超える見込みがある場合、または現在お持ちの在留期間の満了日を超えて出国する予定の場合は、状況が大きく異なります。この場合は、必ず出国前に、お住まいの地域を管轄する出入国在留管理庁(通称:入管)にて、事前に「再入国許可」を申請し、取得しなければなりません。この事前許可を得ずに1年以上日本を離れてしまうと、現在保持している就労ビザが失効してしまいます。その結果、日本へ戻るためには、ゼロから就労ビザの申請をやり直すという、多大な時間と労力がかかる事態に陥るため、長期出国の際は絶対に忘れてはならない手続きです。
また、手続きそのものだけでなく、一時帰国に際していくつかの重要な注意点があります。第一に、ご自身の在留カードに記載されている「在留期間の満了日」を必ず確認してください。この日までに日本へ再入国することが、在留資格を維持するための絶対条件です。第二に、「在留カード」は日本におけるあなたの公的な身分証明書です。一時帰国中もパスポートと同様に厳重に管理し、絶対に紛失しないよう常に携帯してください。最後に、日本を出国していても、その年の1月1日時点で日本に住民票を置いている限り、前年の所得に対する「住民税」の納税義務が発生します。出国前に市区町村役場で納付方法を確認しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
就労ビザでの一時帰国は、これらのルールを正しく理解し、計画的に準備を進めることで、何も心配することなく実現できます。本記事で解説した内容を参考に、万全の準備を整え、安心して母国での大切な時間をお過ごしください。